国会の閉幕を受け、安倍総理が記者会見 TBSラジオ「荻上チキsession-22」
パーソナリティ:荻上チキ
ゲスト:ジャーナリスト・神保哲生
国会の閉会を受け、安倍総理が記者会見
昨日(6月18日)通常国会が閉会したことを受け、安倍総理は今日(6月19日)夕方、記者会見を開き、今国会について、「建設的な議論とはかけ離れて批判の応酬に終始した」などとした上で、「加計学園問題などを巡って不信を招いたことは素直に認めなければいけない」と述べました。
また、「指摘があればその都度真摯に説明責任を果たしていく」として、国会の閉会中でも説明したいという考えを示しました。
一方、この週末にかけて行われた各社の世論調査で、内閣の支持率が10ポイント程度下落したことについて、すが官房長官は会見で、「支持率は低いより高い方がいいが、一喜一憂すべきでない」と述べました。
荻上チキ:国会が閉会しまして、それに合わせて記者会見が開かれると、記者会見では、国会が閉会しても説明したいという考えを示す一方で、説明したいんだったら、国会を延長すればよかったじゃないか、ということもあるわけですけど、そうはならないですね。
神保哲生:結局、国会だけが総理自身の言葉を聞ける場所になっちゃってるということなんですね。
なんで事前に質問の取りまとめがある予定調和だとまずいかと言うと、たとえばある人が聞きます。
それに十分に答えていない時がよくあるじゃないですか。
その時に、次の記者が、さらに今の質問についてもう一回聞きなおすことができるわけ、本来であれば。
でも、全くそれがなく、「はい、次の質問」て行くでしょ。
それは、あらかじめ質問が決まってるからでしょ。
だから一問一答形式になっちゃう。
国会はそうは行かないわけです。
「今のは答えになってない」と連続で聞いたりできるから。
そこが、記者会見がセレモニーに、安倍政権になってから完全にセレモニーになっちゃったっていうことの問題で、このことももうちょっと詳しく、どうやって説明するのか、その都度説明して行くと言ったけど、どういうふうに説明して行くんだ、ということも特に明らかになってないので、言葉だけなんですよね。
それは本当だったら、普通だったら、もうちょっと詳しく聞かないと、ちゃんと担保できないじゃない。
実際にそれが行われるということを。
でももう「はい、次」って行っちゃうわけです。
これは幹事社からの質問に対するものでしたけど、そこがやはり、物足りないというか、ちゃんと言質を取るためには、一回の質問で一回の答えでは、言質を取りたい側と与えたくない側の駆け引きだから、逃げておけば、次の質問に行ってくれるという前提だったら、普通逃げるよね。
わざわざこっちから言質を与えないよ。
荻上チキ:真摯にやりますと言った時、真摯とは具体的になんですかと。
神保哲生:実際に何をやるのか聞かないと。
場合によっては、それだけで、次の質問もそのまた次の質問もっていって、結局実は何もやらないということがわかるか、それとも本当に具体的に何をやると言わなきゃならなくなるかどっちかに持って行くところまで行かないと本来の取材じゃないですよ。
それが、事実上絶対に起きないとなってるのが、今の記者会見の問題で、国会のみが残念ながら、唯一、総理にギリギリとにじり寄ることができる場だったということなんですよね。
荻上チキ:そうした中で、今回の記者会見はどういった内容のものだったのか、紹介したいと思います。
まずは、会見の冒頭で安倍総理が何を語ったのかお聞きください。
安倍総理:
昨日通常国会が閉会しました。
4年前、政権奪還後の最初の通常国会において、私は、建設的な議論を行い、結果を出して行こう。
こう、各党各会派に呼びかけました。
その原点は今なお、変わることはありません。
しかし、この国会では、建設的議論という言葉からは大きくかけ離れた批判の応酬に終始してしまった。
政策とは関係のない議論ばかりに多くの審議時間が割かれてしまいました。
国民の皆様に、大変申し訳なく感じております。
印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう。
そうした私の姿勢が結果として、政策論争以外の話を盛り上げてしまった。
深く反省しております。
また、国家戦略特区をめぐる省庁間のやりとりについて、先週文部科学省が徹底的な追加調査を行なった結果、新しく見つかったものも含め、文書を公開しました。
これを受け、内閣府の調査も行い、関係する文書等を明らかにしました。
しかし、最初に調査した段階では、それらの存在を確認できなかった。
二転三転したかたちとなり、長い時間がかかることとなりました。
こうした対応が、国民の皆様の政府への不信を招いたことは、率直に認めなければなりません。
荻上チキ:というわけで、冒頭で今回の国会、加計学園の問題などに大きく時間が使われたことを謝罪をした、という、実際に謝罪をしたのではなくて、一言で僕なりに要約すると、「馬鹿な野党に付き合ってすいませんでした」って言ってるんですよね。
神保哲生:野党が悪いっていうことですね。
荻上チキ:野党が悪いんだけど、そんな野党に構ってしまってすみません、と。
この発言の後、イギリスのテロの話などをした上で、共謀罪の必要性を訴えて、天皇制の退位の問題を訴え、刑法改正を訴え、そして成長戦略の話をした後で、今回の加計学園の獣医学部新設の問題にも触れました。
その部分をお聞きください。
安倍総理:
獣医学部は、この50年以上新設が全く認められて来ませんでした。
しかしいま、鳥インフルエンザ、口蹄疫など動物から動物、さらには動物からヒトにうつるかも知れない伝染病が大きな問題となっています。
専門家の育成、公務員獣医師の確保は、喫緊の課題であります。
そうして時代のニーズに合わせる、規制改革は、行政を歪めるのではなく、歪んだ行政を正すものです。
岩盤規制改革を全体としてスピード感を持って進めることはまさに、総理大臣としての私の意思であります。
この特区制度について、この国会では、民進党のみなさんから制度自体を停止する法案が提出されました。
改革を後退させようとする発想であり、誠に残念でなりません。
岩盤規制の改革には、抵抗勢力が必ず存在します。
しかし私は、絶対に屈しません。
既得権と手を結ぶことも決してありません。
今後とも、総理大臣である私が先頭に立ち、ドリルの刃となって、あらゆる岩盤規制を打ち破っていく。
その決意であります。
荻上チキ:というわけで、今回の加計学園の問題は、具体的な改革が必要なために起こった反発だと。
つまり、野党というのは、既得権益と結びついている抵抗勢力で、その抵抗勢力が自分たちを批判しているんだ、という説明をしたわけですね。
この中で、獣医学部の新設が認められなかったけれども、公務員獣医師の確保などが課題としてある、としています。
けど、公務員獣医師の確保と新しい獣医資格を持った人が出てくるというのは、これは別の問題ではないかという質問が当然あっていいはずなんですけど、会見ではそういった質問や細かなやりとりができる場所ではないので、そのあたりは説明はされず、と。
神保哲生:僕がもし質問させてもらえれば、当然そくらいは聞きますけど。
要するに、ペット獣医の希望者は常に余っているくらい多いけど、家畜を検査する方の獣医が足りないと。
だから、獣医学部を作れば必ず応募は来るんだと。
ペットが大好きで獣医になりたいという人はたくさんいるから。
だけど、その人たちがペット獣医になるための需要がダブついていて、逆に家畜のって言ったら、ペットが好きで獣医になろうとするヒトにはキツイよね。
これから殺して食うわけだから。
それが病気になったりしたらマズイからっていうやつでしょ。
そうすると、そっちが足りないっていうことだけを言ってるんだけど、そこはじゃあペット獣医の方が余るじゃないかという、そっちの希望の方が圧倒的に多いんじゃないかということは、当然聞かなきゃいけないことだけど、なぜかそういう質問は出なかった。
荻上チキ:そうですね。
地方で安い給料でより大変な仕事を、ということになるんだけど、そう言った人を確保するには、むしろ財源の話じゃないかという話は出てくるんですが。
こう言った発言を安倍総理はした上で、これからも頑張っていきます、というような締め方で、冒頭の発言が終わります。
で、今回5社質問があって、冒頭の二つは幹事社の質問、毎日とTBSでした。
これは、各社の取りまとめで代表して聞くということだったんですけど、その一発目の質問が加計学園と共謀罪について合わせて聞くという質問でした。
安倍総理:
一般の方が、処罰の対象となることは、ぜっ、処罰の対象となることはない。
そしてまた、一般の方が、被疑者として捜査の対象となることはない。
ということは、改めてはっきりと国民の皆様に、申し上げておきたいと思います。
これらの法律を実施していくにあたってですね、国会での議論なども踏まえて、適正な運用に努めてまいります。
荻上チキ:ぜって言ってやめました。
一般の方が処罰の対象になることはぜっ、て言いかけて。
神保哲生:逆に心配になっちゃった。
絶対ないわけじゃないって話?
荻上チキ:わからないですけど。
一般の人が捜査の対象になることはない、と断言できる理由がわからなくなります。
冤罪や誤認逮捕って今でもたくさんあるわけですよね。
神保哲生:もちろん今だって本当は、一般の人が捜査の対象になっちゃいけないんだけど、今回の一般の人がっていうのは、組織的犯罪集団というものの定義がわからないから、何かあることをやった瞬間に一般の人まで、だった二人以上で集団なんでしょ。
だから僕と荻上さんで何か話してて、ちょっとあの映像使っちゃえば、と著作権違反を共謀しちゃってるわけです、その段階で。
その瞬間に一般人じゃなくなる可能性があるわけですよ。
打ち合わせかなんかしてて、その中に著作権法違反の素材が計画に入っていれば。
それはなんだって言えちゃうから、そこで一般ていう時の一般ってどういう意味ですか?と。
一方で、組織的犯罪集団とはどういう意味ですか?と。
法律で指定された集団というのがあるんだったら、それは恣意的には運用できない。
でも、どうにでも恣意的にできるようになっているところが、問題だって言われているのに、それについては何も答えていないわけです。
荻上チキ:今回の安倍総理の発言のポイントは、「これらの法律を実施していくにあたって、国会での議論なども踏まえて適正な運用に努めてまいります」とあります。
国会の議論を踏まえるなら、法律に書かなくてはならないんですが、法律には書かないけど運用面で警察の人たちにやってもらいます、というふうに総理が発言しているということになるわけですね。
だから、いま懸念があるというのはしょうがない、というかそれはそうなので、運用の方で適正にやります、というふうに発言しているのがひとつの肝ですね。
神保哲生:だから、逆に言うと、文言では懸念があるということを認めたということにもなるわけだね。
運用でちゃんとやるとあえて言うということは。
荻上チキ:そして、もうひとつ。
当然、加計学園に関する質問も冒頭で幹事社から出ているわけですが、その答えもお聞きください。
安倍総理:
国家戦略特区における、獣医学部の新設につきましては、文書の問題をめぐってですね、対応は二転三転し、国民の皆様の政府に対する不信を招いたことについては、率直に反省しなければならないと考えています。
今後、何か指摘があれば、政府としてはその都度、真摯に説明責任を果たしてまいります。
国会の開会閉会にかかわらず、政府としては今後ともわかりやすく説明していく、その努力を積み重ねていく考えであります。
今国会の論戦の反省の上に立って、国民の皆様の信頼を得ることができるように、冷静に、そしてわかりやすく、ひとつひとつ丁寧に、説明していきたいと思います。
荻上チキ:というわけで、幹事社の質問で共謀罪それから加計学園問題についての質問が重なったわけですけど、その質問が終わった後は、各社が、たとえば日経がTPPの問題を聞いたりとか、あるいはほかの新聞各社が、他の論点をひとつひとつ聞いていくという流れになっていたんですけど、加計学園や共謀罪の話は、一番最初のひとつの質問だけで終わりということになりました。
安倍総理が何を語ったかというと、「これから指摘があれば真摯に説明をしていく」「開会閉会にかかわらず政府として対応していく」ということになります。
この説明には、どう感じました。
神保哲生:繰り返しになるけど、その都度真摯に説明していくと言うけど、今の会見でも本当は、もっとちゃんと釈明する方法があったはずなんです。
でも結局、岩盤規制にとにかく穴を開けるんだと、それがいろいろ問題になるのは、抵抗勢力の見方をしてる人がいるからなんだとしか言ってなくてね。
そもそも、腹心の友と総理自身が呼んだ友人の、非常に親しい友人の方が実際にトップを務めている学校のみが優先的に認可を受けたのではないか、という疑惑の部分について、何も言ってないじゃないですか。
国会ではいろいろ追及されたから、一言二言言ってるかもしれないけど。
それに対して、結局じゃあ調査が必要だろうと、紙を認めたって言っているわけだから。
最終的には、文科省が一応紙自体は認めたわけです。
存在自体はね、全部じゃないけど。14個認めたわけだよね。
その中身で、あの内容の事がメモになってたと。
だけど、それに対しては、内閣府側はそんなことは言った覚えがないみたいな事が報告であったっていうので終わってるじゃないですか。
本来だったら、アメリカではFBIとかなんとかやってるけど、常識で考えれば、そんなただ自分達だけで自分達のこと調べて、何もありませんでしたって言って、ってゆうのが有効な調査かどうかという事は子供でもわかる事でしょ。
最低限、ちゃんと宣誓下で嘘をついたら罰せられるような状況の中で、内閣府のそれを言ったとされる藤原審議官を呼んで、本当にこう言っていないのかと。
そこで嘘をつくなら、それはそれでしょうがないですよ。
総理のご意向だっていうことを言ったっていうのであれば。
それか、文科省の方が嘘をついているのかということになっちゃうでしょ。
そんなこと言われてもいないのに、あのメモをみんなで共有したってことになっちゃうでしょ。
だとしたら、それこそ本当に大変なでっち上げですよ。そんなことだったら。
我々の国は、そんなことの白黒もつけられませんか?
そこでもし、そういうような、総理の意向というような事があったんであれば、仮にそれは、総理自身が、仮にですよ、審議官に「頼むよ、加計の事、よろしく」って言ってなかったとしても、総理はそういう事が行われていることを、一切知らなかったのかと。
全く総理の伺い知らぬところで誰かが勝手にやって、もしそれを知ったんだとすれば、総理は「それは私の本意とするところではない」としなければ、逆に総理はそれを黙認したことになっちゃうよね。
一切知らなかったのかどうかとか、それは最低限調べるべきことで、岩盤がどうのこうのっていうのは、また別の問題。
おそらく抵抗勢力はあるんですよ。
抵抗勢力が、そういうものに抵抗しているという事はあるんですよ。
でも、もっと深い次元で政府の信用・信頼に関わる問題でね、抵抗勢力云々なんていう問題ではないという事は、普通はわかってるはずじゃない?
それを、せっかくの会見という自分の立場を明らかにできる数少ない機会で、野党が相手だとやられたってなるから認めにくいのかもしれないけど、会見という場で、自分の口で説明するチャンスだったのに、それをしないでいて、「その都度説明します 」と。
今しろよ。
いつやるんですか。
どこでやるんですか。
そんな質問出るんですか?
こんなヤラセ会見で。
だから、全くそれは信頼できないし、その場だけの言葉だけのことだというふうに思わざるを得ないです。
もちろん、これから是非見せてもらいましょう。
その都度答えるということをね。
とりあえず、今日からやってみたらどうですか?と思いますね。
荻上チキ:加計学園の問題に関しては、前川前事務次官は、今治市の新設の問題は加計学園の案件だと認識していたと発言してますし、またこれを既得権益の打破・岩盤規制の打破だと安倍総理は言ってますけど、これは僕の印象だと、そうではないわけですよ。
本当に岩盤規制を突破するんなら、規制そのものを無くすべきなんですけど、一枠だけ設けてそこに入れてあげるという事は、既得権益と呼んでいる側に、1校だけ混ぜてあげて、っていうものになるわけですよね。
それが特に、総理の友人が運営する大学だとなると、それは規制緩和じゃないし。
既得権益と呼んでる人に入れてあげてるだけだし、という事だから、それはちょっと違うんじゃないかっていう疑問には答えられてないですよね。