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北朝鮮ICBM 国際社会の対応は

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」7月5日放送

ニュース解説  出石解説委員

 

キャスター:今日はICBMの脅威についてです。

北朝鮮は、昨日ICBM大陸間弾道ミサイルの初めての発射実験に成功したと発表しました。

今回のミサイル発射がどういう意味を持つのか。

そして国際社会は北朝鮮の挑発にどう対応していけば良いのか。

出石さん、昨日発射されたミサイルなんですけど、どんなもので、どんな意味を持つんでしょうか。

 

出石:まず北朝鮮にとりましては、アメリカ本土を核兵器で攻撃する段階に一歩近づいたということだと思います。

日本の防衛省によりますと、昨日発射されました弾道ミサイルは、高さ2500キロ以上に達しました。

そしておよそ900キロ離れた日本の排他的経済水域内に着水したということなんです。

昨日の発射というのは、わざと角度をつけて上に打ち上げる方式で行われたんですが、角度をつけない通常の打ち方であれば、5500キロ以上飛んだ可能性があると見られています。

これはアラスカまで届く距離なんですね。

北朝鮮は、アメリカを核攻撃できる能力を備えることこそが、体制存続の唯一の手段と信じ込んでいますので、これで核大国であるアメリカと対等に渡り合えると、今回の発射成功を大きなステップと位置付けているんだと思います。

昨日の発射の後、金正恩朝鮮労働党委員長は、核の放棄には応じないという考えを強調しています。

さらに、アメリカは我々からの贈り物を不快に思うだろうが、今後も大小の贈り物を頻繁に贈ろうと、このように挑発的な言い方で今後も核実験あるいはミサイル発射を続けることを示唆しているんです。

 

キャスター:ジョークにしても行き過ぎているというか、贈り物を送るというのはずいぶん挑発的な発言のような気がするんですけど。

どうすると核やミサイル開発をやめさせることができるんでしょうか。

 

出石:対話と圧力、これに尽きると思います。

アメリカや日本は、今は圧力を強める局面だとしています。

国連安保理決議の遵守、それから制裁の強化を強調してるんですね。

またアメリカは中国の役割に期待しているんですけど、トランプ大統領はあまり成果が上がっていないと不満を募らせているんです。

鍵を握っているのは中国そしてロシアだと思いますけれども、習近平主席それからプーチン大統領が、今回の発射を受けて、共同で声明を発表しているんです。

この声明を見ますと、今回の発射は到底受け入れられない、とまず非難しています。

その上で注目されるのが、北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結するのと引き換えにアメリカと韓国が大規模な合同軍事演習を停止すべきだと、このように提案しているんです。

この核開発の凍結、この言葉が今後のキーワードになるんじゃないかと思っています。

 

キャスター:核開発の凍結、聞く耳を持たない北朝鮮に打開策と言えるんでしょうか。

 

出石:ここは難しいところなんです。

実はこの凍結というのは、韓国の文在寅大統領も主張してるんですね。

まずは、今の核・ミサイル開発を凍結させると。

そしてその次の段階として、非核化、核の放棄を実現する。

2段階のやり方なんですね。

北朝鮮は一向に挑発をやめようとしない、そういった現状を考えれば、これ以上状況が悪くならないという意味では、現実的なアプローチという見方もできるかもしれません。

ただ、北朝鮮は核の放棄には応じないと繰り返し強調しているんですね。

そんな中で、凍結して果たして意味があるのかどうか。

こういった疑問もあります。

まず本当に凍結してるのかどうか、これを検証するというのもなかなか難しいですし、仮に凍結できたとしても、その先に非核化、核の放棄という最終的な出口がある、そういった保証もない訳ですね。

ですから、日本やアメリカは、この凍結してから非核化という2段階のアプローチには今の所難色を示してるんです。

まずは北朝鮮が核の放棄を約束することから始めなければ意味がない、こういう立場なんですね。

 

キャスター:今週末にはドイツのハンブルクでG20サミットが開催されますね。

各国の思惑ですとか立場の違いは埋まるんでしょうか。

 

出石:そこが焦点だと思います。

G20サミットには、日本、アメリカ、中国、ロシア、韓国とつまり北朝鮮を除く6カ国協議のメンバー国の首脳が勢ぞろいするんですね。

対話か圧力かそのどちらを重視するのか、あるいは凍結なのかそれとも非核化が先なのか、こういった考え方の違いはあるんですけど、まずは危機感を共有して、国際社会全体としてこの問題に最優先で取り組んでいくということが必要だと思います。

もうひとつ強調しておきたいのは、核を保有するということと使うこととは別の問題なんですね。

北朝鮮核兵器を使えば瞬く間に自分達が破滅してしまうということは十分にわかっているはずです。

北朝鮮の核・ミサイル開発が脅威であることは間違いありませんけど、いたずらに怯えるのではなくて、北朝鮮の核・ミサイルの能力あるいは意図を正確に見極めて行く。

正しく恐るということも大切だと思います。