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世界金融センターの特徴から見えてくること 社会の見方・私の視点

NHKラジオ「NHKマイあさラジオ」7月11日放送

社会の見方・私の視点

慶應義塾大学総合政策学部 教授 白井さゆり

 

キャスター:世界には各地に金融センターと呼ばれる都市がありますけど、その魅力を図る世界金融センター指数というものがあるそうですね。

 

白井:Z/Yenというロンドンのシティにありますシンクタンクが、中国開発研究所と作成し、年に2回、3月と9月に発表しています。

どんなことを見て決めているかというと、5つありまして、第1にビジネス環境、法人税率とか規制の環境を図ります。

2つ目は人的資本、人材・スキル・教育水準・生活の質といった点を注目します。

3つ目がインフラ、情報通信・郵送インフラなどです。

4つ目が市場の流動性

そして最後に都市の名声、たとえばイノベーションの評判、都市の住居や文化の魅力。

そういったものを総合して評価しています。

 

キャスター:教育水準とか都市の居住や文化、ちょっと金融というか経済だけのものだけではないものも入っているんですね。

 

白井:やはり外国の企業とかが営業展開しやすい総合評価だと思うんですね。

世界金融センター指数は、もちろんその都市の金融の魅力を表すものですけど、それにとどまらず、その都市や国の企業、行政の姿勢とか国民性なども透けて見える、そういう物差しでもあります。

 

キャスター:最新のランキングはどうなっているんでしょうか。

 

白井:1位がロンドン、2位がニューヨーク、3位がシンガポール、4位が香港、5位が東京、このトップ5は、2007年当初から全く変わっていません。

 

キャスター:ロンドンというのは世界最大の金融都市シティがありますし、ニューヨークもアメリカという大国の金融の中心ですからランキングが1位2位というのはわかるんですが、3位がシンガポール、これは本当に小さな国なのに金融が発達してるんですね。

 

白井:シンガポールはもともと、貿易中継地として栄えてきた都市国家です。

このため、貿易・金融など様々な金融サービスを貿易に関連付けて提供し、それがより幅広い金融サービスを提供するようになって、金融ビジネスの国家として発展してきました。

なので、最初から国内だけではなくて世界のお客さんを対象に、金融センターを発展させて来たということです。

もともと国内市場が小さいですので、自国の金融機関も合併などを流して競争力をつけさせると共に、海外の金融機関に参入を認めて、互角に競争をさせると共に、常に先を見て新しい金融サービスを提供し、幅広い世界金融センターとしての地位を高めることに努力して来た、そういう経緯があります。

 

キャスター:どんな点が優れているんでしょうか。

 

白井:たとえば機関投資家・企業・個人、そういった人たちの資産管理が中心で、現在世界最速のペースで成長しています。

2020年には、スイスを超えるという見方も広がっています。

その理由としては、まずキャピタルゲイン、株式や債券などの資産を売却した時に出る利益に課税がないということです。

それから、法人税率も所得税率も低い。

そして、新しいイノベイティブ、つまり革新的な金融商品の開発にも力を入れています。

 

キャスター:革新的な金融商品

 

白井:はい、新しいサービスです。

たとえば、イスラム金融

いわゆるイスラム教の原理ですね。

たとえば利息の支払いはできない、武器の製造やアルコールの製造関係はダメ、といった様々な戒律があるんですけど、それに沿った金融投資にも力を入れています。

1990年から市場を育成していまして、2000年以降にイスラム金融というのは世界的にも急速に発展していまして、中東それからマレーシア・インドネシアなどイスラム教徒がたくさんいる東南アジアとの貿易そして金融の両方で関係を高めているんです。

 

キャスター:1990年からですか。

ずいぶん先んじてやっていた。

しかもかなり思い切った戦略、そしてユニークな視座を持っているということですね。

 

白井:そういった姿勢をシンガポールでは国民にも推奨しています。