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国連核兵器禁止条約の交渉の焦点について

NHKマイあさラジオ「ニュースアップ」6月26日放送

 キャスター:世界の核兵器を初めて法的に禁止する条約を制定しようという交渉が、ニューヨークの国連本部で本格化しています。

核兵器のない世界に向けた一歩になるのか。

別府解説委員に聞きます。

今回の条約ですけど、まさに核兵器のない世界を目指すための条約ですね。

 

別府解説委員:はい、その通りです。

甚大な被害を出す核兵器は、人道上あってはならないもので、完全に禁止する条約を目指しているんです。

核を持たない国々が推進していて、今条約文作りの交渉が進められています。

広島・長崎の悲劇を決して繰り返してはならないとして、日本語の「HIBAKUSHA(被爆者)」という言葉も盛り込まれてる方向です。

 

キャスター:この核兵器のない世界というのは日本の悲願でもありますよね。

 

別府解説委員:はい、ニューヨークの国連本部には、広島・長崎の被爆者が訪れ、交渉の場に出席して、被爆体験を語るなどしながら、条約の早期の成立を訴えています。

ところが、交渉の場には、日本の政府の姿はありません。

政府は、アメリカやロシアそれに中国などの核保有国が条約に反対して、交渉にも参加していない状況では、条約ができたとしても、軍縮には繋がらないとして、交渉に参加しないことを決めたからです。

また、北朝鮮が核開発を続けるなか、日本を守るアメリカの核の傘からでるわけにはいかないとしています。

 

キャスター:被爆者と比べると、温度差がありますね。

 

別府解説委員:こうした日本政府の姿勢に対しては、被爆者などから、「後ろ向きだ」という声も出ています。

確かに、核保有国が簡単に核兵器を手放すとは考えられませんし、条約ができても、加盟することはないと見られています。

しかし、条約を推進する国々は、こうした厳しい状況だからこそ、禁止する条約が必要だと考えています。

条約を支持する国際世論を盛り上げて、核保有国に対して、軍縮を促す圧力にしようと取り組んでいます。

過去にも、対人地雷やクラスター爆弾について、最初は「不可能だ」と言われながら、国際世論の高まりを背景に禁止する条約ができた先例があるではないか、と言うんです。

 

キャスター:条約文を作る交渉ですけど、今後はどのように進んでいくんでしょうか。

 

別府解説委員:この交渉にはおよそ80カ国が参加し、議長が示した案を元に議論を続けています。

交渉には先ほどお話ししたように、核保有国ですとか、日本のようにアメリカの核の傘の下にある国は、参加していません。

条約づくりに賛成する国々が、交渉しているわけですから、基本的な考え方は一致しています。

ただ、交渉が進むなかで、いくつかの意見の違いも出てきているんです。

たとえば、東南アジアや南米それに中東の国などは、核抑止つまり相手が攻撃すればこちらも攻撃すると脅すことで、相手に攻撃をためらわせる考えも否定する文言を盛り込むべきだと主張しています。

これに対して、他の国からは、核抑止を否定するような内容だと、今は交渉に参加していない同盟国の核の傘下にあるような国が、将来的にも条約に参加する道を閉ざしてしまうと、懸念する声が出ていまして、調整が続いています。

推進国は、来月7日までに、条約文をまとめ、年内の条約の制定を目指しています。

実効性については、一部に疑問視する声があるとはいえ、核兵器を禁止する条約ができれば、これは歴史的なことです。

それだけに、国際的な機運が高まり、核軍縮が停滞する現状に風穴をあけることにつながるか、注目されます。