進む少子化 どうする?子育て支援の財源 NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」
NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月14日放送
解説:藤野優子解説委員
キャスター:政府は先週経済財政運営と改革の基本方針いわゆる骨太の方針に人材への投資として幼児教育や保育の早期無償化に取り組む方針を打ち出しました。
いまなぜ、幼児教育や保育の無償化という議論が出てくるんですか。
藤野:この背景には少子化が一段と進んでいるということに加えて、経済的に厳しい子育て世帯・子育て家庭が増えているということがあります。
いま、幼稚園や保育園の利用料は各家庭の所得とか子供の年齢に応じて決まっているんですけど、平均すると1月2万円から3万円台なんです。
ところが、子供のいる世帯の平均所得はこの20年で70万円近く下がってきている。
しかも、問題なのは、低所得の世帯が増えているんです。
少子化に悩む他の国も、保育所の整備と合わせて、幼児教育・保育の無償化に取り組んでいるので、日本も保育だけではなくて、子育て世帯の負担軽減も力を入れていくべきだという議論が従来からあったんです。
キャスター:政府はこれまで待機児童対策をやってきて、そこにも財源が必要ですよね。
新たに幼児教育や保育の無償化ができるだけの財源はあるんですか。
藤野:そこが一番の問題です。
政府も待機児童対策の方もやっていますけど、今年度末までに待機児童解消と言っていたのができなくて、3年先送りとなっていますけど、これから5年でさらに32万人分の保育の受け皿の整備をするという計画でして、これに必要な財源が2000億円以上と言われています。
そのうえ、幼児教育・保育の無償化となりますと、1兆1700億円かかります。
この財源が確保できなければ、どっちを優先しますかという議論が出てくると思います。
政府は、財源をどうするかということを、今回の骨太の方針にも少し打ち出しているんですけど、歳出の見直し、それから増税、新たな保険料、この3つの選択肢の中から年末までに財源をどうするか話し合いましょうということを盛り込んでいます。
その中のひとつの選択肢として、こども保険の構想を検討の俎上に乗せようということです。
これがどういうものかというと、サラリーマンや企業が払っている厚生年金の保険料とか国民年金の保険料に上乗せして新たに保険料を負担してもらってはどうかという話なんです。
キャスター:こども保険についてはいろいろ異論もありますよね。
藤野:実はこのこども保険の構想というのは、過去にも政府の中で検討されたことがあるんですが、その時にも、いろいろ課題があるということになりました。
なかでも一番問題になったのが、保険制度である以上保険料を納めていない人には原則給付は受けられないというのが保険制度の仕組みなんですね。
ところが、例えば国民年金の保険料というのは逆進性が高い一定額になっているので、低所得の人ほど負担が重くて、今でさえ保険料が払えない人が多くいるんですけど、でも考えてみると、生活が苦しい家庭のお子さんこそ手厚い支援が必要です。
そうすると、保険では行き詰まるんじゃないか、税でやるべきなんじゃないかというのが、今出ている意見で、私もそれが筋だろうと思います。
キャスター:消費税は2度もも先送りされました。
なかなか難しいんじゃないですか。
藤野:そうかもしれませんが、国民に保険料の引き上げの方が理解されやすいという発言もこの議論の中で出ていたんですが、それはおかしいと思います。
なぜかというと、税も保険も同じ財布から負担しているわけで、保険料の方が取りやすいから、取りやすいところから取るという方法を続けていると、政治が、いつまでたっても給付に見合うだけの負担・増税という決断をしないで遅らせていくわけです。
そのことが結果的に、少子化がここまで進み、社会保障改革を送らせてきた大きな原因だと思います。
キャスター:ではどうしたらいいんでしょう。
藤野:何も消費税だけが選択肢ではないと思います。
ひとつ参考になるのはフランスで、フランスは出生率が回復した国なんですが、まず企業が拠出金を賃金の3%から5%出す、それプラス国民全体に所得の課税をする、賃金とか年金とか資産にです。
そういう所得課税をしていって子育てへの支援の財源に回しているんです。
そうしたことも含めて、今後の制度設計の議論の中で、しっかりとした提案をして、国民に提示してほしいと思います。