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ジョージア決戦トランプ政権に影響は?

NHKマイあさラジオ「ニュースアップ」6月22日放送

解説:高橋解説委員

 

キャスター:アメリカ南部ジョージア州で、20日全米から注目を集める連邦議会下院の補欠選挙が行われ、開票の結果、与党共和党の候補が接戦を制しました。

今回の選挙、なぜ大きな注目を集めたのでしょうか。

 

高橋解説委員:ジョージア決戦と言われた今回の戦いの舞台は、大都会アトランタの近郊に位置し、周囲に比べて白人有権者が多いジョージア6区という選挙区です。

かつて保守旋風を巻き起こしたニュートギングリッジ元下院議長がここで初当選して以来、共和党が実に40年近くも議席を守ってきた保守の牙城。

つまり、本来ならば共和党が楽々と勝てるはずの選挙区でした。

ところが、去年の大統領選挙でトランプ大統領は、この選挙区で民主党クリントン候補に僅差に詰め寄られたことから、今回ここで下院議員を務めたトム・クライシス氏がトランプ政権の厚生長官に転出したことに伴う補欠選挙議席の行方が注目されていました。

しかも、トランプ陣営とロシアとの関係をめぐる一連の疑惑、いわゆるロシアゲートによって、トランプ政権に逆風が吹き抜ける仲、野党民主党は今回の選挙を、トランプ大統領に対する事実上の信任投票と位置付けて、与党共和党は思わぬ苦戦を強いられました。

両陣営合わせて5千万ドル日本円で55億円にも上る過去最高の選挙資金を注ぎ込んで、文字通りの総力戦で臨んだ結果、民主党の候補は後一歩のところで及ばず、共和党のハンデル候補はおよそ4ポイント差という薄氷を踏む逆転勝利にこぎつけたんです。

 

キャスター:共和党の勝因はなんだったんでしょうか。

 

高橋解説委員:共和党のハンデル候補は、テレビ討論会で「私はホワイトハウスとは関係ない」と発言したことからもわかるように、トランプ大統領とは一定の距離を置く一方で、保守層からの信任が厚いペンス副大統領やライアン下院議長らの後押しを受け、いわばトランプ隠しともいうべき選挙戦術が功を奏したかたちです。

逆に民主党の敗因は、トランプ批判を繰り返す一方で、有権者を引きつけるような具体的な政策論争に乏しかった面が否めません。

その結果、トランプ批判の高まりを、民主党議席奪還には繋げることができませんでした。

 

キャスター:では、今後のトランプ大統領の政権運営には影響は出てきそうですか。

 

高橋解説委員:トランプ政権の発足後、共和党は議会下院の補欠選挙を4つの州で戦って、いずれも地盤ではありながら苦戦をしたものの、これで結局4戦全勝。

トランプ大統領は、ひとまず政権への決定的な打撃は回避することができました。

共和党の指導部は、こうした勝利をはずみに、大統領が公約の目玉に掲げたオバマケアの見直しですとか、税制改革の早期実現を目指して、議会での法案審議へと急ぐ方針です。

ただ、共和党陣営に、トランプ大統領のもとで、来年11月の中間選挙を勝てるのか、こうした不安が完全に消えたわけではありません。

ロシアゲート疑惑解明にあたるモラート特別検察官は、今後トランプ大統領自身による司法妨害がなかったか、本格的に捜査する可能性もあるからです。

果たして、疑惑の暗雲を振り払うことはできるのか、その展開次第では今後も、大統領の政権運営は、大きく左右されることになりそうです。