製造業最大の経営破綻 タカタが民事再生法申請
TBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ」6月26日放送
コメンテーター:青木理
プレゼンター:プチ鹿島
タカタが戦後最大級の経営破綻。
欠陥エアバッグ問題で負債1.7兆円。
欠陥エアバッグのリコール問題で経営が悪化しているタカタは、今日午前東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理されました。
タカタの高田重久会長兼社長は会見で、「再建の見通しが立った段階で辞任する」と表明しています。
また東京商工リサーチによると、負債総額は、リコール費用を含めおよそ1兆7千億円に上る見通しで、製造業では戦後最大の破綻となりました。
プチ鹿島:タカタってどんな会社か、そこをまず調べてみました。
1933年、高田武蔵さんという方が滋賀県彦根市に高田工場を操業して、最初は織物の製造を開始したんです。
その技術を生かして、救命索、船で使う救命ロープを製造した。
1952年、アメリカで行われていた車にシートベルトを装備する研究に触発されて、パラシュート技術を応用したシートベルト研究を始めた。
1960年、日本で初めての2点式シートベルトを発売。
飛行機の座席にあるシートベルトのことです。
これがきっかけで自動車関連の仕事を増やしていった。
1963年、日本で初めての量産車にシートベルトを標準搭載、タカタの製品が採用。
1970年、チャイルドシート販売開始。
1983年にカタカナのタカタ株式会社に称号を変更。
1983年、アメリカのハイウェイパトロールカー800台にエアバッグを納入。
エアバッグとシートベルトでは、世界シェア2割を誇るまでになりました。
そんなタカタが、なぜ経営破綻してしまったのか。
エアバッグの異常破裂が見られるようになったのが2000年代後半でした。
ホンダが初めてリコールに踏み切ったのが2008年。
2009年には、アメリカで初めての死亡事故が起きた。
タカタが対応を本格化させたのは、2014年。
報道で振り返ると、2014年9月12日に、アメリカのニューヨークタイムズが、リコールの原因であったエアバッグの欠陥をホンダとタカタが長く知っていた・認識していた、と報道。
これでアメリカで大きな騒動に発展します。
さらに2ヶ月後、2014年11月、ニューヨークタイムズが、実はタカタはエアバッグの部品の試験で破裂につながる徴候が出たのを隠蔽していた、タカタの幹部がそのデータを消去していた、と報じます。
これでまた、大問題になって、2014年10月集団訴訟。
公聴会に呼ばれて2015年5月、一転不具合を認める。
こういう時系列になったわけです。
だからタカタの対応が後手後手だったのは間違いありません。
なんで、最初に隠蔽をしていたのか。
経済ジャーナリストの片山修さんにお伺いしました。
Q.今回の問題、どこがポイントですか。
A.安全に関する問題なので、早くはっきりと処理すべきだった。初動捜査が遅い。
ニューヨークタイムズでは、最初から隠蔽と報道されましたけど、この時点では、タカタ側のニュアンスとしては、原因がよくわからないからまだ調査中ですという考え方だった。
さらに、早く情報公開したほうがいいとか社長は辞任したほうがいいというアドバイスはされていたらしいが、自分たちは悪くない、原因は他にある、と考えていた。
今回のエアバッグの破裂の原因は、火薬が原因とみられている。
インフレーターというガス発生装置があるが、その中の火薬が原因と見られている。
タカタ自身も第三者委員会を含めて検証してきて、原因はインフレーターもしくは火薬じゃないかというのが定説になっている。
これを最初から情報公開していれば、こんな報道にはならず、バッシングにもならなかったのではないか。
タカタとしては、最初の時点で、原因がわかってから情報公開しようと思っていたと言うが、わからないということも情報公開すれば、少なくとも誠実な姿勢は見せることができたのではないか。
以上が片山さんから伺った話です。
荒川:青木さん、あの時もタカタとホンダとでお互いに欠陥はここだったと公表して、それから部品を直すという手を打っていれば、ここまで来なかったというのは、前から指摘されてましたよね。
青木:おっしゃる通りですよね。
ひとつには、メーカーで命に直結する製品で欠陥があったということの重要さ、加えて隠蔽したのではないかあるいは処理が遅れたんじゃないかという手際の悪さが、戦前から営々と実績を積み重ねてきた信用を完全に覆しちゃった。
1兆円を超える見通しというけど、一部の報道だと、亡くなった方がアメリカだけで11人いらっしゃるので、損害賠償訴訟なんかを起こされれば、さらに跳ね上がるんじゃないか、とも言われています。
メーカーというものは、負わなくてはいけない責任、あるいは対応を誤るとどうなるか、余りにも大きすぎる前例になってしまいますね。
タカタって一般にはあまり知られてないけど、エアバッグの業界では世界でトップクラスのシェアを誇る企業でしょ。
そんなメーカーもこういうことがあると一発でこういうことになっちゃうということは、肝に銘じなくちゃいけない事例ですね。