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アメリカが新たな保護主義政策

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月4日放送

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キャスター:今週末に開かれるG20主要20カ国首脳会議では、アメリカのトランプ政権が掲げる保護主義の姿勢が議論を呼びそうですが、そのアメリカがいま新手の輸入制限措置の検討を進めています。

神子田解説委員に聞きます。

具体的にはどういったことが検討されてるんですか。

 

神子田:国家安全保障上の理由で輸入を制限できるアメリカの法律、通商拡大法232条というんですが、この法律の適用です。

具体的に言いますと、アメリカの主張は、海外から鉄鉱石とアルミ製品が不当に安い価格で輸入されていて、こうした状況が続くと、国内産業の基盤が脅かされる。

そうしますと将来、兵器を製造するための原材料が自分の国で調達できなくなる懸念があって、それは国家安全保障上問題だという理屈なんです。

現在アメリカ商務省が、日本を含む各国の輸入の現状を調査していて、どの程度の製品がアメリカに輸入されていて、国内のメーカーの経営にどういった影響を与えているかなどを調査しています。

そして調査の結果何らかの措置が必要だということになると、トランプ大統領に報告し、大統領がそれを受けて、最終決定をするんですけど、この措置が発動されるとなりますと、アメリカへの輸入品に高い関税をかける、あるいは輸入量を制限するということが考えられます。

 

キャスター;これに対して、日本はどう対応しようとしているんでしょうか。

 

神子田:日本政府は、日本から輸出しているのはアメリカのメーカーが作っていない高付加価値の製品だとして、調査の対象から外すように求めているんですけど、この話、日本が輸入制限を免れたからといって、見過ごしていいというものではありません。

そもそも今回の輸入制限措置のアメリカの本当の狙いは、中国にあると言われています。

中国からアメリカへの直接の鉄鋼製品の輸入はそれほど多くはないんですけど、アメリカ政府は中国で作られた製品が第三国を経由して大量にアメリカに入ってきているんじゃないかと睨んでいます。

そこで、そうした迂回輸入を食い止めるために、各国からアメリカへの輸入に制限をかけようとしているんじゃないかと見られているんです。

ところが、この措置の発動にあたっては、明確な基準があるということではなくて、安全保障上に影響を及ぼす懸念という裁量で決められる要素が大きいですので、国際ルールにも違反することになります。

 

キャスター:力技というか無茶な話というか、そんな感じですね。

 

神子田:国際ルールに反するとなれば、通常はWTO世界貿易機関の場で裁かれて、ルール違反だと認定されて制裁措置もあるんですけど、いまトランプ政権が問題なのは、たとえ国際機関がルール違反だと指摘しようとも、それがアメリカの国益に反するのであれば、言うことを聞かないこともあるという姿勢を示しています。

しかし、アメリカがこうした姿勢をとりますと、今度は中国も同じように国家安全保障上の理由でアメリカからのIT製品の輸入を制限する。

それも国際ルールに違反したかたちでやるかもしれない。

となりますと、アメリカがルール違反をしてるから、自分たちもルール違反をするというような、無秩序な報復合戦を招く恐れがあります。

そうなると世界経済全体の混乱を招いてしまうということになりますので、アメリカが安易にそうした道に走らないように、各国が働きかけていく必要があると思います。