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北朝鮮によるグアム周辺へのミサイル発射計画。日本の態勢は? 朝刊読みくらべ

8月11日放送  「森本毅郎・スタンバイ」

 

産経新聞の一面ですが、

北朝鮮がアメリカ領グアム周辺へ中距離弾道ミサイルを発射する計画について、

グアムの沖30から40キロの海上に打ち込む計画案を検討しているということを受けて、

小野寺防衛大臣は、北朝鮮がグアムを狙って発射した弾道ミサイルを自衛隊イージス艦が迎撃することについて、武力行使の新三要件に合致すれば対応できると述べた。

こういう記事を出しています。

この三要件とは何かというと、国民を守るために他に手段がなかったり、必要最小限の実力行使に止めるということで日本と密接な関係にある他国への武力行使が発生して日本の存立が脅かされる場合、こういった条件をつけているわけですね。

今回の場合はアメリカがこれに該当するわけですけど、ただし読売新聞はそれには色々課題もあると言ってるんです。

まず一つは、攻撃糸が明らかでない場合、北朝鮮が今回グアム周辺30から40キロの海上と言ってると、これはアメリカの領海外にあたる。

そうすると、アメリカへの攻撃だとは言い切れなくなってしまう。

それから、この弾道ミサイルが日本に落下する不測の事態も想定されるんだけど、その時には二段システムで・SM3で迎撃して、それで失敗してもPAC3で撃ち落とすというんだけど、このPAC3が大半が首都圏や九州などの人口密集地や自衛隊の重要拠点に配備されているだけで、日本全土で見るとまだ未配備の空白地帯が多い。

だから大丈夫かという話も出てきて、なんとか整備するとは言っているけど、まだまだ不備な点も多いと指摘しています。

 

 

エネルギー計画改定へ 焦点の原子力は

8月10日放送  「先読み!夕方ニュース」

 

キャスター:政府がエネルギー基本計画の改定作業を始めました。

これは国の中長期的なエネルギー戦略の方針を示すものですから、エネルギー全般の議論が行われることになるんですが、大きな焦点となるのが原発の扱いなんです。

前回の計画で依存度を可能な限り制限するとされたものの、具体的にどこまで減らすのかあいまいな点が多く残されている上に、この間再稼働は政府の思惑通りには進まず、もんじゅ廃炉となるなど状況が大きく変化しているからです。

にもかかわらず事務局の経済産業省はすでに前回と骨格は変えないと説明しています。

これで民主的な改定作業となるんでしょうか。

水野解説委員に聞きます。

昨日から始まった改定に向けた作業部会なんですが、どんな意見が出たんですか。

 

水野:この間基本計画の改定ですけど法律を3年ごとに見直すということが決まっているもので、それで経産省がエネルギーや環境分野の専門家を集めた検討会で昨日から議論を始めたんですが、昨日専門家から多く出たのはやはり原子力に関することで、今後も原発に頼るのであれば原発の建て替えについてもそろそろ議論を始めなければならないと言った意見ですとか、それから再稼働への反対は根強いので、再生可能エネルギーをもっと重視すべきだなど多くの意見が出ました。

ただ、昨日の冒頭もそうでしたけど、世耕経済産業大臣が会議が始まる前から計画の骨格を変える段階ではないと強調している点が非常に気になるんですね。

前回から3年しか経っていないと理由を説明しているんですが、前回の計画では原子力にあいまいな点が多く残されていますし、この3年間でもんじゅ廃炉になるとか大きく状況が変化していますので、結論ありきではなくて適度な議論をしていかなければならないと思います。

 

キャスター:確認しておきたいんですが、前回の計画では原発はどういう風に位置付けられていました。

 

水野:原発依存度については可能な限り低減するという風になりました。

と言いながらも原発は昼夜を問わず電気を供給する重要なベースロード電源とも位置付けられました。

これは福島の事故で火力発電の依存度が高まって発電コストが上がったと、それから火力発電でCO2の排出量も増えたことからやはり原発はある程度頼らざるを得ないというのがその理由で、2030年の電源構成がその後決まったんですが、原発は2030年に20%から22%を目指すことになりまして、再稼働を加速させるという方針が明確に打ち出されました。

しかし依存度を低減させるとはいうものの、具体的にどこまで減らすのか、どれくらい原発を維持していくのか、明確な方針があいまいなままに3年間使われてきたんですね。

その結果再稼働の判断は、電力会社に任されることになったわけです。

 

キャスター:原発の現状はどうなってるんでしょう。

 

水野:福島の事故後、福島第1原発に加えまして老朽化で採算が合わなくなった6機が廃炉となりましたけど、全国42機の原発のうちこれまでに建設中の大間原発も含めて26機か再稼働申請しています。

5機は合格してるんですが、残る原発も多くは再稼働を目指していまして、将来的に一体何機ぐらい再稼働になるのか、これがなかなか見えてこないですね。

 

キャスター:そういう話を聞いていますと、可能な限り低減させて行くという政府の方針、本当にそのつもりがあるんですか。

 

水野:それがなかなか疑わしいところでして、ひとつは原発の40年運転ルールというのがありまして、事故後に依存度の低減を目指して原発の運転期間を原則40年とするというルールが導入されたんですが、当初は延長も1回に限りできるんですが、延長は相当困難で例外だと説明されてきたんですね。

ただ先ほど言いました2030年に20から22%の原発比率を確保するには、30機以上の原発の再稼働が必要になるんですけど、政府は今のところ原発の増設や建て替えは想定していないとしていますので、そうなりますとこの40年を超える老朽原発を10機以上運転させなければ実現できない目標なんですね。

実際その後、関西電力の高浜原発、それから美浜原発と、電力会社が申請した老朽原発は優先的に審査が行われまして、全て運転延長が認められています。

今後この老朽原発の延長申請ラッシュも予想されますので、この40年ルールは形骸化しているという指摘もあって、依存度低減には繋がらないのではないかと。

であれば、今後どういった方法で何機まで減らすのか、これがやはり今回の改定作業で具体案を示してもらわなければいけないと思います。

それともう一点、そもそも2030年の原発比率20%余りと、この目標自体本当に達成できる数字なのかどうかという声も上がっています。

再稼働は今の所政府の思惑通りに進んでいませんで5機にとどまっているんですね。

今年さらに4機の再稼働が見込まれていますけど、その先となると、敷地内の活断層の審査が長期化しているものもありますし、東京電力が再起動を目指している新潟県柏崎刈羽原発をめぐっては、新潟県東電の不信から当面再稼働の判断をしないという考えを示していますので、地元の理解が得られる見通しが立っていない原発も多くあって、30機以上の原発の再稼働はそもそも困難だという専門家もいるんですね。

 

キャスター:となると原発比率が達成できなかった場合、そのぶんの電力供給はどうなるんでしょうか。

 

水野:なかなか現状で再生可能エネルギーに全て頼るのは難しいですので、やはりすでにある火力発電で補って行くということが想定されるんですね。

そうなりますとCO2の排出量が増えると。

日本はパリ協定で2030年に26%削減と約束していますので、これが達成できなくなると。

再生可能エネルギーも難しいと。

それではどうするのかと、そういったあたりを議論しなくてはいけないですね。

それと世論なんですが、国民の多くは再稼働に慎重なんですね。

NHKの世論調査でも、原発の再稼働に賛成が13%なのに対して反対が48%と、賛成を大きく上回っています。

ですので実際に実現可能な目標なのかに加えてこういった民意も考慮して原発の比率を再検証しなければならないですね。

最後にもう一点、前回から大きく状況が変わっているのが核燃料サイクルなんですね。

前回の計画では使用済み燃料を全て再処理してプルトニウムを取り出して、高速増殖炉で繰り返し使うと、この核燃料サイクルを推進すると計画ではなっていました。

しかしその要の位置につけられていたもんじゅがなくなるわけなので、当然今回核燃料サイクル全体の見直しが必要になってくるかと思いきや、政府は見直すどころか核燃料サイクルは堅持してもんじゅの先のより大型の実証炉を目指す方針を決めて、今工程表づくりを始めています。

 

キャスター:もんじゅが失敗したのにどうして見直せないんですか。

 

水野:なかなかですね、核燃料サイクルの旗は下ろせない事情があるんですね。

背景にありますのは、一般の原発の再稼働なんです。

原発のプールには、使用済み燃料プールに余裕がないところもありまして、再稼働すれば出てくる使用済み燃料、これを青森県の再処理工場に運びたいんですが、青森県としてもそれを置きっぱなしにされては困るため、きちんと再処理して核燃料サイクルを続けるということを受け入れの条件にしてるんですね。

もしも核燃料サイクルを見直したりやめるというのであれば、使用済み燃料は元の原発に返すと青森県は表明しています。

そうするとプールが満杯になって原発は再稼働できないというわけで、政府としては高速炉開発を掲げ続けてサイクルを続ける意志だけは示しておかなければならないという事情があるんです。

 

キャスター:しかしそれではもんじゅの失敗を繰り返すことになりかねないじゃありませんか。

 

水野:その懸念はありますね。

ですけど、こうした方針が決まったのには決め方にも問題があったからだと私は思います。

この高速炉開発方針は、政府と電力業界それからメーカーなど、もんじゅを推進してきた限られたメンバーによって非公開の場で決められました。

やはり今回、専門家を交えた公開の場できちんと改めて議論する、そして原発の使用済み燃料を全て再処理して利用する今の核燃料サイクル政策を見直し、それから使用埋み燃料を放射性廃棄物として直接処分できるようにすることなど、新たな策を検討していかなければならないですね。

安倍総理は、先日の内閣改造にあたっての会見の冒頭で、今後は国民の声に耳を澄まして対応して行くと述べました。

であれば、このエネルギー基本計画についても、最初から骨格を変えないというように決めてかかるのではなく、この間の課題を全て国民に提示して、国民の声も聞きながら丁寧に議論を進めていってもらいたいと思います。

 

 

 

 

中国一帯一路とアフリカとの関係

8月9日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:東アフリカのケニアで、中国が融資した長距離鉄道がこのほど開通しました。

巨大経済圏構想一帯一路を提唱する中国によるアフリカでの要の事業の一つとして注目されています。

ヨハネスブルク支局の三田村記者に聞きます。

中国はアフリカへの経済進出を大変重要視していますよね。

 

三田村:その通りです。

中国が提唱する巨大経済圏構想一帯一路は、中国とヨーロッパを結ぶ巨大な経済圏を作るというものなんですけど、実はこの構想はアフリカも視野に入れてるんですね。

その中国が巨大経済圏構想一帯一路をアフリカで推進する要の事業の一つとして位置付けているのが、ケニアで今年5月に開通した長距離鉄道なんです。

この鉄道なんですけど、首都ナイロビとインド洋に面した港湾都市モンバサとの間の480キロの区間を結んでるんですね。

総工費が日本円で3600億円にも上ります。

1963年にケニアがイギリスから独立して以降、最大の建設プロジェクトになりました。

その建設費用の大半を中国が融資し、線路の建設や車両の製造も中国企業が担当したんです。

私も現地で取材したんですけど、この区間はこれまでバスで10時間以上かかっていたんです。

それが一気に移動時間が半分以下に短縮され、車内は連日大勢の乗客で賑わっています。

各車両には中国とケニアの国旗が描かれていて、中国が建設した鉄道だということを強く印象付けるものとなっています。

この鉄道は今後、ウガンダルワンダなど東アフリカを貫く鉄道網に拡大される計画で、中国がアフリカの大動脈の構築に深く関わっているんですね。

 

キャスター:中国はアフリカへの経済進出を強めているとよく報道されていますけど、実際にアフリカで取材をしていて、中国の存在感はどう感じますか。

 

三田村:アフリカで取材をしていますと、中国が圧倒的な規模でアフリカ各国に経済進出していることを強く実感します。

中国とアフリカとの貿易額は急拡大していて、直近では1880億ドル(21兆円)にも達するという指摘もあるんです。

アフリカに進出した中国の企業も1万社を超えるとされていて、多くの中国企業がアフリカでのビジネスを目指してるんです。

今回の列車の開通に合わせて、ケニアの首都ナイロビでは一帯一路を看板に掲げた大規模な中国製品の展示会も開催されました。

400社以上の中国企業が参加していて、衣服から家電製品、インテリアなど多数展示して、ケニアで拡大する中間所得層をターゲットに、中国企業が商品を売り込んでいました。

 

キャスター:中国のアフリカへの進出というのは今後経済だけにとどまらないという見方もあるようですね。

 

三田村:その通りです。

経済進出とともに注目されるのは、中国がアフリカの安全保障の分野でも関与を強めていることなんです。

中国は最近では、アフリカでの国連のPKO活動(平和維持活動)にも、積極的に参加しています。

日本の陸上自衛隊の施設部隊がPKO活動から撤収した南スーダンでも、中国のPKO部隊が展開してるんです。

また中国軍は、アフリカ東部ジブチで初めての海外拠点となる基地の運用を先月から開始しました。

中国のアフリカでの存在感は益々高まっているというのが現状です。

 

韓国の平昌五輪まであと半年、現地の準備状況は

8月9日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:韓国では来年2月9日に冬のオリンピック、平昌オリンピックが開幕します。

今日8月9日で開幕までちょうど半年となりました。

競技会場の準備状況や韓国内のオリンピックへの期待について、ソウル支局の池畑記者に聞きます。

平昌オリンピックまで半年ですけど、競技会場などの整備は順調に進んでいるんでしょうか。

 

池畑:概ね順調だと思います。

今月1日、平昌オリンピックパラリンピック組織委員会が日本メディアに会場の一部を公開しまして、私も取材に参加しました。

案内されたのは、開会式と閉会式が行われるスタジアム、韓国の空の玄関口仁川国際空港と競技会場がある平昌やカンヌを結ぶ高速鉄道KTXの新しい駅、それに選手村でした。

いずれも工事の進捗率は90%ほどという説明でした。

特にKTXの新しい駅は実は韓国メディアよりも先に私たちに公開されました。

日本に向けて準備が順調に進んでいることを伝えたいという意気込みを感じました。

一方課題は、宿泊施設でして、平昌の近くはホテルが少ない上、大会期間中の価格設定が高すぎるという指摘も出ています。

このため組織委員会では、外国からの案客の多くはソウルのホテルに泊まってもらえるようにするのが現実的だと判断しまして、競技の時間に合わせてKTXの臨時ダイヤを組むことにしています。

平昌とソウルはKTXですと2時間ほどですので、ダイヤが上手く組まれれば、ソウルを拠点にするのは難しくないと思いました。

 

キャスター:新しい駅を韓国のメディアよりも先に日本のメディアに公開するという話がありましたけど、組織委員会は日本向けの広報に力を入れているようですね。

 

池畑:こうした施設の紹介だけでなく、大会の広報大使には女子プロゴルフの日本ツアーで2年連続賞金女王になっているイ・ボミ選手や、日本でもファンが多いKポップの男性グループビッグバンのメインボーカル・ソルさんも選ばれています。

こうした日本への期待感は隣国であるからということだけでなく、今年初めに現地で開かれたプレ大会で、日本からフィギュアスケートやスキーのジャンプなどのファンが大勢訪れたことから、日本のウインタースポーツファンを取り込みたいという機運が高まっています。

 

キャスター:地元韓国での大会へ向けた盛り上がりはどうなんでしょうか。

 

池畑:それがまだ今ひとつなんですね。

韓国政府が先月31日に発表した世論調査を見ますと、大会に関心があると答えた人は35.1%に過ぎず、しかも今年5月の同じ調査より5.2ポイント低いという結果だったんですね。

これは去年秋からの国内政治の混乱のせいで、国民はオリンピックどころではなくなったという分析がもっぱらです。

やや心配な数字ではありますが、注目は大会100日前にあたる今年11月1日以降です。

というのも、11月1日に聖火リレー仁川国際空港を出発して、韓国の各地を回り始めます。

広報大使だったビッグバンのソルさんもその日に大会を応援する新曲を発表する予定です。

そうした動きが始まれば、韓国国民の関心も急速に高まるのではないかと組織委員会では期待しています。

 

ASEAN50周年、東ティモール加盟の課題は

8月9日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:ASEAN東南アジア諸国連合)が創設から50年の節目を迎えました。

今、東ティモールの加盟がいつ認められるのかという点に注目が集まっています。

東南アジア担当の高橋解説委員に聞きます。

高橋さん、東ティモールというのは、比較的最近独立した国でしたよね。

 

高橋:そうですね、俗に21世紀最初の独立国とも言われます。

というのは、ポルトガルによる植民地支配とインドネシアによる占領の後、今から15年前2002年に独立を果たしました。

人口およそ120万人で、面積も東京・千葉・埼玉・神奈川と4つの都県を合わせたのと大体同じくらいの小さな国なんです。

独立後の国づくりを支援するために、かつて日本から陸上自衛隊のPKO部隊が派遣されたこともありましたからご記憶の方も多いかもしれません。

当時は治安が一向に安定しなかったり、石油・天然ガスの開発以外にめぼしい産業がなかったりして、随分先行きを心配されましたけど、近年は治安も格段に安定し、先月から議会の選挙が行われたんですけど、これも国連の手は借りず全て自前で滞りなく行われました。

その東ティモールが6年前からASEANに加盟を正式に申請しています。

この加盟を認めるかどうかをいまASEAN10カ国が検討しているんです。

 

キャスター:加盟の申請は認められそうなんでしょうか。

 

高橋:まさにそこがいま焦点となっているんです。

日がちティモールはASEANが創設50年の節目を迎えた今年中にも加盟を果たしたいという意欲を見せています。

しかし昨日閉幕したASEANの外相レベルの一連の会議では現在の加盟国から反対意見こそ出なかったものの、逆に年内加盟を積極的に後押ししようという意見もまた出なかったんです。

 

キャスター:なぜでしょうか。

 

高橋:問題の一つはASEANが抱えている域内格差という問題です。

域内の先進国シンガポールと、後発国と呼ばれるミャンマーカンボジアとの間には、一人当たりの名目GDPで40倍もの開きがあります。

いま東ティモールの加盟が認められれば、この後発国にあたりますので限られた援助の奪い合いになりかねないあるいはASEANが一昨年から進めている経済共同体づくりにも支障が出かねないというのです。

 

キャスター:となりますと、加盟が認められるまでには、まだ時間がかかりそうですね。

 

高橋:問題は加盟が認められるかどうかというよりも、それがいつ認められるかです。

というのも、ASEANには全会一致を前提とする独特の意思決定法があるからです。

もともとASEANは、政治体制も経済規模も民族も宗教も異なる国々が一つにまとまることで中国やアメリカなど大国のいいなりにはならない独自の存在感を高めてきました。

ところが、50年前5カ国体制でスタートしたASEANは今や10カ国、加盟国が増えて多様化が進めば進むほど、コンセンサス作りに時間がかかり、互いの利害や温度差が逆に大国による干渉を招きかねないジレンマを抱えているんです。

ASEANは今年11月に、フィリピンの首都マニラの北西にあるパンパンガ州というところで、今度は首脳レベルの会合を開きます。

果たしてそれまでに東ティモールASEAN加盟について結論は出るのかどうか、東ティモールの加盟の是非をめぐる議論は、いまのASEANが直面している課題そのものを浮き彫りにしています。

 

 

北朝鮮リスク市場警戒 朝刊読みくらべ

8月10日放送 「森本毅郎・スタンバイ」

 

日本経済新聞の一面ですが、

北朝鮮リスク市場警戒という記事です。

世界の金融市場が、アメリカとの軍事衝突を警戒する北朝鮮リスクに神経質になっているという記事です。

安全資産とされる円が買われて、円相場は2か月ぶりの水準に上昇、

日経平均は一時335円も安くなってしまいました。

北朝鮮の行動については、市場はこれまであまり反応しなかったんですね。

ところが今回は攻撃対象がグアムという具体的な名前が出てきたほか、

政策運営の行き詰まりが目立つトランプ氏が、得点稼ぎで北朝鮮に厳しく出るという見方が浮上して、実際にアメリカでは北朝鮮の軍事行動を支援する世論調査も出てきた。

こういう雰囲気の変化で、市場が危険レベルを一段階上げたように感じられるという分析も出てきています。

ところが、産経新聞の一面

リスク高まる

なんですが、米朝衝突のリスクはトランプリスクだという記事。

なかなか面白いですね。

北朝鮮はこれ以上アメリカにいかなる脅しもかけるべきではない、さもなければ北朝鮮は炎と怒りに見舞われる、とトランプさんが言った。

これは金正恩体制顔負けの言葉で、軍事行動に踏み切る意思を明言したんだ。

他国から軍事攻撃を仕掛けられたというわけでもなくて、脅しをかけられただけなのに報復を言及するというのは極めて異例だ。

こういうふうに言って、トランプさんの行動を疑問視する声は党派を超えて広がっている。

つまりトランプさんの不用意な発言で動揺が広がって、誤解と誤算による米朝の衝突が現実的なリスクになってるんだ。

トランプ悪いという記事。

なかなか面白いと思います。

 

 

 

戦争と国際法 木村草太

8月9日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:戦争と国際法、お話は首都大学東京大学院教授で憲法学者の木村草太さんです。

今日8月9日は長崎原爆の日です。

あれから72年が経ったんですね。

 

木村:その年月の中で、原爆の日の記憶が薄れていくことに強い危機感を抱いております。

2015年の8月3日に公表されたNHKの世論調査では、長崎の原爆の日が何月何日であるか、正しく覚えていた人が3割に満たないというかなり衝撃的な結果が出ておりました。

やはり原爆の日の記憶というのは継承していかなくてはいけないわけですし、また原爆の投下は二つの世界大戦における極めて悲惨な出来事です。

その原爆の記憶と共に二つの世界大戦を経て成立した国際法の原則についても考えて欲しいと思いました。

国際法の原則は憲法9条などの日本の憲法原則とも大きく関わっているものです。

 

キャスター:今おっしゃった国際法と戦争との関係ですけど、歴史的にはどんな経過をたどってきたんでしょうか。

 

木村:まず19世紀以前の国際法においては、戦争や武力行使はそれ自体は違法とはされておりませんで、それらを国際法違反ではないと考えられていました。

これを無差別戦争観、正しい戦争も間違った戦争もないという無差別という意味ですが戦争観と言います。

19世紀の国際法では、法の力で戦争や武力行使それ自体が完全に防げるわけではなかったので、せめて先制攻撃を禁止して、必ず宣戦布告をしてから戦争を始めようとか、民間人は虐殺しない、捕虜は虐待しないといった、戦争をやるのであればせめてそのルールを守ってくれという発想であったわけです。

しかし20世紀に入ってからは、やはり戦争や武力行使それ自体を禁止しないと平和は実現できない、また兵士の武力行使を禁止しておきながら、宣戦布告をすればいくらでも武力行使をしても良いというのでは、窃盗を処罰しながら強盗を放任するようなものだという批判も出てきて、戦争それ自体を禁止するべきだという考え方が生まれてきたわけです。

20世紀は実は二つの世界大戦の時代であると同時に不戦条約の時代でもありまして、国際連盟規約あるいは1928年のパリ不戦条約などが成立し、次第に戦争・武力行使は違法であるという考え方が一般的になってきました。

そして、1945年の6月26日には二つの世界大戦の反省を踏まえて国際連合憲章というものが出来上がってきて、この国連憲章2条4項では「全ての加盟国はその国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または正義的独立に対するものも、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と規定されています。

 

キャスター:ちょっと正直難しい文章なんですけど、どういう意味でしょう。

 

木村:この条文は色々修飾が使われてるんですけど、要するにある主権国家が他の主権国家に対して武力による威嚇・武力行使・戦争をしてはいけない、武力による威嚇・武力行使・戦争は一切合切違法である、国際法違反であると宣言した内容になっております。

これでありとあらゆる武力行使・戦争が違法とされまして、現在ではこの原則は、武力不行使原則と呼ばれています。

国際法の内容は19世紀的な無差別戦争観から20世紀半ば以降武力不行使原則へと大きく転換をしたわけです。

そして当たり前のことですけど、国連加盟国は全てこの原則を国連憲章に書いてあるわけですから国際法の基本原則として承認しています。

日本の憲法9条も原則として戦争・武力行使を禁じる内容になっていますが、これは日本特有のものというよりもむしろ、現在の国際社会・国際法の基本的な考え方と言っていいと思います。

 

キャスター:ただ、いくら武力を禁じる原則があったとしても、それを破って侵略を行う国が出てくることも現実には起きてきますよね。

 

木村:もちろん国連憲章はどんな場合も武力を行使してはいけないと言っているわけではなくて、侵略国家が現れた場合はの対応を決めています。

国連憲章では集団安全保障という考え方を採用しましたが、これは侵略国が現れた場合に、被害を受けた国やその同盟国だけでなく、国際社会全体で対応しようという考え方です。

現在の国際法では、武力行使は基本的にはそれを容認する侵略を認定して、それを排除するための武力行使をして良いという国連安全保障理事会の決議がある場合に限られるのだとされています。

91年の湾岸戦争の時には、イラククウェート侵略に対して国連安保理決議を出して、それに基づいて多国籍軍武力行使が行われました。

これはもちろん適法とされております。

また安保理が対応するまで被害を受けた国が何もできないというのは酷なので、安保理が決議をするまでの間は被害国自身が個別的自衛権を行使し、また被害国から要請を受けた国が集団的自衛権を行使して被害国を防衛するための武力行使をすることが必要性と均衡性の範囲で認められるとされています。

ただし個別的自衛権集団的自衛権は、被害国への武力攻撃の着手がある場合出ないと行使できないとされています。

北朝鮮のミサイル開発問題・核開発問題で、開発が済む前に先制攻撃をというような議論も聞かれなくはないですけど、ただもちろんミサイル開発問題・核開発は国際法違反ですので外交経済上の制裁、この前安保理の決議が出ましたが、それはやってもいいんですが、ただし武力行使以外の手段に止める、あくまで北朝鮮のミサイル開発問題も北朝鮮が他の国へ武力攻撃へ着手した場合は別にして、そうでない場合には、少なくとも核兵器を開発しているにとどまる段階では、武力行使まではほかの国はやってはいけないというのが現在の国際法です。

ですから仮に先制攻撃などをした場合には、それは国際法違反だという批判を受けるということになるというのが現在の国際法な訳です。

 

キャスター:ということは先月国連で採択されました核兵器禁止条約ですけど、これは国際法上から見ても当然出てくる流れだったという気もしますね。

 

木村:やはり核兵器というのは被害があまりにも大きくて、ご指摘の通り仮に武力行使が許される状況でも、国際法の原則に照らして適法に使用できる可能性というのは非常に低い兵器な訳ですね。

当然民間人を巻き込まないかたちで核兵器を使うのは相当難しいでしょうし、ですからこの国際法の流れからしても進めて言ってほしい流れであるというのはよくわかる話です。

日本やアメリカがすぐには参加ができないという事情はわかりますけど、国際法の大きな流れの中で条約の意味を考えてほしいと思います。

 

キャスター:ただ、原則というのはあくまでも原則で、それを守らない国があると結局それに対応する武力が発動されてしまうと、原則に意味があるのかという声も出てきそうなんですけど、木村さんはどうお考えですか。

 

木村:もちろん国際連合は当初期待されたほどの役割は果たしてないというのは、20世紀から指摘されていたことであります。

ただそうは言っても、20世紀の後半以降は主権国家同士が本格的に戦争を行うという事態、2度の世界大戦のような事態は非常に少なくなってきています。

戦争が少なくなったことについては、いろんな理由が指摘されますが、現に侵略を行なっている国以外の国には武力行使は絶対に許されないというルールが確立し、また19世紀は安全保障というのは軍事同盟に頼っていたんですが、軍事同盟というのは常にお互いに仮想敵国を想定して同盟国の結束を、敵国に対する敵愾心を煽ることによって固めるということをしなければならない枠組みなんですが、戦後は国際連合の下で、もちろん冷戦等はあるんですが、しかし曲がりなりにも国際協調を原則とする枠組みができたこと、これも20世紀後半以降戦争が少なくなった大きな要因と言っていいと思います。

ですから武力不行使原則は二度の世界大戦の悲惨な体験を経て、多くの人の努力によって確立した、そしてそれは非常に大きな役割を果たしている国際法原則であるということは否定できないと思います。

ぜひ、長崎原爆の日には、憲法9上のこともそして国際法のことも考えてほしいと思っています。

 

 

 

 

アメリカトランプ大統領のインフラ投資政策

8月8日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:アメリカのトランプ大統領の経済政策では、税制改革と並んで市場の期待が大きかったのが、インフラへの巨額投資でした。

現状はどうなっているのか、ワシントン支局の田中記者に聞きます。

トランプ大統領は10年間で官民合わせて1兆ドル日本円で110兆円余りの巨額のインフラ投資を行う方針を掲げて大統領選挙を勝ち抜きましたけど、その進捗状況はどうなっているんでしょうか。

 

田中:巨額のインフラ投資への市場の期待はしぼんでいます。

市場では、当初1兆ドルの多くが政府によるものだと期待していましたが、政府の予算要求いわゆる予算教書の中で、連邦政府の予算として求めたのは10年間で2千億ドルだけで、残りの8千億ドルは民間の投資に委ねたかたちです。

このため、IMF国際通貨基金)は先月、財政出動の規模が当初の想定ほど大きくないとして、アメリカの来年のGDPの伸び率の見通しを従来の2.5%から2.1%まで大幅に下方修正しました。

さらに既存のインフラ事業でさえ進捗が危ぶまれているケースも出てきています。

ミネソタ州ミネアポリスでは、7年前から進められてきた鉄道の建設計画の先行きが不透明になっています。

この事業は、連邦政府が毎年2300億円ほどの予算を配分している公共交通の整備プログラムへ承認され、これまでに環境影響評価などの予算として連邦政府から15億円が注ぎ込まれています。

今年建設を開始して、4年後の開通を目指していました。

しかし、トランプ政権がこの計画に待ったをかけました。

事業費2000億円のうち半分は連邦政府補助金を見込んでいましたが、今後は民間資金を活用した事業を優先するとして、政府の要求段階では予算の計上が見送られたのです。

鉄道会社のマーク・ファーマン副社長は、この鉄道計画への投資は、地域の繁栄にとって欠かせない、引き続き他の州と一緒に手続きが進行中の連邦政府補助金が得られるよう求めていく、と話していました。

 

キャスター:既存のインフラ投資計画も滞っているケースがあるということですけど、トランプ政権の方針によって、事業コストが上がる懸念も広がっているようですね。

 

田中:トランプ大統領は、アメリカの製品を買おうと呼びかけていて、こうした政策をさらに強化する方針を打ち出しています。

トランプ政権の前から、アメリカでは政府調達に加え、連邦政府の補助を受ける鉄道事業などでは、物資の購入にあたって、アメリカ産の製品を使う比率が定められてきました。

ワシントンのシンクタンク「アメリカンアクションフォーラム」の調べによりますと、アメリカの鉄道事業者は、車両の購入にあたって、外国と比べて34%もコストがかかっていることがわかりました。

これは、法律で車両のコストのうち60%以上アメリカの部品を使用することが義務付けられていたためです。

このシンクタンクのフィリップ・ロセッティ研究員は、Buy American政策による高いコストを負担しなければならないのは、どのケースでも最終的には納税者だ。こうした政策は、特に保護主義的と言えるだろう。と話していました。

アメリカのインフラ投資には、日本企業も期待を寄せていましたが、その規模が想定ほど大きくない上、Buy American政策がさらに強化されれば、日本企業が入り込む余地も限られる可能性があり、大きな期待はできそうにありません。

市場の期待が大きかった税制改革、インフラ投資といったトランプ政権の経済政策は、思うように進んでいないと言えそうです。

 

 

高齢者のがん治療、その実態  朝刊読みくらべ

8月9日放送 「森本毅郎・スタンバイ」

 

産経新聞の一面ですが、

がんと診断された75歳以上の高齢者は、手術や抗がん剤などの治療を行わない例が多いことが国立がん研究センターの調べで分かったという記事です。

それによりますと、年齢ごとの治療法について経年分析をしたのは初めてだそうですが、集計によるとがんと診断された患者の平均年齢は徐々に上がっていまして、

27年は68.5歳になったそうです。

75歳以上の患者の割合も27年には36.5%にあがりました。

ただ、高齢の患者は糖尿病とか高血圧などの持病もあったりして、全身の状態が悪かったりするもんですから、若い患者と同じ治療を行うことは難しいとされている。

その結果、27年に早期の状態であるステージ1の大腸がんと診断された40歳から64歳の患者では、9割以上が手術や内視鏡の治療をしたんだけれど、75歳以上では3倍に近い4.6%、85歳以上では18%で手術や抗がん剤の治療は行わなかった。

こういう記録が出てきてるんです。

しかし読売新聞は、これも一面のトップで取り上げてるんですが、

85歳以上のステージ4の人の例を出してるんですよ。

これはもう相当進んじゃってる85歳でしょ。

いきなりそこに行かないで、75歳から85歳に至るまでの人たちがどういう治療を受けているのか、あるいはどういう意識を持っているのか、そこのところをもう少し細かく出してもらわないと、極端から極端にいかれても、実態がもうひとつ浮かび上がってこない。

病院のせいなのか、個人のせいなのかもわからない。

という記事です。

 

 

NHKの世論調査の内閣支持率について

8月8日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:昨日まとまったNHKの世論調査安倍内閣の支持率が出ました。

太田解説委員に聞きます。

NHKが今月4日から行いました世論調査で、安倍内閣の支持率が、支持すると答えた人が改造前の先月の調査よりも4ポイント上がって39%、逆に支持しないは5ポイント下がって43%でした。

まだ支持しないという人の数字の方が高いんですけど差は縮まりましたね。

この数字をどう見ますか。

 

太田:過去の例を見ても、内閣改造後は支持率が上がるケースが多いので、政権への支持が回復したというより、このところの支持率低下にひとまずストップをかけることができたということだと思います。

今回の内閣改造安倍総理が経験者を多く閣僚に起用する、安定最優先の人事をしたのも、これ以上内部から政権基盤が崩れるのを防ぎたいという思いからでした。

関係者からは、支持率低下もこれで底を打ったのではないかと期待する声も聞かれます。

 

キャスター:安倍総理としてはこれで一息つけるということなんでしょうか。

 

太田:ただ、先程も言われた通り支持と不支持が逆転している状況に変わりはありませんし、内閣を支持する理由では、他の内閣よりよさそうだからという人が50%以上を占めており、決して積極的な支持とは言えません。

また、今回の改革改造と自民党役員人事の評価を聞いたところ、評価するが50%、評価しないが42%とそれほど大きな差はなく、まさに真価を問われるのはこれからといった感じです。

さらに、政党支持を見ますと、いわゆる無党派層などが減って、自民党の支持が内閣支持率と同じく4ポイント上がっています。

要するに、政権への不信感から自民党の支持をやめた人たちが、今回の改造や国民へのお詫びから始めた先日の総理の会見などを見て少し戻ってきたという事情です。

 

キャスター:さらなる信頼回復をしようと思ったら、何が必要ですか。

 

太田:まずは総理自身に対する国民からの不信にきちんと向き合うこと。

今回の調査でも、加計学園をめぐる問題で、総理の説明に納得できる人は15%、納得できない人は78%と、依然国民は厳しい目を向けています。

その上で、国民の不安解消を第一に考え、今日も台風で各地に影響が出ていますけど、このところ相次ぐ自然災害や北朝鮮のミサイル問題あるいは子育て・老後への不安など、今国民は様々な不安に直面しています。

政権として、自らがしたいことではなく、今国民が望んでいることにしっかり取り組む、それが信頼回復への第一歩だと思います。

 

キャスター:今回の世論調査では、来月1日に行われます民進党の代表選に関する質問もありましたね。

 

太田:蓮舫代表の辞任表明を受けて、代表が交代する民進党に期待できるかどうか尋ねたところ、期待するは23%、期待しないは70%でした。

民進党の代表選では、これまでに枝野元官房長官と、前原元外務大臣が立候補を表明しています。

民進党の支持率は今回の調査でも、二桁台に届かず、低迷が続いていますから、こちらの方も信頼回復の道のりは厳しいということだろうと思います。