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開館の準備進む韓国初の原爆資料館

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」6月28日放送

ワールドリポート

 

キャスター:韓国で初めてとなる原爆資料館の建設が、今年8月の開館を目標に進められています。

ソウル支局の安永記者に聞きます。

原爆資料館といいますと、広島県長崎県にありますけど、韓国にも被爆者の方はいるんですよね。

 

安永:原爆が投下された広島や長崎では、当時徴用されたり仕事を求めて朝鮮半島からやってきた人たちが多く住んでいて、原爆によって数万人が被爆したと見られているんです。

特に、韓国南部のハプチョンは、広島などで被爆した600人以上が現在も暮らしていて、韓国で唯一の被爆者養護施設もあることから、韓国の広島と呼ばれています。

韓国初となる原爆資料館は、このハプチョンに作られるんです。

 

キャスター:今年で終戦から72年になりますけど、作る環境になるまで、これだけの年月がかかったんですね。

 

安永:韓国の被爆者団体の話では、韓国政府がこれまで本格的に被爆者の支援をしてこなかったことや、差別を恐れ、被爆者自身が被害の実態を積極的に公言してこなかったことから、韓国では、あまり知られていないということなんです。

しかし、被爆者たちの高齢化が進み、今記録を集め、若い世代に原爆の恐ろしさを知ってもらうような場所を作らなければ、歴史が忘れさられてしまうという強い危機意識があったということです。

 

キャスター:原爆資料館の開館に向けた準備はどこまで進んでいるんですか。

 

安永:建物については9割以上できていて、今年8月6日の開館に十分間に合う予定です。

一方で、今課題になっているのは展示物です。

終戦後、日本からの引き上げの際に、多くの物を持って来ることが出来なかったほか、韓国には人が亡くなると遺品も一緒に火葬してしまう風習があるので、被ばくの実態を伝えるものが、ほとんど残っていないというのが、実情だそうです。

 

キャスター:展示物の問題はなかなか難しそうですね。

 

安永:このため、ハプチョンの被爆者団体のメンバーと自治体の職員は去年、長崎と広島を訪問し、原爆資料館を見学して、貯蔵している被ばくに関する資料の貸し出しなど、新しい資料館の開館に向けた協力を要請し、今後自治体同士での協議が行われることになっているんです。

また、被爆者たちに聞き取り調査を行い、証言を残す活動も来月から本格的に始めるほか、繰り返し展示物の提供を呼びかけています。

このため、少しずつですが寄贈されるものも増えています。

今月、アルミニウムの弁当箱を寄贈したキムさんに話を聞くことが出来ました。

キムさんは、16歳の時、広島の鉄道会社で働いていて被爆しました。

弁当箱は、その際にカバンに入れていたもので、爆風で吹き飛ばされて、多くのけが人や亡くなった人の中を家族を探すために、自宅に帰るまでずっと抱えていたものだということです。

キムさんは資料館について、多くの若い人たちが原子力爆弾は恐ろしいものだと知り、世界から核兵器をなくさなければならないと思うようになってほしいと期待していると、話していました。