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ロシア最大規模の国際産業見本市に見る日露の思惑 ワールドリポート

NHKマイあさラジオ」7月に17日放送

 

キャスター:今月開かれたロシア最大規模の国際産業見本市「イノプロム2017」について、

モスクワ支局の渡辺記者とお伝えします。

「イノプロム」これはどんな見本市なんですか。

 

渡辺:この見本市は、ロシア中部の都市エカテリンブルクで毎年開かれ、今年は世界20カ国から600以上の企業が参加しました。

このうち、パートナー国として選ばれた日本からは、自動車メーカーや産業用ロボットメーカー大手など、およそ170の企業と団体が出展しました。

開幕に合わせて、プーチン大統領も日本パビリオンを視察、世耕経済産業大臣が日本製の工作機械やオートバイなどを見て回ったプーチン大統領の案内役を務め、オールジャパンの日露の経済協力をアピールしました。

出展した日本企業からは、ロシアは1億4千万という大きな人口を擁する大消費地で、各事業領域で全てバランスよく成長できる可能性が残されているほか、非常に広い国土が魅力だとロシア市場に期待の声が多く聞かれました。

 

キャスター:ロシア側、そして日本側、それぞれどういった思惑で臨んだんでしょうか。

 

渡辺:ロシア側は、石油やガスなどのエネルギー資源に偏った経済から脱却し、ものづくりを押し進めたいのに対し、日本側は、去年の首脳会談で提案したロシアの産業の多様化促進など8項目の協力プランの一貫として、位置づけていました。

日本パビリオンでは、ロシアに生産拠点を置く企業が、地元からの調達を増やそうと商談会も開かれました。

イノプロムは今年で8回目なんですが、プーチン大統領が自ら会場を訪れたのは初めてで、世耕大臣は「日本がパートナー国になったことが影響しているのではないか」と述べ、日露経済協力への期待の表れだという考えを示しました。

 

キャスター:今回の見本市は日露の経済協力にとって弾みとなるのでしょうか。

 

渡辺:一定の効果は見込めると思います。

というのは、ビジネスは人と人との交流が重要だからです。

ただ、ロシア側の企業に聞いてみると、必ずしもバラ色というわけではなさそうです。

エカテリンブルクの工作機械の輸入代理店の社長バランディンさんは、20年近く前から日本企業と提携し、日本の工作機械を輸入し、販売してきました。

6年前には、日本企業と合弁会社を作って、現地生産も始め、この間およそ200人の雇用も増やしました。

しかし、ウクライナをめぐる欧米の制裁を受け、日本政府の輸出管理が厳しくなり、高性能の工作機械の輸入に時間がかかるようになっているというのです。

ロシアのプーチン大統領とアメリカのトランプ大統領が、今月7日G20サミットに合わせて初めて会談しましたが、米露関係の先行きは不透明なままで、アメリカ議会上院は、先月新たな制裁を科すための法案を可決しています。

バランディンさんは、「アメリカが制裁を科せば日本も足並みをそろえて来る」と述べ、日本が輸出管理を一段と厳しくすることに警戒しています。

北方領土問題の交渉をにらんだ日露経済協力は、アメリカとの関係に揺れていると言えます。