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米中経済対話、蜜月は終わるのか ニュースアップ

7月19日放送「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:アメリカと中国の閣僚らが今日初めてとなる経済対話をワシントンで開き、米中の貿易不均衡をめぐる協議の行方に注目が集まっています。

アメリカ担当の高橋解説委員に聞きます。

どうして今米中の貿易不均衡に注目が集まっているんでしょう。

 

高橋:もともとトランプ大統領が選挙キャンペーンの頃から中国との巨額の貿易赤字を強く問題視してきたことはよくご存知だと思います。

しかし、政権発足後は北朝鮮による核とミサイル開発への対応が優先課題に浮上したので、中国から協力を引き出そうと貿易問題での中国批判をあえて抑えて来たんです。

現に今年4月に初めて顔を合わせたトランプ大統領と習近平国家主席ですけど、この時に急接近、米中関係は新婚カップルの蜜月・ハネムーンに例えられたこともありました。

ところが、今も北朝鮮は一向に核とミサイル開発を諦める気配は全くありません。

「中国にはもっとできることがあるはずだ」トランプ大統領はいらだちを隠さなくなりました。

しかも今年前半、アメリカの中国に対する貿易赤字は減るどころか逆に増えているんです。

その結果、これまでいわば封印されていた米中の貿易不均衡の問題が再びクローズアップされて来てというわけです。

 

キャスター:そうしますと今日の米中経済対話というのはアメリカ側は中国に対して厳しい姿勢で臨むことになるということでしょうか。

 

高橋:今回の経済対話には、アメリカ側からロス商務長官やムニューチン財務長官、中国側から汪洋副首相らが出席しますけど、今アメリカは中国不当に安く大量に輸入されている鉄鋼製品ですとかアルミ製品に関税や数量割り当てなどの制限措置を検討すると言っていますから、今日の対話には厳しい姿勢で臨むことになりそうです。

北朝鮮に対するさらなる締め付けを促すためにも、この米中貿易で中国への圧力を強めていく構えなんです。

これに対して中国は、貿易不均衡の是正に向けてこれまでに米中で合意したいわゆる100日計画に代えて今後1年の計画に議論の重点を移すことで、ひとまず摩擦を回避したいと考えています。

というのも中国は、5年に1度の共産党大会をこの秋に控えていますから、今は米中関係に波風が立たないように、いわば時間稼ぎがしたいというのが本音なのかもしれません。

 

キャスター:この米中の貿易に関して日本への影響はありますか。

 

高橋:もちろんトランプ政権は、そもそも日本との貿易赤字についても中国ほど額は大きくありませんが、問題視しているのは確かです。

今日の米中による経済対話そのものについても、日本にとってはアメリカも中国も極めて重要な貿易パートナーですから、両国の摩擦が激しくなれば日本も影響を免れません。

まだ今の段階ではわかりませんが、日米の通商関係にも飛び火してくる可能性を指摘する声もあります。

と言いますのも、トランプ政権は今、いわゆるロシアゲートの影響もあって、支持率が低迷し、議会でもめぼしい法案が通らず、内政では早くも手詰まり感が漂い始めています。

内政に行き詰まった時、外国に対して強い姿勢に出て来る可能性があるというわけです。

最近トランプ大統領は、韓国とのFTA(自由貿易協定)の再交渉を要求しているほか、来月にはカナダやメキシコとのNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し交渉にも乗り出す構えです。

日本もこの秋には、日米の経済対話を控えていますから、こうした各国との通商交渉を慎重に見守っていく必要があると思います。