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先進国でワースト10の日本の子ども格差を斬る 宮台真司 TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ」

TBSラジオ荒川強啓デイ・キャッチ」6月16日放送

 

「ボイス」宮台真司

このほど、先進41カ国の子どもの貧困や格差などを調べたユニセフの報告書が発表されました。

日本は、飢餓の解消が1位、質の高い教育は10位でしたが、格差による不平等の解消は32位と全体の中でワースト10になってしまいました。

格差による不公平の解消ができないということは、日本での子どもの格差が拡大し続けるということなんでしょうか。

 

まず、データを確認します。

子どもの貧困は、37カ国中23位です。

格差では、41カ国中10位、格差の大きい方から10番目です。

子どもの貧困率の削減幅は、37カ国中31位です。

基礎的習熟度つまり教育達成度は、38カ国中2位です。

社会経済解消つまりお金持ちか貧乏かによる学力格差を示す指標では、39カ国中26位です。

若者の自殺率は、37カ国中26位です。

経済回って社会回らず、社会の穴を経済で埋める、どころか社会削って経済盛ってるぞ。

社会はもうボロボロだ、ということがこういうデータから見て取れます。

つまり、単なる貧困率だけの問題ではなくて、家族の空洞化の問題と考えていただけるといいかと思います。

飢餓の解消は1位ですから、食べるのに困るということはありません。

しかし、家族はボロボロということです。

関連するデータをいくつか紹介します。

2015年の国勢調査だと、東京都の女性生涯未婚率は20%もあって、全国の14%を上回って男性とほぼ同じ水準です。

さらに、女性は、年収が高くなればなるほど未婚率が高く、年収1250万円以上の女性の6割以上が未婚です。

正規と非正規で比較すると、男性の生涯未婚率は、正規16%、非正規50%と非正規の方が圧倒的に未婚率が高いですが、女性は全く逆で、正規22%、非正規8%、つまり正規の未婚率が圧倒的に高い。

これは一体なんなんだろうということを考えて欲しいんです。

若い人たち、特に男性が、お金がないから結婚できないというけど、これは先進各国の男の答えからすると異常な答えで、お金がないから結婚するんです。

シェアするんです。

簡単に言うと、家計を共同生活することで楽にするんです。

そして、共同生活するんだったら、好きな人と過ごしたいな、ということから結婚するんです。

 

2016年の日本青少年研究所が大事にしていることは何ですか、と日本の高校生に聞きました。

全項目に渡って、大事にしていることがないとなる中で、とりわけ、「家族と仲良くする」と「親に自分をわかってもらう」の比率は、米中韓に比して、ものすごく低いんです。

同じ調査の2011年のデータですと、「自分は価値のある人間だと思う」という高校生は、日本7.5%、米国57%、中国42%、韓国20%。

すごいでしょ。

「自分は優秀だと思う」高校生は、日本4%、米国58%、中国26%、韓国10%

「自分はダメな人間だと思う」高校生は、日本73%、米国45%、中国56%、韓国35%

 

2000年に日本の大学生を対象にZ会で行った調査、「両親は愛し合っていると思うか」という質問に対して、「愛し合っている」5割、「愛し合っていない」5割

 

僕の仮説は、日本の若い人たちは家族が楽しくないんじゃないだろうか。

家族を営む、あるいは家族を作るということに夢や期待が持てないのではないか。

魅力を感じないんじゃないか。

だから、自分が稼いだ金を、家族ごときにシェアするのはなんたることか、みたいなことになっているんです。

何で家族がこんなに楽しくないんだろう。

これが、社会の空洞化です。

確かに、年長世代が作った制度がなかなか変わらない、年長世代が制度を変えないのは、おかしいという議論があります。

それもわかるけど、そもそも社会の空洞化に対する責任は、若い人たちが負っていると思いませんか。

だから、家族を作り、地域社会で共同体を営み、そういう生活の必要上こういう政策をしてくれ、あるいはこういう価値観を人々に教育してくれ、というふうに要求するべきでしょう。

ドイツは、要求するようになったので、十数年間で男性の育休取得率が3%台から30%台に上がったんです。

社会を分厚くするような方向に、政治的経済的なリソースを割くように、若い人たちが要求しないとダメだ。

年長世代は、いろんな意味でお金には恵まれているだけじゃなくて、実は家族を営んできたし、家族的・地域的共同性の中で、自分を育んできた。

下の世代から見ると、それは「何のこっちゃ」と思うかもしれないけど、「なんのこっちゃ」じゃないんだよ。

何で君たち若い人たちがそういう生活を営めないのかということについて、年長世代の人たちのせいにしている場合ではありません。

若い人たちの意識改革が必要です。

現政権をくさしたいわけじゃないけど、こういう社会を食い物にして、経済がかろうじて盛られて生き残るような、そういう体制に対する政治を肯定しすぎてるよ。

あるいは、自分たちの地域の自治に関心がなさすぎるよ。

もちろん待機児童問題とかも大事だ。

しかし、個別の政策に関して言えば、もちろん大事なことはたくさんあるけれど、そもそも先程のデータで示したように、社会がクズになってるんです。

ごみクズみたいになっちゃってるわけ。

そうなってしまった理由は誰にあるのか、政治のせいにしないでくれよ、ということです。

政治をつくるのは、俺たちだよ、ということですよ。