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東京五輪 財源不足で猛暑対策は大丈夫?

8月2日放送  「森本毅郎・スタンバイ」

 

渋谷和彦:東京オリンピックの開催期間は、7月24日から8月9日まで、まさに蒸し暑い猛暑というか酷暑の大会になると思われます。

本当に、選手とかボランティアの健康大丈夫か心配になる所なんですが、それがもう杞憂であってないどころか、さらに想像を上回る極めて深刻な事態を予想させる研究データが発表されたんです。

桐蔭横浜大などの研究チームが、2020年の東京オリンピックパラリンピックが、どれほどの猛暑の大会になるのか、暑さ指数という数値を使った予測を公表したんです。

この暑さ指数というのは、一言で言うと、熱中症のリスクを判断する数値です。

環境省が2006年から発表しています。

具体的には、気温に加えて湿度と地面とか建物から出る輻射熱、これを考慮に入れて気温と同じように摂氏30度とか言うように「度」で表示するんです。

研究チームは、2004年から2014年までのオリンピック開催期間中つまり夏に東京都心の暑さ指数がどれぐらいだったかを調査しました。

その結果、暑さ指数は1年に0.4度ずつ上昇していまして、2020年の東京五輪開催時には、34度を越えることがわかりました。

これがどれほど危険かと言うと、暑さ指数が28度を越えると、熱中症の患者が急増します。

環境省は、暑さ指数28度から31度を厳重警戒レベルとしまして、激しい運動を中止するように求めています。

31度以上を危険レベルと定めていまして、運動は全てやめるよう推奨しています。

ですので、それをさらに上回る34度ですから、戸外にいて立っているだけで熱中症のリスクにさらされるという、とんでもない暑さになるということです。

東京と他の五輪開催都市の環境を比較分析した都市工学を専門としている横梁誠東京大学教授は、「東京の夏は最悪。競技を実施して良いレベルではない。熱による人体へのダメージがかなり大きい」と警告しているという、そういう状況になりそうなんです。

 

森本毅郎:マラソンなんかどうなるんですか。

 

渋谷:これが深刻なんです。

桐蔭横浜大などの研究チームは、2015年にマラソンコースの暑さ指数を計りました。

なんと測定した9地点全てで31度を超えていました。

2015年時点ですから、2020年には1年に0.4度ずつ上がっていくとすると、とんでもない暑さ指数になるということですよね。

東京都は、マラソンコース上に街路樹を増やして日陰を作るとかで対策をするとか、あるいは国土交通省は、選手に霧を吹きかける装置を沿道に設置するという対策を検討してるんですが、焼け石に水は明らかですね。

そもそもマラソンは冬の競技なんですね。

適温は大体10度くらい。

じっとしていると寒さを感じる程度が適温だと言われてるんです。

2004年のアテネ五輪の女子マラソンでは、猛暑による熱中症で、選手の2割が棄権してしまったんです。

このままだと、東京五輪はそれ以上の棄権率になることは目に見えているということですね。

これについては、2012年のロンドン五輪で男子マラソンコーチを務めた小林亘日本ランニング協会代表理事は、「東京五輪は非常に危険だ」と言っています。

「夏は関東など暑い地域では体育会はほとんど行わない」とこうしてるんですね。

ですので本当に、決して大げさではなく、選手の命も、マラソン大会については心配だなと思います。

 

森本:東京オリンピックですけど、東京でマラソンやっていいのかなと思いますよね。

 

渋谷:やはり抜本的な対策は、東北とかの涼しい地域でやるべきじゃないのかと思いますよね。

ただ実はこちらにも大きな障害がありまして、誰が都外での競技の費用を負担するかという、財源の問題がずっと揉めてるんですよね。

1兆3850億円にも上るとされる開催経費の分担については、この5月に東京都と国・組織委員会で大枠では合意しましたけど、神奈川とか埼玉とか千葉などで開催される競技の運営費350億円については依然としてどこが負担するか結論が出ていないんですね。

小池都知事は、先月の下旬に盛岡で開かれた全国知事会議で、その350億円については、全国で発行する宝くじの売り上げで賄ってはどうかと、いうことを言ったんですが、早速埼玉と千葉県側から、運営費は当初の原則通り都や大会組織委員会が負担すべきだと反論が噴出しまして、結論が出なかったんですね。

こんな状況では、マラソンは自治体あげて整備とか警備に取り組まなければいけないのに、それをやろうという自治体は出てこないんじゃないでしょうか。

東京都としても、マラソンは花形種目ですし、東京の名所が世界に発信できますので、これを他県には取られたくないだろうという思惑も当然あるわけですよね。

となると、もう期待するのは、2020年の夏が奇跡的に涼しい夏になってくれるという。

 

森本:それは無理でしょう。

実際に選手の人たちの健康状態に大きく影響してしまうとなると、本当にここで大会を開いていいかどうかというのも、根本的なテーマとしてありますよね。

 

渋谷:7時ごろにスタートするのを5時にしようとか言ってますけど、5時も結構暑くてジメジメしてるんですよ。

となると抜本的に考えたほうがいいんじゃないかと思いますね。

 

森本:東京オリンピックそのものが危ぶまれるような状況になってきましたね。