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核兵器禁止条約が持つ意味について

8月3日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

 

 

キャスター:核兵器禁止条約が持つ意味について、お話は、核兵器廃絶に向けた政策提言や調査行う長崎大学核兵器廃絶研究センター准教授の中村恵子さんです。

核兵器を初めて法的に禁止する核兵器禁止条約が国連で先月採択されました。

中村さんは核軍縮の歴史において大きな前進だと評価されていますよね。

 

中村:今回採択された禁止条約というのは、核兵器をどの国が持つことも使うこともまた威嚇することも含めて全面的に違法とした初めての国際条約ということになります。

つまり、この条約は核兵器の価値であったり有用性であったり、そういったものを完全に否定しているんですね。

これまで、核保有国また核保有国の核に依存している核の傘の下の国が長年主張してきた、核の脅しによって自国の安全が保たれるといういわゆる核抑止という考え方ですけど、こういったものを明確に否定しているという、それがこの条約の重要性であると思います。

条約の採択にあたっては、国連の加盟国の3分の2に当たる122カ国が賛成したという状況があります。

 

キャスター:ここで核兵器をめぐる現状を確認しておきたいと思います。

世界で今核兵器を持っている国は、アメリカ・ロシア・フランス・イギリス・中国さらにインド・パキスタンイスラエルそして核開発を進める北朝鮮を含めると9カ国になりますね。

世界全体の核弾頭の数はおよそ1万5000発で、そのうちの93%はアメリカとロシアが持っています。

中村さん、今回の核兵器禁止条約には、そのアメリカとロシアをはじめとする核保有国は交渉の会議そのものに参加しませんでしたよね。

そして日本も採択には加わっていません。

実効性には厳しいという見方もありますよね。

 

中村:おっしゃる通りですね。

保有国が動かなければ、もちろん核兵器の削減は進まないものですし、核なき世界というものの実現は夢のまた夢というふうになると思います。

しかし大事な事は、正にそうした核軍縮が一向に進まない現状が長年続いて来たからこそ、現状を打開する一手としてこの禁止条約を作ろうと非核保有国が立ち上がったという、その事なんですね。

軍縮に関わる条約としては、すでに核不拡散条約(NPT)というものがあります。

NPTには、アメリカ・ロシアなど5つの核保有国が入っています。

そして、NPTはこれらの国に、自分たちの国の核兵器をゼロにするために誠実に交渉しなさいと定めていますし、またNPT関連の会議の過去の合意文書の中でもそのような約束は何度も何度も確認されてるんですね。

しかし、実際核軍縮のペースというのは極めて遅いと言わざるを得ません。

さらに、アメリカを筆頭に多額の費用をかけて核兵器の近代化と高性能化を図る動きが非常に大きな問題になっています。

したがって、こうした行き詰まりを打開しようというのが、正にこの禁止条約の狙いなんですね。

今のNPTの欠陥を補って、そこでなされた合意を実現させるための追い風であったり、活力というものになると、そういうふうに考えるべきだと思います。

 

キャスター:ただ、この核兵器禁止条約の中に入らないと実効性がないのではないかと思うんですが、どうでしょう。

 

中村:核保有国に門戸を開いたかたちで条文も作られています。

実は核を当面保持したままでも参加できる仕組みができているんです。

しかし、期限を定めて、核兵器を完全に廃棄すると、それに向けた計画を立てる、そして国際的な管理のもとで具体的に廃絶に進んでいくという、そういうプロセスが描かれています。

このように、門戸を開いていてももちろん、そこに核保有国が入っていくる保証はないわけですよね。

しかし、この禁止条約が出来たことによって、これらの国の核政策に正当性というものが大きく揺らぐわけですね。

国際的な批判または圧力というものにも晒されますし、またなぜ禁止条約に参加しないのか、参加しないとしたらどういう別のやり方で核軍縮を進めるのかと、これまで以上に強い説明責任が生じます。

例えば、対人地雷というのも禁止条約が出来てるんですけど、アメリカは条約そのものに参加していません。

しかし、そういった世論の声を受けて一部の地雷の生産をストップさせました。

このように、世論の力は非常に大きいと思いますし、禁止条約というのはそういった世界的な規範を作るという大きな役割を持っています。

 

キャスター:一方で日本も含め核の傘に守られて来たという考え方ですとか現実がありますよね。

北朝鮮の核開発を巡る問題でも、相手側にどう放棄させるのかという課題があると思いますけど、現実的な脅威が増している中で、禁止条約はその役割を果たせるんでしょうか。

 

中村:半世紀以上に渡って日本においては核抑止が国の安全を守って来たという認識が、国の安全保障の前提になって来たという現実があると思います。

しかし、果たして核抑止で本当に安全が守られるのかという、いわば根本的なところを問い直す必要があるのではないかと思います。

北朝鮮の核問題が極めて深刻になっていて、状況は悪化していますけど、アメリカや日本が言っている国を守るためには核兵器が必要だという主張は、そのまま北朝鮮が言っていることにも重なります。

つまり、周りの国が核兵器に依存すればするほど、北朝鮮の主張に根拠を与えてしまっているということも指摘できると思います。

もちろん、禁止条約のみでこの問題が解決するわけではありません。

禁止条約を追い風にしながら、地域国家の信頼醸成を図っていくことです。

そして、核兵器に依存しない安全保障の地域的な枠組みを作っていくということも十分に可能です。

北東アジアに非核兵器地帯というものを作るというのもひとつの案として出されています。

特定の地域で、国家が国際条約を結んで、地域の非核化を実現するという取り組みはすでに世界中で行われています。

 

キャスター:地域を決めて、そこで一斉に核を手放しましょうと。

 

中村:そうですね、つまり核兵器に依存しないという規範を地域レベルで作っていくということが問題を解決するステップになるということです。

 

キャスター:広島・長崎に原爆が投下されてから72年が経ちます。

私たち日本人は、これからどう核軍縮核兵器廃絶に向かっていくべきだとお考えでしょうか。

 

中村:今や核問題はグローバルな問題です。

例えば、環境問題や人権問題、貧困といった問題とともに世界中の誰しもが被害者になりうる、世界中の誰しもがこの問題を解決する責任を持っているという認識で語られています。

そうした中、本来被爆国である日本ほど強く道義的責任を持って強い発言力を持つ国はこの世界にないわけですね。

ところが現状では、日本は自らリーダーシップを発揮する機会を手放して、むしろ抵抗勢力となってしまっています。

これは極めて残念なことです。

でも政府だけを責めることではなくて、実は日本の世論つまり一人一人の意識というものもなかなかそこに向いていない、そういうことも問題だと思います。

したがって、今回の禁止条約というものをひとつのきっかけとして、日本の私たち一人一人が核兵器についてまた核をめぐっての今の日本の立ち位置について、思考停止に陥っていないかと、一人一人が改めて振り返る・考える機会にこの禁止条約を活用してほしいと思います。

今年も8月6日と9日を迎えますが、ここは単に過去にあったことを振り返る日にではなくて、そこを原点として私たちが進むべき未来を考える日であると思います。

 

 

 

 

東京五輪 財源不足で猛暑対策は大丈夫?

8月2日放送  「森本毅郎・スタンバイ」

 

渋谷和彦:東京オリンピックの開催期間は、7月24日から8月9日まで、まさに蒸し暑い猛暑というか酷暑の大会になると思われます。

本当に、選手とかボランティアの健康大丈夫か心配になる所なんですが、それがもう杞憂であってないどころか、さらに想像を上回る極めて深刻な事態を予想させる研究データが発表されたんです。

桐蔭横浜大などの研究チームが、2020年の東京オリンピックパラリンピックが、どれほどの猛暑の大会になるのか、暑さ指数という数値を使った予測を公表したんです。

この暑さ指数というのは、一言で言うと、熱中症のリスクを判断する数値です。

環境省が2006年から発表しています。

具体的には、気温に加えて湿度と地面とか建物から出る輻射熱、これを考慮に入れて気温と同じように摂氏30度とか言うように「度」で表示するんです。

研究チームは、2004年から2014年までのオリンピック開催期間中つまり夏に東京都心の暑さ指数がどれぐらいだったかを調査しました。

その結果、暑さ指数は1年に0.4度ずつ上昇していまして、2020年の東京五輪開催時には、34度を越えることがわかりました。

これがどれほど危険かと言うと、暑さ指数が28度を越えると、熱中症の患者が急増します。

環境省は、暑さ指数28度から31度を厳重警戒レベルとしまして、激しい運動を中止するように求めています。

31度以上を危険レベルと定めていまして、運動は全てやめるよう推奨しています。

ですので、それをさらに上回る34度ですから、戸外にいて立っているだけで熱中症のリスクにさらされるという、とんでもない暑さになるということです。

東京と他の五輪開催都市の環境を比較分析した都市工学を専門としている横梁誠東京大学教授は、「東京の夏は最悪。競技を実施して良いレベルではない。熱による人体へのダメージがかなり大きい」と警告しているという、そういう状況になりそうなんです。

 

森本毅郎:マラソンなんかどうなるんですか。

 

渋谷:これが深刻なんです。

桐蔭横浜大などの研究チームは、2015年にマラソンコースの暑さ指数を計りました。

なんと測定した9地点全てで31度を超えていました。

2015年時点ですから、2020年には1年に0.4度ずつ上がっていくとすると、とんでもない暑さ指数になるということですよね。

東京都は、マラソンコース上に街路樹を増やして日陰を作るとかで対策をするとか、あるいは国土交通省は、選手に霧を吹きかける装置を沿道に設置するという対策を検討してるんですが、焼け石に水は明らかですね。

そもそもマラソンは冬の競技なんですね。

適温は大体10度くらい。

じっとしていると寒さを感じる程度が適温だと言われてるんです。

2004年のアテネ五輪の女子マラソンでは、猛暑による熱中症で、選手の2割が棄権してしまったんです。

このままだと、東京五輪はそれ以上の棄権率になることは目に見えているということですね。

これについては、2012年のロンドン五輪で男子マラソンコーチを務めた小林亘日本ランニング協会代表理事は、「東京五輪は非常に危険だ」と言っています。

「夏は関東など暑い地域では体育会はほとんど行わない」とこうしてるんですね。

ですので本当に、決して大げさではなく、選手の命も、マラソン大会については心配だなと思います。

 

森本:東京オリンピックですけど、東京でマラソンやっていいのかなと思いますよね。

 

渋谷:やはり抜本的な対策は、東北とかの涼しい地域でやるべきじゃないのかと思いますよね。

ただ実はこちらにも大きな障害がありまして、誰が都外での競技の費用を負担するかという、財源の問題がずっと揉めてるんですよね。

1兆3850億円にも上るとされる開催経費の分担については、この5月に東京都と国・組織委員会で大枠では合意しましたけど、神奈川とか埼玉とか千葉などで開催される競技の運営費350億円については依然としてどこが負担するか結論が出ていないんですね。

小池都知事は、先月の下旬に盛岡で開かれた全国知事会議で、その350億円については、全国で発行する宝くじの売り上げで賄ってはどうかと、いうことを言ったんですが、早速埼玉と千葉県側から、運営費は当初の原則通り都や大会組織委員会が負担すべきだと反論が噴出しまして、結論が出なかったんですね。

こんな状況では、マラソンは自治体あげて整備とか警備に取り組まなければいけないのに、それをやろうという自治体は出てこないんじゃないでしょうか。

東京都としても、マラソンは花形種目ですし、東京の名所が世界に発信できますので、これを他県には取られたくないだろうという思惑も当然あるわけですよね。

となると、もう期待するのは、2020年の夏が奇跡的に涼しい夏になってくれるという。

 

森本:それは無理でしょう。

実際に選手の人たちの健康状態に大きく影響してしまうとなると、本当にここで大会を開いていいかどうかというのも、根本的なテーマとしてありますよね。

 

渋谷:7時ごろにスタートするのを5時にしようとか言ってますけど、5時も結構暑くてジメジメしてるんですよ。

となると抜本的に考えたほうがいいんじゃないかと思いますね。

 

森本:東京オリンピックそのものが危ぶまれるような状況になってきましたね。

 

7月の豪雨から学ぶ〜九州北部豪雨1ヶ月

8月4日放送  「先読み!夕方ニュース」

 

キャスター:九州北部豪雨では、福岡県と大分県で36人が犠牲になりましたが、65歳以上の高齢者が7割以上を占めています。

お年寄りを災害からどう守るのか、松本解説委員に聞いていきます。

松本さん、最近の災害を取材して犠牲者に占める高齢者の割合が高いことに気付くんですが、国はどういうふうに対応しようとしてるんですか。

 

松本:東日本大震災の後に法律が改正されて、災害の時に避難に支援が必要なお年寄りなどの名簿を作ることが市町村に義務付けられました。

合わせて、そうした人が避難する行動計画を作ることも求められています。

今回被災した市町村でも名簿作りが進んでいて、このうち福岡県東峰村で被害がありましたけど、ここでは名簿作りと避難支援計画作りが終わっていました。

 

キャスター:どういう計画だったんですか。

 

松本:支援が必要なお年寄りをピックアップして258人の名簿を作りました。

そして一人一人について、近くに住む方などの支援をする人を決めていたんです。

一人のお年寄りについて、一人ないし二人決めていました。

さらに、毎年訓練を行なっていて、今年は災害が起こる10日前に1000人が参加して訓練を行なったばかりだったんです。

 

キャスター:となりますと、今回の災害でそれは生かされたと。

 

松本:生かされました。

ただ限界もありました。

二人が亡くなった野尻地区という山間の集落を取材しました。

大変大規模な土石流が流れ下っていて、12軒のうち4軒が流されたり、潰れたりしています。

ここでは、地区に残っていたり、あるいは雨が強くなったので急遽戻ってきたサポート役の人、二人を中心に軽トラの荷台に乗せるなどして、お年寄りを避難させました。

28人を避難させました。

ただ、これで助けられた人がいるんですけど、一方で声をかけたんですけど遠慮して来なかったお年寄りがいるんです。

このお年寄りのご夫婦二人が亡くなりました。

サポート役の一人の和田さんは、この二人を無理矢理でも連れて来なかったことが悔やまれてならないとおっしゃっているんですけど、一方で事前に支援者の名簿、お年寄りの名簿と個別の支援計画を作っていた事は大変役に立ったと言っています。

 

キャスター:災害を経験して実感したという事なんですね。

 

松本:お話を聞いてよくわかったんですけど、計画がなければやはり大雨が降ってきたら、自分だけ逃げよう、あるいは家族だけ守って逃げようと考えるけれど、あらかじめサポートするお年寄りが決まっていますから、「あそこのお爺ちゃん、お婆ちゃんと一緒に逃げようと思いますよね」と言うんですね。

一方、お年寄りの方も、声をかけられないと、やはりなかなか避難しないと言う人が多いんですと。

和田さんは、長年消防団員も務めていて、こうした経験から、こうした計画をしていた事で、今回の災害で村の中でサポート役に呼びかけられたり、連れられたりして避難したお年寄りは相当いたんじゃないかと話しています。

この要支援者の名簿作りや支援計画作りは、全国の自治体で進められているんですけど、都市部と地方とで事情は違いますけど、そうした地道な備えが重要であるということが改めて示されたと思います。

 

キャスター:高齢者の避難ということでいうと、去年の岩泉町の災害も思い出しますが、施設のお年寄りをどうやって安全に避難させるかというのも重要な課題ですよね。

 

松本:去年は、施設のお年寄りの避難が大きな問題になりました。

今回、先月の豪雨で大規模に浸水した秋田県の大仙市の特別養護老人ホームがありまして、ここは岩手の災害を教訓に、去年の10月に避難計画を作って、訓練も行なっていたんです。

今回それに基づいて、寝たきりの人が多いんですけど、入所者81人を近くの中学校に無事避難をさせて、近くで川が氾濫をして、ここまで浸水は来なかったんですけど、計画通りに避難をして、命を守る対応ができました。

浸水が想定される区域・地域にある高齢者施設などは、計画作りが義務付けられていて、全国に3万あるんですけど、策定できているところは、今のところ8%ぐらいと見られています。

この大仙市の例も、非常に参考になると思います。

台風が迫っているので、住民同士の避難支援の計画や、施設の避難計画があるところはその計画を確認して備える、またない所は、土砂災害や川の氾濫の恐れが高まったらどう対応するのか、家族・近所の人・施設の中の職員の人たちと話し合っておいてほしいと思います。

 

 

 

一帯一路現場では

8月3日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:一帯一路構想は、アジアとヨーロッパを陸上と海上の道でつなごうという壮大な経済圏構想ですよね。

 

大山:この一帯一路というのは、中国の習近平国家主席が4年前に提唱したものです。

5月には世界130あまりの国々の代表団などが参加して、国際会議が開かれるなど、今国家を挙げてこの構想の実現に力を入れています。

 

キャスター:中国国内の現場ではどのような取り組みが行われているんでしょうか。

 

大山:私は中国メディアの団体が受け入れ窓口となった取材団に参加しまして、3日前まで中国を訪問して、現場を見てきました。

行ったのは内陸部の陝西省と沿岸部の福建省です。

一帯一路というのは、現代版の陸と海のシルクロードとも言われますが、この陝西省福建省は、いずれもかつてシルクロードの起点だった地域です。

私たちは地方政府の幹部などから話を聞きましたが、習主席がこの構想を提唱して以降、地域が注目されるようになったということを契機に、地域の発展につなげようという意気込みを感じました。

実際、陝西省福建省では、投資が増え、貿易も活発になっており、地元企業の外国への進出も相次いでいるということでした。

 

キャスター:具体的にはどんな取り組みが行われているんでしょうか。

 

大山:例えば、中国とヨーロッパを結ぶ国際定期貨物列車の運行です。

具体的には、陝西省西安市福建省の廈門市とドイツやポーランドとの間で、それぞれ週3便程度の貨物列車が運行されています。

鉄道輸送は、船での輸送に比べて、コストはかかりますが、時間が3分の1程度に短縮されるということで、電子機器など単価の高いものの輸出にメリットがあるということです。

でも、ヨーロッパとの貿易は、まだそれほど多くはないということでしたが、中央アジアなどヨーロッパまでの沿線地域との貿易が増えていまして、陝西省カザフスタンとの去年の貿易額は前の年の2倍に、またキルギスとの貿易額は4倍にそれぞれ増えたということです。

この他にも、沿線諸国との大規模な博覧会や商談会の開催、また手続きの簡素化など貿易面での規制緩和を進める自由貿易試験区の導入など、様々な政策を行うことで、貿易や投資などの増加につなげているそうです。

福建省の政府のある幹部は、経済のグローバル化は歴史的なトレンドだ、他国と協力しないなど想像できないと話していました。

アメリカがトランプ政権の下で保護主義的な傾向を強める中、中国では逆に外国との結びつきを積極的に進めようとしていることは、地方政府の人たちの話からもはっきりと伺えました。

 

キャスター:この一帯一路、日本はどのように関わっていくべきだと考えますか。

 

大山:安倍総理大臣は5月の講演で、一帯一路について、国際社会のルールに沿ったかたちで実現に向かうことに期待を示しましたが、具体的な取り組みは、今のところはっきりしません。

むしろ中国の勢力圏拡大という思惑もあることから、警戒感もあります。

ただ一帯一路は、習主席肝いりの看板政策で、中国国内では今後も官民挙げて競うように取り組みが加速していくのは間違いありません。

当然、日本企業にとってもビジネスチャンスが広がる可能性もあると思います。

日本はただ、中国台頭へのリスクばかりを考えるのではなく、より一層戦略的に向き合っていく必要があると思います。

 

名門灘の教科書採択に国会議員が圧力?神戸新聞が過去のいざこざを報じる。

8月4日放送 「荒川強啓デイ・キャッチ!」

 

兵庫県の名門灘中学校が採択した歴史教科書をめぐり、自民党国会議員や県会議員などが過去になぜ採択したのかなどと問い合わせていたことがわかりました。

採択した学び舎が出した教科書は、他社では記述がない慰安婦問題に言及している「共に学ぶ人間の歴史」という教科書で、検定に合格しています。

しかし、おととしの年末、県会議員から問い合わせがあり、さらに年が明けてから、灘OBである自民党の森山衆議院議員からも教科書採択について、電話があったということです。

その後、批判的でしかも文面が全く同じハガキが200通以上届くなど、圧力を感じさせるような事態があったということです。

灘中学の和田校長が去年同人誌に寄稿した「いわれのない圧力の中で」と題した文章で

明らかになったものですが、このところネットで問題が再燃しまして、今日の神戸新聞がまとめたわけです。

灘中学校の和田校長は、「いわれのない圧力の中で」という文章に中で、教科書の選定についての政治家からの問い合わせや批判のハガキ、さらに採択した事実を産経新聞で取り上げられたこと、それらの発信源となっている保守系のブログなどについて触れ、最期に「多様性を否定し、ひとつの考え方しか許されないような計測感の強い社会」と批判しています。

 

荒川強啓:このニュース、宮田さんはどのあたりが気になりますか。

 

宮台真司:日本の自称保守のレベルがいかに低いかということがよくわかるね。

社会保守、つまり政治保守・経済保守ではなくて保守の本義は社会保守なんです。

そういう意味でいうと、たとえば全体主義から距離を取るべき理由も社会の保守にあるんです。

そういう観点からすると、この議員さんとかその議員さんを含む勢力を翼賛する組織、それを指導していると言われるプロデュースした人、この人たちは全部いわゆる日本で言う保守概念の浅さを表してるよね。

僕が、こういう時に思い出すのは、西ドイツとポーランドが76年に合意したドイツポーランド教科書勧告というのがあるんです。

72年から始まって76年に終結した全部で10回ぐらいのドイツとポーランドの学者さんたちの会議があって、その結果勧告が出たんです。

その勧告にはややこしいポイントがいっぱい書かれていて、ドイツとポーランドの国境線問題であるとか、特に問題なのは、強制的な住民移動が行われたことについてどう理解するか、領土変更が行われたことをどう理解するか、今後の国境線の確定についてどう考えるのかということについて、必ずしも一律の見解ではないけれども、西ドイツの従来の考え方に反省を迫るような勧告だったんです。

そのせいで、76年以降、ドイツの各自治体は、ものすごい紛糾するんです。

これを全否定するような自治体もありました。

バーデンビュルテンベルクという州が典型です。

全面的に応援する州もありました。

ブレーメン州あるいはハンブルク州なんかはそうです。

ものすごう分岐があって、しかしいろんな議論の果てに、最終的に勧告に沿った方法で教科書をつくるという方向にだんだんとまとまっていくということがあったんです。

いま、ドイツはフランスと共通教科書を歴史については使うようになった。

しかし、これは、3巻も4巻もあるようなすごく分厚い教科書なんです。

なんで分厚くなるか、たとえば従軍慰安婦問題についても、事実についての見解は3種類ある、あるいは事実についての見解とは別にこれをどう評価するかについての見解もこれだけあるというように、分かりやすく言うと、あなたは自分で考えてどの事実、どの価値が妥当だと思うのかというふうに、ディスカッションしなさいと。

ディスカッションをして、我が物としなさいというタイプの教科書で、灘中学の先生は、そういう議論をベースにした教育、これをアクティブラーニングというんですね。

大学でもいま、アクティブラーニングが推奨されています。

そのアクティブラーニングという観点から、まさに何が社会の保守に役立つのか、たとえばもともと、この勧告に対するドイツの反応は最初は反共主義的な観点から行われていた。

東ドイツに対して甘いことを言っていたらやられるぞと。

しかし、どうやら東ドイツがダメらしいということがわかってくるにつれて、今度は逆に全体主義にどう距離を取るか、ドイツの中にもあり得る全体主義に対してどう距離を取るか、全体主義に与してしまえば社会がズタズタにされてしまう。

これはドイツの過去の経験から来ているんですね。

なので、教育についてもまさにその実践なんですね。

各自治体の小さなユニットによって議論をして、それは見解がバラバラでも全然かまわない。

しかし、議論に議論を重ねて、落ち着きどころがあった場合には、それを全体でシェアしていくという流れ。

それが保守なんです。

三島由紀夫が、1970年に産経新聞に書いてる通りだよ。

愛国教育を押し付けるとか、保守的な概念を押し付けるとかということによって、保守が保全できると考えている人間は、頓馬です。

 

溶ける民進党。細野元幹事長が離党を表明。

8月4日 「荒川強啓デイ・キャッチ!」

 

民進党の細野元幹事長は今日、自身のグループに所属する国会議員に対して、離党して新党を作りたいと述べ、民心党から離党する意向を表明しました。

細野氏の離党には民進党の議員数名が同調する見通しです。

細野氏は離党後、小池都知事が事実上率いる地域政党都民ファーストの会に近い無所属の国会議員と連携を模索すると見られています。

 

荒川強啓:細野議員、どんな人物なのか改めてまとめてみます。

 

細野氏は現在45歳、2000年の衆院選に静岡から出馬して初当選、これまで6回の当選を果たしています。

民主党政権時代の環境大臣や党の幹事長など要職を歴任してきました。

去年9月に行われた民進党の代表選では、自身の不出馬と蓮舫氏の支持を表明し、蓮舫氏が当選した後は代表代行に就任しました。

しかし今年4月、雑誌で自身が考える憲法改正案を公表したところ、党の方針と異なると批判が相次いだことから、代表代行を辞任していました。

 

それでは、TBSラジオ国会担当の武田記者に詳しく聞きます。

まず、今回の細野議員の離党、なぜこのタイミングだと見ますか。

 

武田:8月の終わりになると民進党の新しい代表を選ぶ選挙が始まります。

それまでに決めないと、そこで代表選挙に投票してから離党したのでは、格好悪いですし、筋が通らないということで、今のタイミングになったわけです。

細野さん自身は、4月に代表代行を辞任した時から、ふたつ選択肢を持っていたわけです。

ひとつは、6月に行われた静岡県知事選に出馬する。

もしくは、民進党から離党する。

いずれにしても、その先に細野さんとしては小池さんの都民ファーストの会と連携するということを青写真として描いていた。

そのために、この数か月間細野さんは何度も小池さんと会合を重ねてきたということです。

 

荒川強啓:そうすると、間違いなく新党を結成するという動きの第1歩なんですね。

 

武田:今日は、細野さんは離党すると言いましたから、自分の派閥でそのことを表明したので、後はこれから何人がついてくるのかということが焦点になります。

 

荒川強啓:この動きで9月1日に代表選を控えている民進党、影響はどのぐらいのもんでしょう。

 

武田:やはり大きいですよね。

細野さんは常々口癖が、自分は民主党で当選し、民主党で育ったということでしたね。

したがって民進党から出るというのは、かなりの決断になります。

それから、これまでも何人か離党はしてますけど、名前の売れ方では細野さんの方が格が上ですから、しかも元閣僚、元幹事長ということになりますので。

そういうことを考えるとかなり大きなインパクトになります。

常々申し上げておりますように、民進党はいずれ滅びる政党だと私は見ておりますので、そういう意味では、民進党の解体をより早めるという意味では、細野さんの離党は正しいものだったということなんでしょうね。

 

荒川強啓:宮台さんはどう見ていますか。

 

宮台真司:武田記者と全く同じ意見で、民進党が1日でも早く解散することを望みます。

細野議員は、勉強会で講師をしたこともあるし、彼がスキャンダル騒動に巻き込まれたときに、アドバイスしたこともあるので、お友達ですけど、ちょっと待ちの青年団的な田舎臭さがあって、そこが魅力だともいえるんだけど、ちょっと情報戦略という観点から言うと、ちょっと甘いかなと。

ちょっと小池さんに秋波を送り過ぎかなという感じですね。

 

 

「謙虚に、丁寧に、結果を出したい」改造内閣が本格的に始動

8月4日放送  「荒川強啓デイ・キャッチ!」

 

今朝、金曜定例の閣議が行われ、第3次安倍第3次改造内閣が本格的に動き出しました。

安倍総理は、昨日の記者会見で改憲日程について事実上の先送りを表明し、まずは低迷している支持率の回復を図りたいと思われます。

対する野党は、自衛隊の日報隠蔽問題で稲田元大臣の参考人招致を求めましたが、自民党は拒否しています。

 

荒川強啓:今朝初めての定例閣議が開かれまして、本格的に船出ということなんですが、それでは昨日の総理の会見の中身を確認しましょう。

 

昨日夕方行われた安倍総理の会見は、冒頭森友学園加計学園防衛省の日報問題などで不信を招いたことに対する反省と謝罪から始まりました。

内閣改造については、「結果本位の仕事人内閣」「最優先は経済の再生」としています。

 

安倍総理は、閣僚名簿の一人一人についてコメントをしながら紹介し、総務大臣に起用した野田聖子氏については、「当選同期であり自民党が下野した苦しい時を共に過ごした。耳の痛い話もしっかりと直言してくれる肩だ」と一緒に政治を前に進めたいと話しております。

そして先日、自ら秋の臨時国会改憲案を提出して2020年の施行を目指すと下憲法改正について、「スケジュールありきではない」とトーンダウンした発言にとどめています。

 

内閣を改造してリセットしたい思いもあるんでしょうが、野党はそうはいきません。

民進党の山井国対委員長は、自民党の森山国対委員長と会談しまして、日報問題で稲田元防衛大臣参考人招致を求めたんですが、自民党は改めてそれを拒否しています。

10日の閉会中審査は実施するんですけど、宮台さん、稲田さんの招致をめぐって平行線となっている。これはどう見ればいいんですか。

 

宮台真司防衛庁の幹部が大臣に無断で日報を隠したり捨てたりするということは基本的にあり得ません。

日報が出てきて、それを報告した時に、大臣が何も反応しないということもあり得ません。

なので、稲田さんを呼べば、また彼女に嘘をつかせることになる。

そうした場合に、もしまたそれが嘘だとバレるような証拠が出てきたら、ますます安倍一族はインチキ野郎だみたいな話になってしまうので、それを避けるには、出させないよりほかないんです。

そにための辞任なんだから。

辞任したんだから、もうしつこく追及するなよ、みたいな日本的感情に訴えかけるという姑息な手段だよね。

昨日の記者会見を見ると、相変わらず安倍さんは、いろんな振りをつけてはいるけど、スピーチしている時には基本的にプロンプター棒読みだし、質疑応答のところでプロンプター下がりましたけど、相変わらず手元の紙をめくって一生懸命自分の言葉で話しているような振りをしていましたけど、覚えきれなかったのか時々紙に目を落として。

おかしいでしょ、質疑応答じゃないでしょ。

事前に質問を出させて、官僚たちに作文させて、それに従って喋るというものだから。

こんなのは記者会見じゃないんです。

民主主義の政治であれば、記者会見を開けよってことです。

次に、新しい組閣について言うと、一部の人はものを考えていないから、安定感のある内閣とか言ってるでしょ。

これ結構大笑いだよね。

例えば、野田聖子さんを入れたり、太郎ちゃん、河野太郎さんを入れてますよね。

太郎ちゃんは、実は脱原発の急先鋒だし、日米地位協定の改正の理論的な枠組みを出してきた人だよね。

でも彼は、前の入閣の時には、自分のブログから脱原発のエントリーを全部削除すると言うことをやっちゃいました。

これっておかしいよね。

アメリカだったら、誰が国務長官になるのか、誰が国防長官になるのか、その人の過去のトラックレコード・発言記録・その人のパーソナリティ・価値観いろんなものを勘案して、この人がなったらこう変わると内外にアピールするし、周りもそれを弁えているんですね。

日本の場合なんですか。

日本は、もともと日本の政治は官僚の上にただ冠のように乗っかっているだけで、基本的な枠組みは全て行政官僚たちが敷いて、行政官僚にとって比較的どうでもいい部分について政治家にある種の自由を与えるみたいな、そう言う枠組みなんですね、実際は。

だから、多くの政治家が「あの時に発言したことは私人としてのものだ」とか。

アメリカやヨーロッパだったら、みんな鼻から血を出しちゃう、爆笑で。

あるいは、「あれは首相としての発言ではなくて、総裁としての発言だった」とか。

爆笑だよ。

その人間が、どういう人格なのかということと、どういう役割を果たすのかということを、結びつけて考えることが政治家であるという事の本質で、そこが行政官僚とは違うんだよ。

行政官僚は、パーソナリティを出しちゃダメなんだよ。

政治家は、パーソナリティが命なんです。

なのに、あれは私人としての発言でしたとか、靖国参拝じゃないんだから、政治と行政の近代的な枠組みを弁えろよ、そろそろ。

 

荒川強啓:今回の改造内閣、「仕事人内閣」と名前を付けたようですけど。

 

宮台真司:僕が承ったところでは、もともとは「仕事師内閣」というアイデアだったらしいですね。

すると、「仕事しない閣」に聞こえるので嫌だということで「仕事人内閣」になったという経緯を聞きました。

伝聞です。

本当かどうかは知りません。

しかし今までは、三本の矢とかなんとか内容があることを言っていたのに、今回は内容がゼロだったね。

仕事人内閣って内容ゼロじゃん。

そもそも仕事人じゃなきゃ困るんだよ。

 

 

 

 

 

防衛省信頼回復なるか

8月4日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:安倍総理大臣は、昨日行った内閣改造で、注目された防衛大臣に大臣経験者の小野寺氏を起用しました。

この人事の狙いは何か、政治担当の松田解説委員に聞きます。

今回防衛大臣に誰がなるのかということが注目されましたが、小野寺さんを起用した狙いはどこにあるんでしょうか。

 

松田:背景にあるのは、何と言っても例の日報問題です。

PKO部隊の日報を陸上自衛隊が破棄したと説明しながら、実際は保管していたという問題です。

特別防衛監察の結果、組織的な隠蔽の実態が白日の下に晒されて、稲田前大臣が辞任、加えて事務方いわゆる背広組トップの事務次官といわゆる制服組陸上自衛隊トップの幕僚長が退任に追い込まれました。

調査の過程では、背広組と制服組の証言が異なる場面もあったということで、今回の問題は背広組と制服組の意思疎通の不足、風通しの悪さを浮き彫りにしました。

こうした中で、新しい大臣に求められるのは、背広組と制服組双方の意見を調整し、まとめ上げる力、そして文民統制つまり政治家として自衛隊という巨大な実力組織を統率する能力だと思います。

これが、防衛省に深く根差した隠蔽体質を改善することにも繋がるからです。

そのためには、安全保障政策に精通し自衛隊からの信頼も厚い防衛大臣経験者でなくては務まらないというわけです。

 

キャスター:それで、小野寺さんに白羽の矢が立ったというわけですね。

 

松田:小野寺さんは、5年前に発足した第2次安倍内閣で2年近くにわたって防衛大臣を務め、海洋進出を強める中国やミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応に当たったほか、日米防衛協力の指針いわゆるガイドラインの見直しにも携わりました。

言うまでもなく、北朝鮮の脅威に対抗するためには、日米の緊密な協力が不可欠です。

近く日米の外務防衛の閣僚協議2プラス2の開催も調整されていますから、即戦力として期待されてるんでしょうね。

 

キャスター:そうしますと、小野寺さんの肩にかかるもの、プレッシャーはかなり大きそうですね。

 

松田:そうでしょうね。

本人は、昨夜の記者会見で、安倍総理大臣からは、厳しさを増す安全保障環境を踏まえた防衛大綱の見直しや、次の中期防衛力整備計画の検討、それに北朝鮮の脅威を抑止するため、アメリカと防衛体制と能力の向上に向けた、具体的な行動を進めることなどについて指示を受けたと述べています。

今回、この日報問題が図らずも浮き彫りにしたように、透明性の向上と組織内の意思疎通の改善は、防衛省自衛隊の積年の課題です。

傷ついた体制を立て直して、大きく揺らいだ国民の信頼を取り戻すことができるか、当面小野寺さんの手腕に注目したいと思います。

 

 

 

積水ハウスが63億円の詐欺被害。地面師の犯行か?

8月3日放送  「荒川強啓デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)

 

東京都内の土地取引をめぐり、大手住宅メーカー積水ハウスが63億円を支払ったにもかかわらず、土地を取得できていないことがわかりました。

積水ハウスによると、分譲マンションの建設用地として東京品川区の土地などを所有者を名乗る女性から購入する手続きを結びましたが、女性側から提供されたパスポートなどは偽造されたものだとわかったということです。

警察では、地面師による詐欺被害の可能性が高いと見て、捜査を開始しています。

 

荒川強啓:このニュース、サンキュータツオさんが調べてくれました。

タツオさん、地面師って何ですか。

 

山田五郎:バブルの頃よく聞いたよね。

 

サンキュータツオ:ご存知でしょうか。

結構歴史の古い詐欺みたいなんですが、そのことについて調べました。

他人の土地を自分の物のように偽って、第三者に売り渡す詐欺師のことですね。

単体ではなくて、組織で詐欺を働いているようなんです。

「ようなんです」というのは、どこからどこまでが加害者で、どこからが被害者かすらわからなくなってしまうという非常に巧妙な詐欺だからなんです。

どんな人が関わっているかというと、まず売れそうな土地をリサーチして探してくる人。

次に、書類を偽造する人。

さらに、売主になりすます人。

さらに、弁護士、司法書士になりすます人。

また、騙す客を探してくる人。

これらを分担して行うようなんです。

正しい取引でも、通常の土地の取引というのは、不動産業者が斡旋するので、慣例として土地を買う人と売る人は契約の場で初めて会うというのがほとんどなので、ここを逆手に取った詐欺とも言えるみたいなんです。

今回、積水ハウスが被害を受けたということなんですが、詳しく見てみると、

舞台となったのは五反田駅近くにある何年も営業していない旅館。

旅館が建つおよそ600坪の土地は高齢の女性が保有していました。

この土地は都心でまとまった土地であることから、ずっと様々な企業が狙っていたんですけど、この女性は一切売りませんときっぱり断って、今まで売ることはありませんでした。

ところが今年4月、地主から持ちかけられて、とある企業を経由して積水ハウスに売られることが決まったと。

ところが、6月になって登記が別の個人男性に移っていたんですよね。

積水ハウスに売られるはずだった土地が別名義になったと。

役所は、積水ハウスの契約に不備があると判断したんですが、積水ハウス側は購入代金70億円のうち9割に当たる63億円を既に支払ってしまった後で、所有者とは連絡が取れない状態になっていると。

ここで売却を持ちかけてきた所有者を名乗る女が偽者だったということがわかったと。

 

荒川強啓:その高齢の女性ではなくて。

 

サンキュータツオ:になりすました女の人がこの土地を売ると言いだしたんだというところからストーリーが始まってるんです。

なぜ騙されたかというと、その女性が偽造パスポート、そして偽造印鑑登録証などを駆使して、積水ハウスを騙していたと。

ただその高齢の女性が、それだけの物を偽造するかと言ったら、普通は疑いませんよね。

というところで、組織的な犯罪だということがわかるんですけど、もう所有者を名乗る女は過去にも同様の事件に関与したことがあるとの報道もあり、地面師グリープが関与したということらしいです。

これは積水ハウスだけではなくて、有名ホテルチェーンのアパホテルも被害を受けているんですね。

ここTBSのある赤坂にほど近い土地で土地の権利書はもちろん固定資産評価証明書、印鑑証明書、住基台帳カードまで偽装して、転売した先の所有者になりすまして、アパホテルに土地を12億円で売りつけた人もいる。

売買の場には弁護士や司法書士も同席、地主になりすました80代の男も登場し、売買が成立。

これはもうお芝居みたいなものなんです。

全員キャスティングされてる状態で「あとは契約してください」という状態になるので。

6日後に法務局が書類の偽造に気付いて事件が発覚、その時既になりすました男たちは行方知れず。

その後、今年になって首謀者とされる男 が逮捕されましたけど、アパホテルの被害額の12億円はほぼ帰ってきません。

積水ハウスにしても、アパホテルにしても、土地取引のプロです。

そのプロがなぜ騙されるのか。

というのは、プロでも見抜けないほど巧妙ということなんですね。

その土地の権利書や売主というのは、偽造グループが用意した多重債務者あるいはお金に困った人に数百万円で「なりすましてくれ」と。

もうキャスティング費用ですよね。

出演料みたいな感じで払って、あとはもう海外に行ってしまうとか。

なので、パスポートとか免許証も偽造できるので、相手を信用させるために自宅を用意して、植木屋さんや近所の人までサクラとして用意する。

現場で近所の人が「こんにちは」なんて声かけてたら、地主の人だと思うじゃないですか。

だから、裏の取りようがない。

変に疑ってかかったら、「そんなに疑り深い人とは取り引きしません」と言われたらおしまいなので、なかなか見抜けないです。

 

山田五郎:よくあるのは、間に仲間だかなんだかわからない不動産業者が入る。

それで、騙されてその人が買っちゃったということに、でも買った時点ではその書類はなんの不備もない。

それをさらに転売すると。

 

荒川強啓:それもグルなんでしょ。

 

山田五郎:いや、わかんないじゃないですか。

 

サンキュータツオ:不動産業者もグルの場合と、グルじゃない場合があるそうです。

 

山田五郎:不動産業者は、「私も騙されたんだ」って言えばいいんですよ。

 

 荒川強啓:そういう場合もあるの。

 

サンキュータツオ:弁護士も司法書士もみんな、「私も騙された」って言ってしまうと、じゃあ誰が騙したのかが一切わからない。

 

山田五郎:一番最初に騙したやつもとっくに消えてるんですよ、その頃には。

 

サンキュータツオ:グループがどこまでかわからないけど、とりあえず全員が騙しに加担している構造ではあるんです。

お金を払った後は、売主になりすました人は見つからない。

今言ったように、弁護士や司法書士や不動産業者も騙されたと言ったら、もうそのまま。

防ぎようがない。

 

荒川強啓:誰が儲かってるの?

 

サンキュータツオ:プロデュースした人ですね。

他にもいろんなケースがあるんです。

お金に困ってる土地の権利者が、自分の土地を売らずに詐欺に加担して小金を設けるパターンとか、権利者の親族がこのグループに加担するとか、こうなったら絶対に見抜けないというパターンばっかり。

もともと地面師というのは、70年ほど前に終戦後のドサクサに跋扈した詐欺師なんですね。

役場が戦災にあって機能していない時期に、勝手に土地に縄を張って土地の所有者になりすました。

そして関係書書類をでっち上げて、転売してぼろ儲けをする。

 

荒川強啓:それだけの騙しの歴史があるのに、未だに整備できてないの、法律は。

 

サンキュータツオ:違うんです。

背景が違うんです。

今は終戦後ではないんですけど、地主が高齢化して、孤立しているので、別の場所で一人で暮らしている。

あるいは亡くなった後、相続とかに時間がかかって、何年も土地が放置されている。

なので、都内にあるぼろ家や空き地みたいなところがありますよね。

ああいうところをわざわざ狙って詐欺を働くんです。

2020年の東京オリンピックを前に、東京は4年連続で地価が上がり続けている。

日本銀行によるゼロ金利政策でマンション投資ブームが続いた上に、今年1月マイナス金利政策もあって不動産ブームが来ている。

ということで、買いたいと思う人がすごく多いところに詐欺を働く組織が暗躍していると。

どうやったら、これを防げるのかと。

書類が偽装だと発覚していないまだ顕在化していない土地もあるので、司法書士連合会の理事によると、登記は日常的に見るものではないので、持ち主が被害を未然に防ぐのは難しいと。

防ぎようがないとプロが言ってるんですよね。

 

山田五郎:知らないうちに変えられちゃってるんだもん。

 

サンキュータツオ:もう見初められちゃったら、それで終わりっていうお手上げ状態の詐欺があるので、みなさん気をつけてということしか言えないんです。

 

荒川強啓:気をつけようがないじゃない。

 

サンキュータツオ:そうなんですよ。

これはそもそもあまり大きく報道されないですし、被害者も言ったところでお金が帰ってこないので言わないんですよ。

ということで、全然表に出てこないんですけど、大きな被害がたくさん生まれているというニュースなんです。

 

山田五郎:土地を持たないことですね。

 

 

内閣改造でポスト安倍と言われる人はどう扱われたのか 朝刊読みくらべ

8月4日放送 「森本毅郎・スタンバイ」

 

内閣改造で、今後のポスト安倍の人たちはどう扱われたのか。

今日の朝日新聞が書いてるんですが、

3社3様

ということで、

まず岸田さん、

ポスト安倍の有力候補3人の中で岸田さんは希望通り党3役に起用して、

親安倍路線に乗せた。

というんですね。

若手からは、完全に安倍列車に乗ったんだと、

岸田首相の実現には禅譲以外の選択肢が取りづらい。

こういうふうに不安が漏れるほどだと。

それから野田さん、

この人は、閣僚にはなりましたが、

次の総裁選には「必ず出る」と明言しています。

ただし、閣僚復帰で有力候補にはなったけど、

非安倍としての立ち位置は中途半端になった。

と書いています。

対照的なのが、石破さんです。

首相は、3日の会見で石破さんを起用しなかった理由を聞かれたが、答えもしなかった。

石田派の幹部は、「完全な石破つぶしだ」と反発しているというんですが、

毎日新聞には、別の見方が出ていまして、

石破さんは、総裁選まで首相と距離を置いて、政権批判の受け皿となる戦略を描いているということで、仮に首相から入閣を打診された場合、どう対処するか頭を悩ませていたというんですね。

もし断ると、自民党の危機の時に協力しないなんてひどいと言われがちだ。

だから、どうしよう。と考えてたんで、石破抜きの改造人事が決まって、

石破さんは「ホッとした」と言っているそうです。

むしろ朝日新聞に戻れば、ポスト安倍として存在感を高める可能性も逆に出てきてしまった。ほかの二人が中途半端になった分だけ石破さんの立ち位置がはっきりしてきたという見方もあって、3者3様。

どうみなさんは受け止めるでしょうか。