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オースラリアでも移民規制 ワールドリポート

7月20日放送「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:アメリカやヨーロッパで移民規制の動きが強まるなか、多文化主義を掲げてきたオースラリアでも移民の受け入れが制限されようとしています。

今年4月に市民権や就労ビザの審査を段階的に厳しくする方針が発表され、今月実際に改正が行われました。

アジアからの移民が多く、日本とも関係が深いオーストラリアで何が起きているのか。

シドニー支局の小宮記者に聞きます。

今回の改正では何がどう変わったのかを改めて教えてください。

 

小宮:日本人もよく利用している一時就労ビザ通称457と呼ばれるビザが改正されました。

オーストラリアに進出する企業の駐在員や、現地の企業に雇用される従業員などが取得するビザで、今回の改正では、申請にあたって犯罪歴がないことや、一部の人を除いては一定の英語力があることを証明するよう求められています。

私自身も先月、457を取得したんですが、改正前ではあったんですが、審査期間が今月7月にまたがった際には、新しい要件が適用される可能性があるという情報もあったので、警視庁に出向いて指紋を提出するなど、書類を揃えるのに苦労しました。

 

キャスター:いろいろと煩雑な手続きが増えるということなんですね。

なぜ、要件が厳しくなったんでしょうか。

その背景には何があるんでしょうか。

 

小宮:背景には、アメリカやヨーロッパと同じく、オーストラリアの国民の間で移民に対する不満や不安が渦巻いていることがあげられます。

今回改正された457ですが、永住権や市民権の取得にもつながるビザなんです。

去年1年間には、前の年よりも6.1%多い2万4千270人が新たに取得しています。

本来でしたら一定の技能や専門知識を持つ外国人に認められるビザなんですけれど、実際にはファーストフード店の調理場で働く労働者が取得しているケースもあって、問題視する声や、雇用が奪われているという声も上がっています。

また、移民の増加に伴い、住宅の需要が伸び、不動産価格が高騰し、市民生活が圧迫されている他、アメリカやヨーロッパのテロ事件に呼応する動きへの懸念も出ていて、排他的な極右政党が指示を伸ばす結果にもなっています。

こうしたなか、ターンブル首相はオーストラリア第一主義という言葉を掲げ、国民の生活を守る姿勢を強調したのではないかと見られます。

 

キャスター:今回の規制強化で、どのような影響が出ているんでしょうか。

 

小宮:今のところ大きな混乱はないようですが、ビザの取得が難しくなったことから、今後駐在員の派遣に苦慮する外国企業も出てくる可能性があります。

ここシドニーでは、先週日本の商工会議所が、ビザの改正に関するセミナーを開いて、およそ90人が参加するなど、日本企業の間でも関心が高まっています。

計画では457にさらに改正を加え、来年3月までには廃止して、新たな就労ビザを導入することになっています。

ビザが認められる業種も、オーストラリアで人材が不足している職業に絞られるということで、外国人労働者が就ける仕事は大幅に減るものとみられます。

また、永住ビザに切り替える際には、これまでよりも長い3年間の就労経験が必要となる他、市民権を取得するには、さらに4年を経た上で、民主主義や男女平等などオーストラリアの価値観を尊重できるかも問われます。

オーストラリアは、人口の4ぶんの1以上が外国で生まれていて、移民によって支えられてきました。

移民を規制することは、国の発展に影響を及ぼしかねないだけに、今後の移民政策の行方に注目が集まっています。