国連対日本政府の言い争い 問題はココにある #宮台真司 「荒川強啓デイ・キャッチ」
TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ] 6月2日放送
「ボイス」宮台真司
ここのところ国際連合の日本に関する指摘に対して日本政府が反論したり、言い分が食い違ったりする場面が目立っています。
ここ1カ月で国連の別の特別報告者による日本での表現の自由を懸念した書簡や報告書に対して、菅官房長官など日本政府が抗議する事態が相次ぎました。
さらに、イタリアで先月27日に行われた安倍総理とグテーレス国連事務総長の会談内容について、日本政府と国連の発表が食い違っていることが判明しています。
菅官房長官が5月22日の会見で、ケナタッチ国連特別報告者の議論について、「国連の立場を反映しておらず、ただの個人の意見だ」と言いました。
これに対して、ケナタッチ特別報告者は反論しています。
これは個人の資格で出されたものではなく、特別報告者は国連人権理事会から任命され、権限を付与され、その権限の行使の妥当性を絶えず人権理事会からチェックされる存在なんです。
だから個人の見解なんか出せるわけがない。
あるいは個人の見解を出したとしても、それは国連人権理事会のお墨付きを得ていると考えなければいけないんです。
なので「個人の意見に過ぎない」というコメントは全く当たらない。
そのことについて、イタリアで安倍総理と会談したグテーレス国連事務総長はこういうふうに語ったと報じています。
事務総長は首相に対し、特別報告者は国連人権理事会に直接報告をする独立した専門家であることを説明しました。
人権理事会は47の理事国から構成されていて、47の国が投票で特別報告者を選びます。
この特別報告者はほとんどが学者で、その学者がいろいろな研究をして人権理事会の方針に従って発表していくということで、そういう力を持っている人を選びます。
日本も昨年この人権理事会の理事国になっています。
当然、今後特別報告者を選ぶということになっていきます。
特別報告者は、日本に対して何を言ってきたのか、そして日本は何と反論したのか。
いわゆる共謀罪法案について、プライバシーを保護するための特別な条文や措置が盛り込まれていない、国民のプライバシーが侵害され、あるいはプライバシーの侵害を恐れた国民(政治家を含む)が委縮して、自分たちが本当に言いたいことを言わなくなる。
そうなってしまえば、民主制は機能しませんということを特別報告者は言ってきました。
これはとても重要な指摘なんですけど、世界に発表し大笑いになるような大恥のコメントを出しているのが菅官房長官です。
さすがに外務省は恥ずかしいと思ったのか、「国連の立場からこのような懸念を表明することはある」、簡単に言うと、この特別報告者という制度を使って国連が自分たちの立場を表明することがある、とコメントしています。
外務省は外務省なりに国際的な悪評を避けるために、ある種の防波堤を造ったと言えると思います。
ところで、日本は昨年理事国に当選して、世界に47ある人権理事国になりました。
その際に日本政府は自発的にこういう誓約を立てています。
日本政府が出したコメント:
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)や特別手続きの役割を重視し、特別報告者との有意義かつ建設的な会話の実現のため、今後しっかりと協力していく
この誓約とも矛盾すると思いませんか。
過去に日本政府は国連特別報告者を叙勲しています。
それは、マルズキ・ダルスマンというインドネシア出身の報告者ですが、彼は北朝鮮による日本人拉致などを人権問題の解決に向けて国際的な協力を訴えた人です。
彼に対しては旭日重光賞を授与しています。
政府に好都合であれば叙勲し、不都合であれば意図したプロパガンダだということを言うのは国際国家として恥ずかしくないでしょうか。
これを国辱と言わずしてなんと言う。
これは日本だけの問題ではないですが、基本的に誰が誰のために何をするのか問題です。
大統領がアメリカ国民のために頑張っているとは思いにくくなった。
霞が関の役人が日本の国民のために頑張っているとも、あるいは政治家が日本国民のために頑張っているとも思いにくくなった。
たとえば特区というのは従来の既得権益を廃しトップダウンで決める。
しかし、そのトップダウンが利害相反をものともせずに、自分が理事だったり金をもらっていたり、昔からの刎頚の友やそういう人たちの作ろうとしている学園を最大プッシュするとか。
これは、「特区だから上からのトップダウンでいいんだ」という問題ではなくて、そのトップダウンで指令を下す人間たちが、国民のためあるいは今治市のためじゃなく、自分の身内のために指令を下すのですか?
トランプ大統領に似てますね。
トランプ大統領は、娘婿が捜査対象になりました。
日本ではそうなるでしょうか。