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防げなかったのか?被ばく事故

NHKラジオ「先読み!夕方ニュース」6月21日放送

解説:水野解説委員

 

キャスター:茨城県原子力機構の施設で起こったプルトニウムの被ばく事故は、被ばくの程度こそ当初心配されたほどではないと見られる一方で、原子力機構の安全管理のずさんさが次々と明らかになっています。

原子力規制委員会も現場に立ち入り検査を行うなど、調査を始めました。

事故は防ぐことができなかったのか。

水野解説委員に聞いていきます。

まず、5人の作業員の被ばくの状況はどんなふうになっていますか。

 

水野解説委員:当初、最大で肺から2万2千ベクレルという大量のプルトニウムが検出されたという発表がありましたけれど、これは体の表面についたプルトニウムを拾った計測ミスの可能性があると見られています。

ただ今週になって、5人全員の尿体のプルトニウムがごく微量ですけれど検出されましたので、内部被ばくしていることははっきりしました。

健康にすぐに影響が出るほどではないと見られていますけれど、5人は再入院して治療を受けています。

このように当初ほど重くはないにしても、事故が重大なものであることは変わるわけではありません。

機構のプルトニウム管理のずさんさが次々と明らかになっています。

 

キャスター:その次々と明らかになっているずさんさというのは、どういうものなんですか。

 

水野解説委員:まずは被ばく事故に対する想定の甘さなんです。

事故ではかなりプルトニウムが飛び散りましたけれど、その部屋の中に作業員たちは3時間以上留まることを余儀なくされました。

もっと早く外に出ていれば、被ばくは抑えられた可能性もあるんですが、機構はこうした規模のプルトニウムの被ばく事故が起きるということを想定していなかったんです。

汚染された部屋から作業員を出すには、外部に汚染が広がらないように、出入口に小部屋をまた別に作らなければならないんですが、その資材集め、それから作業員を確保するのに手間取って、設置に3時間あまりかかってしまったんですね。

またプルトニウムの管理の甘さというものも際立っているんですね。

 

キャスター:プルトニウムというと核兵器の原料にもなりますよね。

厳重に管理されているんではないんですかね。

 

水野解説委員:確かに、IAEA国際原子力機関の査察設けなければなりませんので、原子力機構は量だけは把握していたんですね。

しかし、このプルトニウムがどんな物質が混ざっていてどんな状態で保管されているのか、つまり粉末なのか固形状態なのか、そこらへんが全く把握されておらず、26年間点検もされて来ませんでした。

このプルトニウムは実験に使われたもので、他の物質に混ざっていると見られるんですが、その実験記録、これも保管されているかどうかもわからないんですね。

実験記録というのは、大学の研究室でも保管するのは当たり前のようにやっていることでして、いつもやっているからという慣れから管理が甘くなったんではないかと、そう指摘する専門家もいます。

 

キャスター:そもそも事故の原因はなんなんですか。

 

水野解説委員:まだ分かっていないんですが、プルトニウムは強い放射線によって点火された物質からガスが出て、これが事故につながった可能性のあることがわかって来ました。

と言うのも、機構の別の燃料加工施設で同じようにプルトニウムを保管する袋が膨らんでいたことが過去にあった、ということがわかったんですね。

この時は原因究明が行われまして、放射線プルトニウムに点火された物質が分解されてガスが発生したことがわかって、袋をその時に交換されているんですね。

問題はここからでして、原子力機構はこの件を関係部署にメールで連絡はしていたんですけど、膨らんだという事実だけで、その危険性ですとか、それからどんな対策を取るべきかについて、伝えていなかったんですね。

この時のリスク情報が組織全体で共有されていれば、今回の事故は防ぐことはできたと思います。

 

キャスター:今後どうするべきなんですかね。

 

水野解説委員:このままの状態だと、また大きな事故が起きかねません。

機構の中には、今回のような性状がわからないプルトニウムが大量にあると見られていますので、やはり原子力委員会中心に事故検証をして、プルトニウムの安全管理体制を再構築しなければなりませんけども、その上で、改めて原子力機構の組織や職員の安全意識の改革、これもやっていかなきゃいけないんですね。

これまで、もんじゅとかで何度も意識改革と叫ばれて来たんですが、これまでもんじゅだけにとどまっていた可能性がありますので、全ての部署、全ての組織でこの意識改革を進めていかなければならないと思います。