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アメリカ下院補欠選挙の波紋

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」6月27日放送

ワールドリポート

 

キャスター:アメリカのトランプ陣営とロシアの関係をめぐる疑惑への追求が強くなっていますが、先週南部ジョージア州で行われた連邦議会下院の補欠選挙の結果に波紋が広がっています。

ワシントン支局の広内記者に聞きます。

このジョージア州というのは、もともと共和党が非常に強かったところだそうですね。

 

広内記者:このジョージア州の選挙区は、40年近くに渡って与党共和党議席を独占してきたいわば牙城で、前議員がトランプ政権の閣僚に就任したことに伴って、補欠選挙が行われたんです。

しかし、野党民主党の新人候補が、「トランプ大統領を怒らせろ」をスローガンに、いわゆるロシアゲート疑惑などへの批判を強め、事前の多くの世論調査で数ポイントリードしました。

これに対し、トランプ大統領がツイッターで、「民主党候補が犯罪対策などで弱腰で、選挙区に住んでもいない」と猛烈に批判するなど、与野党の間で激しい選挙戦が繰り広げられてんです。

アメリカメディアは、「トランプ大統領に対する住民投票だ」と報じ、投じられた選挙資金は、総額5千万ドル日本円で55億円を超え、議会下院の選挙としては、過去最高額になるなど、全米の関心を集めました。

 

キャスター:結果も大接戦だったんですね。

 

広内記者:開票の結果、共和党のハンデル候補は、3.8ポイント差で勝利しました。

共和党が地盤とする選挙区で、底力を見せ、トランプ政権としては踏みとどまったかたちです。

もし敗れれば、トランプ政権への打撃となっただけに、トランプ大統領としては、一安心といったところでしょうか。

しかし、これまで共和党が大差で勝利してきた選挙区で、民主党に迫られたことで、トランプ大統領に対する不満が高まっていることもうかがわせました。

現地で取材しましたが、民主党だけでなく共和党内でも、トランプ大統領に抵抗するため、民主党候補に投票するという人がいたほどです。

共和党の候補者も討論会で、「私はホワイトハウスとは関係ない」と述べるなど、いわばトランプ隠し、とも言える動きすら見られました。

今後も、ロシアゲート疑惑の捜査は続きますし、来年11月に行われる中間選挙と言われる議会選挙に向けて、トランプ大統領の支持率がさらに下がれば、距離を取る共和党の議員が増え、政権運営がますます不安定になりかねません。

トランプ大統領としては、安心ばかりはしていられないと思います。

 

キャスター:敗れた民主党ですけど、どう対応していくんでしょうか。

 

広内記者:民主党は、戦いは続くとして、トランプ政権への攻勢を強める構えです。

民主党の支持者たちは、落胆する一方で、「共和党の背中が見えた」「次こそは勝つ」と高揚感すら感じられました。

来月2日には、全米各地でトランプ大統領の弾劾を求めるデモ行進が行われる予定です。

ただ僅差とはいえ、敗れたことで民主党の下院トップベロシ院内総務の責任を問う声もあります。

民主党が来年の議会選挙や2020年の大統領選挙への戦略を描けずにいるのも事実で、戦略の練り直しも迫られそうです。