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フランス新政権の今後の課題

NHKマイあさラジオ「ワールドリポート」6月26日放送

 キャスター:フランスで先月就任したマクロン大統領の政権の課題について、ヨーロッパ総局の堀記者に聞きます。

マクロン大統領は就任後も、比較的順調に、政権運営をしているようにみえますが。

 

堀記者:はい、この1ヶ月あまりの間、ドイツのメルケル首相をはじめ、アメリカのトランプ大統領、そしてロシアのプーチン大統領らと相次いで、会談し、世界のリーダーと互角に渡り合えることを示しました。

また、左派と右派のバランスに配慮した超党派の内閣を形成し、フランスの再生に向けて、国民の団結を呼びかけてきました。

そして、今月18日に行われた、議会下院の選挙では、選挙で協力した中道政党と合わせ、577の議席過半数を超える350議席を獲得し、安定した政権運営に必要な支持基盤を固めました。

しかし、投票率は過去最低の42%あまりにとどまり、マクロン大統領にとっては、今後、具体的な成果を上げて、国民の信頼を勝ち取ることが課題になります。

 

キャスター:マクロン大統領は、改革ということを選挙を通じて訴えていましたけれども、どのような改革を進めようとしているのでしょうか。

 

堀記者:まずは労働市場改革です。

マクロン大統領は、オランド政権の経済相時代にも、規制緩和を行なってきましたが、自らの政権でも、大規模な構造改革を進める方針です。

現在の労働法を改正することで、企業と労働組合の交渉で労働時間を自由に定めたりすることなどを可能にするとしています。

そして、テロ対策です。

フランスでは、一昨年11月のパリのテロ事件以降、裁判所の令状なしで家宅捜査を可能にしたり、市民の集会を制限したりできる、非常事態宣言を出し、今も継続しています。

しかしその後もテロが相次いだことを背景に、議会の議決が必要な非常事態宣言の代わりに、政府が必要と判断した場合に対策が取れる新たな法案を整備しているんです。

 

キャスター:マクロン大統領は、政治家の汚職の防止も訴えていましたね。

この対策は進んでいるんですか。

 

堀記者:マクロン大統領は、大統領選挙でライバルだった共和党のフィオン候補が、公金スキャンダルで支持離れが進んだこともあって、自らの公約でも、主要な政治改革のひとつに掲げました。

家族を秘書として雇用することや、政治家の倫理規定を盛り込んだ法案を、この夏にも提案する方針です。

こうしたなか、大統領選挙の直後に任命された閣僚18人のうち4人に、いずれも公金をめぐる不正疑惑が浮上し、先週になって相次いで辞意を表明する事態となりました。

このためマクロン政権は、この4人を交代させる内閣改造人事を発表しました。

 

キャスター:マクロン大統領としては、この交代は計算外だったでしょうね。

 

堀記者:そうですね。

フランスでは議会選挙の後に、内閣が一旦総辞職し、新たな閣僚人事を行うのが通例ですが、先月の組閣で閣僚に選ばれた議員は、全員議会選挙で当選したため、今回の人事では当初大きな変更はないと見られていました。

マクロン大統領にとっては、政治家の汚職の一掃を進めようとした矢先に、新政権の閣僚に相次いで疑惑が浮上したわけで、一度に4人もの更迭を余儀なくされたかたちです。

今のところマクロン政権の改革に対する国民の期待は高く、今回の疑惑が政権運営を揺るがす問題にはなっていません。

ただ、改造内閣でも、新たな汚職が発覚した場合などは、大きな痛手となる可能性もあり、今後の動向が注目されます。