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退位特例法案 国民の総意と国会の責任

NHKマイあさラジオ「ニュースアップ」 5月19日放送

 

 

司会天皇陛下の退位をめぐって、政府は退位に向けた特例法案を国会に提出することにしていて、今後議論の舞台は国会に移ります。

 

今後の国会での議論のポイントはどう考えたらいいのでしょうか。

 

解説委員憲法は、天皇の地位は国民の総意に基づくと定めていますから、退位を可能にすることに対し、国会として国民の総意というものをいかにして築き上げていくかということです。

 

このため、法案をめぐっては、政府に検討を任せるのではなく、衆参両院の議長を中心に多くの政党の賛同を得る形で、事前に国会の考えをまとめ、政府がそれを踏まえて法案を提出するという異例の形で慎重に議論を積み重ねてきました。

 

通常、法案提出が国会における議論のスタートということになるんですけれども、今回はいわば仕上げの作業、最後まで多くの政党国民の支持が得られる形を維持できるかが問われています。

 

司会:今後の見通しはどうでしょうか。

 

解説委員:法案の基本的な部分はすでに多くの政党が賛成する考えを示していますから、法案は今の国会で成立する見通しです。

 

しかし、これまでは、あくまでも事前調整、それを文字通り国民の総意とするには公の場で審議し、国民の理解と納得を得る作業が欠かせません。

 

それには、十分な議論が求められますが、関係者の中には合意は各党の様々な思いを合わせたガラス細工だと、再びそもそも論から始めれば考えの違いが浮き彫りになり、合意が崩れてしまうと懸念する声もあります。

 

また、国会の付帯決議として、女性宮家の創設など安定した皇位継承に向けた検討の道筋をどう描くかについては、未だ各党の主張に隔たりがあり調整が続いています。

 

司会:まだ越えなければならない課題があるということですね。

 

解説委員:そうなんです。加えて各党とも今回の退位は例外措置であるとしつつも、一連の取り組みは将来の天皇の退位の際の前例となりうるという認識で一致しています。

 

その意味からも、今回の議論は歴史の検証に耐えうるものにしなければなりません。

 

今回、国会でどのような議論が交わされ、意見の取りまとめが行われたのか、将来に対しきちんとした記録を残すことも、今国会の大きな責任です。

 

司会:一方国会では、共謀罪の構成要件を改めてテロ等準備罪を新設する法案の取り扱いなどをめぐって、与野党の攻防が激しさを増していますね。

 

解説委員:そうですね。与党側は野党4党が提出した金田法務大臣に対する不信任決議案が否決されたことを受けてテロ等準備罪を新設する法案について今日衆議院法務委員会で採決に踏み切り、先に法案の修正で合意している日本維新の会の賛成を得て、可決させたいとしています。

 

これに対し民進党などは、法案には問題点が多く採決は認められない、などと強く反発しています。

 

また、民進党などは、国家戦略特区に指定された愛媛県今治市で計画されている学校法人加計学園が運営する大学の獣医学部の新設をめぐって政府の対応を追及するなど、今の国会の会期が残り1カ月を切ったなかで、与野党の対立は今後さらに強まることも予想されます。

 

ただ、天皇退位の問題については、こうした政治の動きとは一線を画し、静かな環境の下で議論する必要があるという点では、与野党とも同じ思いです。

 

もちろん、激しくやりあうべき時はやりあうものの、ことの性質によっては与野党ともに自制するなかきちんと役割を果たす、それも唯一の立法機関である国会に求められている大事な責任だろうと思います。