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宮台真司が見た前川喜平・前文科事務次官とは?(その①)

TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ」6月23日放送 「ボイス」宮台真司

荒川:現在、前川喜平前文部科学省事務次官が、記者会見を開いているところですが、宮台さんに前川さんについて伺いたいと思います。

インターネットの番組や当番組にも出演していただいたんですが、宮台さんは、前川さんにどんな印象を持ちましたか。

 

宮台:文春や新潮の記事が出る前に僕らのインターネット番組に前川さんに出てもらう、そういう計画を立てたんです。

神保さんはアメリカにいらっしゃったんだけど、僕は頑張りました。

その時に、「マル激」が負うリスクを減らす必要があるから、関係者に聞きました、どういう人なのか。

で、他の立派な人だと、そのことは命をかけて保証するといった発言が、複数得られたということもあって、「これは絶対出そう」と思った。

どうしてそこに気を使ったか、つまりリスクとは何なのか、お話をすると、 これは僕がエドマーロー問題と言ってることと同じなんですね。

出演時間が2・3時間に及ぶと、人間としてのたたずまいが人々の反応を決めてしまうということがある、これがエドマーロー問題なんです。

エドマーローというのは、昔マッカーシズムが旋風吹き荒れた時のCBSのキャスターだったんですね。

彼は、独断でマッカーシーに30分枠を提供すると決めたんです。

30分枠で彼が好きに喋ったんです。

その結果何が起こったかというと、マッカーシーはクズだ、という世の中の反応が一般化した。

そういう反応が席巻して、マッカーシーは権威を失って、一発で終わったということなんです。

エドマーローの読みはこうだったんです。。

文書情報と画像情報は全く違う。

原語と言語の差異に相当すると。

要はですね、もっともらしいことを言葉で言っている、それが新聞に書かれていても、それを書いている・それを発言している人間が、こんなにも浅ましくクソの野郎なのか、と思った瞬間に人々は従おうという気を失くすんですね。

逆に、僕の読みはこうですね。

マーローとは逆ですね。

こんな立派な人が、官邸と読売新聞にいわば印象操作されていたのか、と。

ごみ売新聞問題と言われているやつですね。

そういうこともあって、前川さんが本当に立派な人だなということは、会えば誰もが思うし、リスペクトするし、政治家さんなんかと比べても全然印象が違うんですね。

彼は、自分の名前を隠して子供の貧困支援のNPOとかに入っていらっしゃってね、問われるまで身分を明かさなかったということも含めて、なかなか素晴らしい人です。

 

荒川:日本記者クラブからの申し入れで開かれた記者会見ですが、ご紹介しますと、日本記者クラブの趣旨説明によりますと、

国家戦略特区という政策を巡り、行政が歪められた可能性がある重大な事件である。

 しかし、この問題を解明する場所として、会見を要請したところ、前川氏は快諾してくれた。

つまり、日本記者クラブからの申し入れを快諾してくれた。

このタイミングに特別な意味はない。

さらに続けます。

前回の会見は1ヶ月前、この問題で動きがあった。

各社から問い合わせもたくさんもらった。

今回の依頼があったので、会見を設けてもらった。

記者クラブからのメッセージです。

政治的な意図はない。

政治勢力との関係もない。

安倍政権を打倒しようという意図もない。

都議選告示日と重なったことにも特別な意図はない。

文部科学省の再就職規制違反との関係を憶測する人もいた。

新しい国立競技場をめぐる問題との関係も憶測する人がいた。

私の親族が関与する企業との関与を憶測する人もいた。

全て関係ない。

といったような内容が、今伝わってきています。

ここまででどんな印象をお持ちですか。

 

宮台:僕の立場から言えることは、天下り問題と関係があると僕は思っています。

なぜかというと、加計学園問題で徹底的に反対をした高等局長が事実上内閣府の人事局の判断でクビをはねられた、飛ばされてるんですね。

文科省としては、文科省の行政の中立性を守るために頑張った人間が官邸からひどい目にあったということで、それで天下り先を用意したという、そういう経緯があるんですが、僕の推測ですけどね。

推測というか事実だと思いますけど。

それに腹を立てたのは官邸なんですね。

もし、官邸に反したことを官僚がやって、クビをはねても、その官僚が自分たちの互助によって次のポストを見つけられちゃったら、罰にならないでしょ。

そうすると、官僚たちの異議申し立てを抑止・抑制することができない。

ということで、文科省だけではなかったのに、狙い撃ちをして、天下り問題を明るみにしたという経緯があるんですね。

このストーリーをみなさん覚えておいてください。

 

荒川:ざっくり言うと、文部科学省の官僚が反乱を起こしたと、内閣府と言いますか上の判断に対して。

そういう図式っていうのは、どうなんですか。

 

宮台:反乱を起こしたというよりも、前川さんがおっしゃっていたように、基本的に文科省が行ってきた従来の中立的な行政を、特区・トップダウンという名のもとに、お友達に権益を渡すというタイプの利益相反、これによってないがしろにされるということは耐えられないというね。

大まかな筋を言えばそういうことで、反乱も何も、官邸は嘘をついているから。

内部文書が無いってね。

内部文書があるということを何故嘘をついて否定したのか簡単です。

要は、公共性のない決定を勝手にしたというふうに思われるからですよ。

だから、内部文書はある。

それだけでいいんです。

まさに公共性をないがしろにする決定をしたという証拠になるような内部文書はある。

 

荒川:萩生田官房副長官加計学園獣医学部新設に関して文部科学省の幹部に早く進めるように求めたと読める文書が出てきているわけです。

文部科学省の官僚反乱と、それを見ているのか。

 

宮台:全然違うんじゃない。

 

荒川:つまりそこでもって、内閣府文部科学省の間の手の打ち方に疑符があるということですか。

 

宮台: 反乱というのは基本的に、権力を自分たちのもとに掌握すると、つまり自分が政治を動かすという立場に立つということでしょ。

そういうことでは全くないということですね。

 

荒川:前川さんの発言がまた入ってきました。

問題となっている文書について、私が在職中に触れたものもある。

手にとっていないものもある。

しかし、実際に触れた事実を記載しているものである。

100%記載の内容については、間違いのないものと評価している。

文書が次々と出て来ることで、国民にも疑惑が深まっている。

文部科学省が100%の説明責任を果たしているというと、そうではない。

しかし一定の説明責任は果たしている。

事実関係については、文部科学省に加えて、内閣府や総理官邸との関係をめぐるもの、その解明については不誠実な対応、逃げ続けている。

 

宮台:だから何故、逃げたり嘘をついたりし続けてきたのかということを考えてください。

つまり印象操作をしたかったからだよね、簡単に言えば。

公共的な決定がなされていると印象操作をしたかった。

印象操作じゃなかったって言うんだったら、ないものをない、あるものをある、と言うべきでしょ。

あるんだから、はっきり言って。

あると認めた上で、言うべきことは言うんだけど、これが表に出てしまえば、何を言ったって国民は信じてくれないと言うことでしょ。

そりゃ信じないよ、当たり前じゃないか。

そう言う問題だから、印象操作をしようとした官邸に対して、ただ「あります」と、「こう言う事実があります」と、こういうふうにプレゼンテーションしているだけなので、反乱でもなんでもない。

 

荒川:そういうのっていうのは、時間が経てばバレてしまうことでしょ。

 

宮台:先程申し上げたように、表に出てはいけないことを押さえられるというふうに、ある種の権力の集中があれば人々は腐敗していきます。

 

荒川:押さえられると思ったのね。

 

宮台:もちろん、そうです。

だから、ある時期の菅さんの反応を見ればものすごく動転してたじゃない。

ないはずのことが起こっちゃったからだよね。

 

(つづく)