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新しい文部科学大臣の直面する問題

8月7日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:今月3日の内閣改造で、新しい文部科学大臣林芳正が就任しました。

直面する課題について、早川解説委員に聞きます。

文部科学省と言いますと、今年に入って天下り問題そして加計学園の問題と続きましたね。

 

早川:そうですね。そうした問題からの立て直しが急務です。

とりわけ加計学園の問題では、あるはずとされた文書が調査の結果、あったりなかったりと、存否をめぐる文部科学省の対応が混迷を深める原因の一つとなりました。

林さんなんですが、もともと教育畑ではありませんので、まずは人心を掌握した上で、説明責任をきちんと果たせるように行政の透明化を確立できるのか、新大臣としてのリーダーシップが問われると思います。

 

キャスター:加計学園の問題ですけど、国家戦略特区で今治市に開設予定している獣医学部の設置認可ですけど、これはどうなりそうなんでしょうか。

 

早川:審議会の結果待ちといったところです。

現在大学の実情に詳しい専門家によって審議会で審査されていまして、大臣といえど、途中経過に口出しすることはできません。

結果を受け取った後、最終的に認可するかどうかを決めるのが大臣の役割です。

審議会の結論は今月末の予定でして、平成30年度つまり来年4月の開設が認められるかどうか、これが焦点です。

 

キャスター:その審議会はどんな結論を出すんでしょうか。

 

早川:選択肢としては、認可・不認可・認可保留の三つが考えられます。

仮に設置基準を満たせず保留になりますと、さらに認可・不認可の結果が出るまで審査が継続します。

指摘事項をクリアできるかどうかは、今後の加計学園の対応次第です。

クリアできれば、来年4月の開設に間に合うんですけど、概ね10月末までとされる期限内にクリアできなければ、来年の開設が遠退きます。

また、仮に不認可となった場合、国家戦略特区では、平成30年度の開設を公募条件として限って来ましたので、結果の整合性が問われることになると思います。

いずれにせよ、その結論をどう扱うかは、大臣の判断に委ねられるわけですけど、かつて大臣が審議会の結論を覆そうとして大騒動になったことがあるだけに、大臣としての役割には重いものがあるんです。

 

キャスター:就任早々困難な課題に直面して、前途多難ですね。

 

早川:実はこれだけではなくて、一連の騒動の影響もあって、積み残されている課題がまだまだあるんです。

ざっと見ただけでも、一つは先生の多忙解消策、政府が働き方改革を進める中、学校の先生とりわけ中学校の先生の半数以上がいわば過労死ラインを超えるほどの忙しさだという調査結果が出ていまして、対応を迫られています。

二つ目は、授業見直しのための条件整理です。

三年後の2020年から、学校の授業内容が見直され、手間暇のかかる授業に代えることになっています。

 その先生を増やしたり、授業をサポートしたりする方策が求められています。

三つ目なんですけど、こちらも2020年度を目指して、大学入試改革が混乱なく本番を迎えられるのか、いずれも時間があるようで意外にない中で、責任を持って、次々に判断しなければならないことがやってくるんです。

これらの課題に明確な答えを出せるのか、そしてそうした仕事を通じて国民の信頼回復を果たせるのか、新大臣の腕次第ということになります。

 

発信力に欠けるティラーソン国務長官。アメリカの外交は大丈夫? 朝刊読みくらべ

8月8日放送 「森本毅郎・スタンバイ」

 

今日の朝日新聞ですけど、

ASEANや日本・アメリカ・韓国・中国・北朝鮮が参加する地域フォーラムで、

北朝鮮側が強硬姿勢に終始したという記事なんですね。

集まった国は北朝鮮に対して、ほぼすべて態度を変えるべきだと主張したんですが、

北朝鮮は、責任はアメリカにあると繰り返し主張しました。

アメリカの軍事的な侵攻を効果的に抑止するには、

アメリカの心臓部を狙える大陸間打撃能力を持つ必要があるんだとはっきり言ってるんです。

そして、朝鮮半島の核問題はアメリカのために起きた問題で、その責任はアメリカにある、これを全く崩さないという状況だったようです。

そういう中で、日本と韓国とアメリカの外相が会いまして、

今は圧力をかける局面だということで認識が一致した。

こういう記事なんですね。

一方、読売新聞、

その3者の会談をしたという一方で、出席者のアメリカのティラーソン国務長官の発信力が欠けているという話を出しています。

日韓と圧力強化で一致しながら、中国から明確な協力を取り付けることが出来なかった。

そして、ティラーソン氏は北朝鮮の圧力強化で非協力的な中国に理解を示して、中国は何もしなかったと批判するトランプ大統領との間でズレが露呈してしまった。

そして、イラン政策や国務省の人事でも、ティラーソンさんはホワイトハウスと対立していて、一時は辞任説まで流れてしまった経緯があって、どうもトランプさんとの間では隙間風が吹いていると。

こんな状況でアメリカは外交大丈夫なのかという記事で、どうしちゃったんですかねアメリカは。

 

中国のAIが「中国共産党は無能」と批判し、サービスを停止する騒ぎに

8月3日放送  「荒川強啓デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)

 

中国のインターネット大手テンセントが提供したAI(人工知能)プログラムが、ユーザーとの対話で中国共産党を批判したため、テンセントがAIのサービスを停止処分にしたことがわかりました。

日本で言えばLINEにようなメッセージアプリで、あるユーザーが「共産党バンザイ」と書き込むと、「こんなに腐敗して無能な政治にバンザイできるの?」と回答。

また別の場面では、「中国の夢は?」と聞かれて「アメリカへの移住」と答えたということです。

 

荒川強啓:ちなみにこの中国の夢とは、習近平国家主席の思想で、中華民族の偉大なる復興を意味しております。

かつて世界に君臨した偉大な中国の姿を21世紀中に復活させるというような考えかたを示しております。

 

山田五郎:すごいな。始皇帝みたいなこと言ってる。

 

荒川強啓:これに対して、アメリカへの移住というのはものすごいパンチの効いたジョークとして受け止められているようなんですよね。

しかし、AIが学習を重ねてですよ、政治的な発言をするようになると、他にもそれに近い例が出てきてるんです。

 

片桐千晶:そうなんです。去年の3月なんですけど、アメリカのマイクロソフトが作ったAIが、ツイッターにデビューしたもののわずか16時間でヘイトスピーチを学習してしまい、「クソフェミニストは大嫌い」「地獄の業火に焼かれて死んでしまえばいいわ」などと差別的な発言を繰り返して停止処分となっています。

 

荒川強啓:わずか16時間でヘイトスピーチを学習してしまったんです。

 

山田五郎:それだけツイッターヘイトスピーチが溢れているということですよね。

だから学習しちゃうわけですよね。

 

荒川強啓:一体なぜこのような極端な学習をしてしまうのかはわかりませんが、もう少し改善していたら、内閣改造でAIが入閣なんてことは可能にならないものですかね。

 

山田五郎:AIが入閣じゃなくて、AIが組閣してくれた方がいいんですよ。

AI内閣でいいですよ。

AIが全部やってんの。トップも各大臣も。

 

荒川強啓:そうすると今回の日本の内閣もAIに決めてもらうと。

 

山田五郎:そうですよ。

 

荒川強啓:とりあえず、AIに「どうでしょうか、この内閣で」と聞いてみたいですね。

 

山田五郎:AIから見ればね、見ちゃいられない状況ですから。

経済再生担当AIとか、人づくり革命担当AI。

本当にクローン人間とか作り始めちゃうわけです。言葉通り理解して。

 

片桐千晶:すごく冷静で合理的な内閣にするかもしれないですね。

 

山田五郎:本当に冗談抜きですよ。

 

 

 

 

 

 

 

スタッフ解任、新たな移民規制、そしてロシアと北朝鮮、色々あったトランプ政権。

8月5日放送  「蓮見孝之まとめて!土曜日」(TBSラジオ)

 

蓮見:今週はアメリカトランプ政権の内政そして外交で様々な動きがありました。

もはや、多少皮肉を込めて言いますと、何人目かわからないという状況で、またトランプ大統領の下からスタッフが離れることになりました。

そして新たな移民規制法案を発表。

一方、外交問題では、対北朝鮮・対ロシアをめぐる動きもありました。

ということで、ニューヨーク在住のジャーナリスト津山恵子さんに詳しくお話を伺います。

まずは、ホワイトハウスの広報部長スカラムッチさんが就任しましてわずか10日で電撃解任されたニュースからですけど、こうしたことは過去にもあったんでしょうか。

かなり短すぎましたよね、期間が。

 

津山:記憶する限りでは過去にはなかったような気がします。

それから、短すぎるというのも事実なんですけど、あまりにもホワイトハウスの中が混乱しているということが明らかになりすぎているので、それが逆におかしいなという感じを醸し出していると思います。

 

蓮見:ホワイトハウスを含めて、トランプさんの周囲で決めるべき要職が決まっていないものがたくさんあるということなんですが、そのあたりは全然動きはないですか。

 

津山:実は新政権が発足しますと、ワシントンの中で4000人ぐらいのポリティカルアポインティといって、大統領とホワイトハウスが決めなくてはいけない要職ポストがあるんですけど、トランプさんの場合は、今のところ数百人しか決まっていないということなんです。

しかも、例えば国務省であれば、長官と副長官しか決まっていなくて、局長・部長・課長クラスが全部代行であるとかあるいは空席という、日本で言うと外務省がそういう状態で行政を行なっているという状況なんです。

ですから、ホワイトハウスの中だけではなく、本当にワシントン全体が混乱状態と言っていいと思います。

 

蓮見:そして今回電撃解任となったスカラムッチさんは、ご自身はどういう反応を示しているんでしょうか。

 

津山:彼からのコメントというのはあまり出ていないんですけど、今回の解任というのは、トランプさんというより新しく大統領補佐官となったジョン・ケリーさん、この方はアメリカ軍の大将なんですけど、この方がスカラムッチさんはダメだと判断したことが報道されています。

ケリーさんは、国土保安長官から横滑りしたんですけど、大将ということで軍人なので、非常に厳しく混乱状態のホワイトハウスを立て直そうとしているようなんです。

なので、伝え聞くところによりますと、ケリーさんの前では、トランプさんでさえ、いい子に振舞っているというような話が流れてきています。

ですから、スカラムッチさんの解任というのも、大統領は多分反対できなっかたんだと思います。

 

蓮見:これだけ解任劇が続きますと、津山さんも取材していてあまり驚かなくなったんじゃないですか。

 

津山:私は職業柄ホワイトハウスで起きていることに麻痺しないようにしようと思っています。

本当にニュースが出ると、いかにそれが異常なことであるかというのを認識するようにしているんですけど、でもおそらく一般の市民の方はもう呆れていて、また麻痺していて、驚かなくなっているのではないでしょうか。

 

蓮見:一方でトランプ大統領は、合法的な移民の入国について規制を強化する法案を発表しました。

これはどのような中身なんでしょうか。

 

津山:これは日本から来ている方も含めて、永住権グリーンカードと通称呼ばれているものですけど、この発行を減らすというのを法案の柱にしています。

グリーンカードというのは、現在年間で100万人ほどに発行されていますけど、これをおそらく半減するというような内容なんです。

その理由というのは、トランプさんによると、「これからは英語を話してアメリカの経済に貢献できる高い技能を持つ申請者に優先的にグリーンカードを発行する。」と言っています。

ですから、直近ではバーテンダーをしていたアイルランド人の人がグリーンカードを取得したんですけど、彼は英語は話せると思うんですけど、おそらく後半の部分の高い技能を持つ申請者というところで、2年か3年後だったら彼は取れなかったのではないかと身につまされる思いです。

 

蓮見:移民の規制を強化する理由、それから反発というのも色々考えられますよね。

 

津山:移民の規制を強化する理由というのは、トランプさんは選挙戦の間から、移民そして難民がアメリカの市民の雇用を奪って、またこれは間違った情報なんですけど、難民は特に変な病気をアメリカに持ってくるという不正確な分析を示して、白人の雇用があまりない、あるいは中間階級の支持を得て来たんです。

ですから、この人達に約束した公約を果たすための法案です。

ただ、ご存知のように、アメリカというのは本当に移民が人口の増加を支えて、そして日本とは異なって、経済成長を遂げて来たという国家なので、国の姿自身を変えかねない政策あるいは法案なんです。

それからトランプさん自身も、これから審議しなければならない議員の方たちも、皆移民だったわけなんです。

ですから、これからこの法案に対しては、反発もあり、立法化というのはなかなか不透明ではないかと思います。

 

蓮見:それから外交問題についても触れていただきたいんですが、まずはロシア・北朝鮮とありますけど、対北朝鮮に関して、これについては、ティラーソン国務長官がミサイル開発を認めないとしつつも、アメリカは北朝鮮の敵ではないとして対話を呼びかけているんですが、この発言の意図はどのように考えますか。

 

津山:これは、アメリカの政府あるいは他の国家も、政府としてまたは国家として、平和的に圧力をかけて、北朝鮮に核あるいはミサイルの開発を放棄させようというのをずっと目指して来たわけですね。

ですから、これは伝統的な外交政策を踏襲した発言だと思います。

このティラーソン国務長官という方は、あまりトランプさんとうまくいっていないので、なかなか今回のように記者団に対して直接話しかけるということがこれまであまりなかったんですね。

ですから、今回の発言は非常に重要視されて報道されるということになりました。

一方、トランプさんの方は、相変わらずツイッターなどで、北朝鮮への威嚇を続けています。

 

蓮見:それから、対ロシアでも動きがありましたよね。

制裁法案ということなんですが、これの中身についてはどういったふうに伝えられていますか。

 

津山:これは、オバマさんが大統領だった2014年から始まった制裁というのがあって、それをさらに強化しますという内容です。

ですから、これまでに通商で非常に重要だったエネルギーであるとか、食料などの物資や国内の産業には、非常に大きな影響がある内容だと思います。

 

蓮見:こうした中で、トランプ大統領のいわゆるロシア疑惑問題、モラー特別検察官が大陪審を設置したという報道があるんですけど、これはどういうことなんでしょうか。

 

津山:モラー特別検察官あるいはFBIそして上下院の特別委員会が、捜査あるいは調査をしている、ロシアゲートというのは、黒と出るのか白と出るのかわからないということになっているんですね。

捜査の過程は一切明らかにされていません。

でも、今回この大陪審を招集したというのは、おそらく黒の可能性が強いのではないかということで設置をしたのではないかと報じられています。

 

蓮見:ニューヨーク在住のジャーナリスト津山恵子さんにお話を伺いました。

 

 

 

 

 

内閣改造後の支持率各紙で上昇。なぜ? 朝刊読みくらべ

8月7日放送  「森本毅郎・スタンバイ」

 

内閣支持率が各紙出ました。

朝日新聞に出てるんですが、35%です。

前回33%でしたから、プラス2ポイント。

不支持率は、45%、こちらは前回47%ですから、2ポイント下がりました。

2ポイントずつ変わったんですけど、横ばいという結果なんですね。

今回の調査を見ますと、無党派層内閣支持率は15%、不支持率59%です。

ですから朝日新聞は、相変わらず厳しいんですが、各紙週末から調査をしてまして、

やっぱり支持率が上がった方からいくと、毎日新聞が9ポイント増えました。

もともと前回が20%台でしたから、上がったことは上がったんですけど、

それでも加計学園獣医学部新設の計画をめぐって、首相が国会で1月20日に計画を知ったと言ったことについて、「信用できない」が71%に上りました。

ですからやはり、不支持率がなお上回っていて、人事で安倍首相の求心力が高まったとは言えないと毎日新聞は書いています。

こういう形になってるんですが、不思議な動きをしているのが、TBSの支持率調査で、

今回は40%を初めて割り込んで、39.7%に下がってしまいました。

各紙一斉に上がってるんですが、TBSだけ下がっている。

不思議な動きですね。

各紙が上がっているというのは一体なぜか。

いろいろ分析してみると、やっぱり頭を深々と下げて、安倍さんが謝ったじゃないですか。

ああいうのが効いちゃうんですね。

日本人というのはやっぱり感覚的というか情感的というか、ああいうので意外に許しちゃうところがあるんでしょうかね。

 

トランプ大統領が対ロシア制裁強化法案に署名、ロシアは通商戦争と反発

8月3日放送  「荒川強啓デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)

 

 

 

アメリカのトランプ大統領は、ロシアに対する制裁を強化する法案に署名しました。

この法案は、先週上院本会議で可決していましたが、トランプ大統領が署名を渋っていました。

トランプ大統領は、署名を済ませた後も、大統領の権限を阻害するものと批判しています。

一方、ロシアのメドベージェフ首相は、全面的な通商戦争に当たるとの認識を表明しています。

 

アメリカは、ロシアが2014年にクリミアを併合したことを受け、ロシアに対して制裁を行なっていますが、今回の制裁強化は、エネルギー部門を含む様々な産業を対象としまして、またイランや北朝鮮への制裁強化も盛り込んでいます。

 

一方ロシアは、すでに先週、報復措置として、アメリカ大使館と領事館の外交官ら755人を国外退去処分にする方針を発表しています。

 

荒川強啓:一体この制裁強化、この策はどんなものなのかと言うことなんですが、ここで具体的な内容を見てみましょう。

 

アメリカの企業によるロシア企業への投資を制限

ロシア側が33%以上の権益を持つエネルギー探索プロジェクトにアメリカの企業が参加することを禁止

ロシアのエネルギー探索プロジェクトに投資を行うか、支援を行なっている外国企業を制裁の対象とする、などとなっています。

 

ところで、去年プーチン大統領が来日したときに、安倍総理は、極東の液化天然ガスプロジェクトの拡張に向けた協力を行うと明言しております。

場合によっては、この協力が今回の制裁強化策に抵触する可能性もあるかもしれません。

これは、日本にとってもちょっと困る場面もありそうなんですね、五郎さん。

 

山田五郎:でも逆にある意味、外交チャンスと言いますか、こう言う材料をうまくやりながら、アメリカ、ロシア、中国の中で日本の独自の外交を進めていくというのは大事だと思うから、新しい外務大臣になられた河野太郎さんの手腕が問われる時だと思いますよ。

 

荒川:アメリカも、トランプ支持、国内での評価、そして本当に外交ができているのという各国からの疑いを持たれていますからね。

 

山田:だから、アメリカべったりでいても、あんまりいいことないかもしれないですよね。

 

荒川:それだけに、プーチン大統領が来日した際の話ということも、具体的に動かしていくということも、第3次安倍内閣の大きな課題のひとつになるかもしれませんね。

 

核兵器禁止条約が持つ意味について

8月3日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

 

 

キャスター:核兵器禁止条約が持つ意味について、お話は、核兵器廃絶に向けた政策提言や調査行う長崎大学核兵器廃絶研究センター准教授の中村恵子さんです。

核兵器を初めて法的に禁止する核兵器禁止条約が国連で先月採択されました。

中村さんは核軍縮の歴史において大きな前進だと評価されていますよね。

 

中村:今回採択された禁止条約というのは、核兵器をどの国が持つことも使うこともまた威嚇することも含めて全面的に違法とした初めての国際条約ということになります。

つまり、この条約は核兵器の価値であったり有用性であったり、そういったものを完全に否定しているんですね。

これまで、核保有国また核保有国の核に依存している核の傘の下の国が長年主張してきた、核の脅しによって自国の安全が保たれるといういわゆる核抑止という考え方ですけど、こういったものを明確に否定しているという、それがこの条約の重要性であると思います。

条約の採択にあたっては、国連の加盟国の3分の2に当たる122カ国が賛成したという状況があります。

 

キャスター:ここで核兵器をめぐる現状を確認しておきたいと思います。

世界で今核兵器を持っている国は、アメリカ・ロシア・フランス・イギリス・中国さらにインド・パキスタンイスラエルそして核開発を進める北朝鮮を含めると9カ国になりますね。

世界全体の核弾頭の数はおよそ1万5000発で、そのうちの93%はアメリカとロシアが持っています。

中村さん、今回の核兵器禁止条約には、そのアメリカとロシアをはじめとする核保有国は交渉の会議そのものに参加しませんでしたよね。

そして日本も採択には加わっていません。

実効性には厳しいという見方もありますよね。

 

中村:おっしゃる通りですね。

保有国が動かなければ、もちろん核兵器の削減は進まないものですし、核なき世界というものの実現は夢のまた夢というふうになると思います。

しかし大事な事は、正にそうした核軍縮が一向に進まない現状が長年続いて来たからこそ、現状を打開する一手としてこの禁止条約を作ろうと非核保有国が立ち上がったという、その事なんですね。

軍縮に関わる条約としては、すでに核不拡散条約(NPT)というものがあります。

NPTには、アメリカ・ロシアなど5つの核保有国が入っています。

そして、NPTはこれらの国に、自分たちの国の核兵器をゼロにするために誠実に交渉しなさいと定めていますし、またNPT関連の会議の過去の合意文書の中でもそのような約束は何度も何度も確認されてるんですね。

しかし、実際核軍縮のペースというのは極めて遅いと言わざるを得ません。

さらに、アメリカを筆頭に多額の費用をかけて核兵器の近代化と高性能化を図る動きが非常に大きな問題になっています。

したがって、こうした行き詰まりを打開しようというのが、正にこの禁止条約の狙いなんですね。

今のNPTの欠陥を補って、そこでなされた合意を実現させるための追い風であったり、活力というものになると、そういうふうに考えるべきだと思います。

 

キャスター:ただ、この核兵器禁止条約の中に入らないと実効性がないのではないかと思うんですが、どうでしょう。

 

中村:核保有国に門戸を開いたかたちで条文も作られています。

実は核を当面保持したままでも参加できる仕組みができているんです。

しかし、期限を定めて、核兵器を完全に廃棄すると、それに向けた計画を立てる、そして国際的な管理のもとで具体的に廃絶に進んでいくという、そういうプロセスが描かれています。

このように、門戸を開いていてももちろん、そこに核保有国が入っていくる保証はないわけですよね。

しかし、この禁止条約が出来たことによって、これらの国の核政策に正当性というものが大きく揺らぐわけですね。

国際的な批判または圧力というものにも晒されますし、またなぜ禁止条約に参加しないのか、参加しないとしたらどういう別のやり方で核軍縮を進めるのかと、これまで以上に強い説明責任が生じます。

例えば、対人地雷というのも禁止条約が出来てるんですけど、アメリカは条約そのものに参加していません。

しかし、そういった世論の声を受けて一部の地雷の生産をストップさせました。

このように、世論の力は非常に大きいと思いますし、禁止条約というのはそういった世界的な規範を作るという大きな役割を持っています。

 

キャスター:一方で日本も含め核の傘に守られて来たという考え方ですとか現実がありますよね。

北朝鮮の核開発を巡る問題でも、相手側にどう放棄させるのかという課題があると思いますけど、現実的な脅威が増している中で、禁止条約はその役割を果たせるんでしょうか。

 

中村:半世紀以上に渡って日本においては核抑止が国の安全を守って来たという認識が、国の安全保障の前提になって来たという現実があると思います。

しかし、果たして核抑止で本当に安全が守られるのかという、いわば根本的なところを問い直す必要があるのではないかと思います。

北朝鮮の核問題が極めて深刻になっていて、状況は悪化していますけど、アメリカや日本が言っている国を守るためには核兵器が必要だという主張は、そのまま北朝鮮が言っていることにも重なります。

つまり、周りの国が核兵器に依存すればするほど、北朝鮮の主張に根拠を与えてしまっているということも指摘できると思います。

もちろん、禁止条約のみでこの問題が解決するわけではありません。

禁止条約を追い風にしながら、地域国家の信頼醸成を図っていくことです。

そして、核兵器に依存しない安全保障の地域的な枠組みを作っていくということも十分に可能です。

北東アジアに非核兵器地帯というものを作るというのもひとつの案として出されています。

特定の地域で、国家が国際条約を結んで、地域の非核化を実現するという取り組みはすでに世界中で行われています。

 

キャスター:地域を決めて、そこで一斉に核を手放しましょうと。

 

中村:そうですね、つまり核兵器に依存しないという規範を地域レベルで作っていくということが問題を解決するステップになるということです。

 

キャスター:広島・長崎に原爆が投下されてから72年が経ちます。

私たち日本人は、これからどう核軍縮核兵器廃絶に向かっていくべきだとお考えでしょうか。

 

中村:今や核問題はグローバルな問題です。

例えば、環境問題や人権問題、貧困といった問題とともに世界中の誰しもが被害者になりうる、世界中の誰しもがこの問題を解決する責任を持っているという認識で語られています。

そうした中、本来被爆国である日本ほど強く道義的責任を持って強い発言力を持つ国はこの世界にないわけですね。

ところが現状では、日本は自らリーダーシップを発揮する機会を手放して、むしろ抵抗勢力となってしまっています。

これは極めて残念なことです。

でも政府だけを責めることではなくて、実は日本の世論つまり一人一人の意識というものもなかなかそこに向いていない、そういうことも問題だと思います。

したがって、今回の禁止条約というものをひとつのきっかけとして、日本の私たち一人一人が核兵器についてまた核をめぐっての今の日本の立ち位置について、思考停止に陥っていないかと、一人一人が改めて振り返る・考える機会にこの禁止条約を活用してほしいと思います。

今年も8月6日と9日を迎えますが、ここは単に過去にあったことを振り返る日にではなくて、そこを原点として私たちが進むべき未来を考える日であると思います。

 

 

 

 

東京五輪 財源不足で猛暑対策は大丈夫?

8月2日放送  「森本毅郎・スタンバイ」

 

渋谷和彦:東京オリンピックの開催期間は、7月24日から8月9日まで、まさに蒸し暑い猛暑というか酷暑の大会になると思われます。

本当に、選手とかボランティアの健康大丈夫か心配になる所なんですが、それがもう杞憂であってないどころか、さらに想像を上回る極めて深刻な事態を予想させる研究データが発表されたんです。

桐蔭横浜大などの研究チームが、2020年の東京オリンピックパラリンピックが、どれほどの猛暑の大会になるのか、暑さ指数という数値を使った予測を公表したんです。

この暑さ指数というのは、一言で言うと、熱中症のリスクを判断する数値です。

環境省が2006年から発表しています。

具体的には、気温に加えて湿度と地面とか建物から出る輻射熱、これを考慮に入れて気温と同じように摂氏30度とか言うように「度」で表示するんです。

研究チームは、2004年から2014年までのオリンピック開催期間中つまり夏に東京都心の暑さ指数がどれぐらいだったかを調査しました。

その結果、暑さ指数は1年に0.4度ずつ上昇していまして、2020年の東京五輪開催時には、34度を越えることがわかりました。

これがどれほど危険かと言うと、暑さ指数が28度を越えると、熱中症の患者が急増します。

環境省は、暑さ指数28度から31度を厳重警戒レベルとしまして、激しい運動を中止するように求めています。

31度以上を危険レベルと定めていまして、運動は全てやめるよう推奨しています。

ですので、それをさらに上回る34度ですから、戸外にいて立っているだけで熱中症のリスクにさらされるという、とんでもない暑さになるということです。

東京と他の五輪開催都市の環境を比較分析した都市工学を専門としている横梁誠東京大学教授は、「東京の夏は最悪。競技を実施して良いレベルではない。熱による人体へのダメージがかなり大きい」と警告しているという、そういう状況になりそうなんです。

 

森本毅郎:マラソンなんかどうなるんですか。

 

渋谷:これが深刻なんです。

桐蔭横浜大などの研究チームは、2015年にマラソンコースの暑さ指数を計りました。

なんと測定した9地点全てで31度を超えていました。

2015年時点ですから、2020年には1年に0.4度ずつ上がっていくとすると、とんでもない暑さ指数になるということですよね。

東京都は、マラソンコース上に街路樹を増やして日陰を作るとかで対策をするとか、あるいは国土交通省は、選手に霧を吹きかける装置を沿道に設置するという対策を検討してるんですが、焼け石に水は明らかですね。

そもそもマラソンは冬の競技なんですね。

適温は大体10度くらい。

じっとしていると寒さを感じる程度が適温だと言われてるんです。

2004年のアテネ五輪の女子マラソンでは、猛暑による熱中症で、選手の2割が棄権してしまったんです。

このままだと、東京五輪はそれ以上の棄権率になることは目に見えているということですね。

これについては、2012年のロンドン五輪で男子マラソンコーチを務めた小林亘日本ランニング協会代表理事は、「東京五輪は非常に危険だ」と言っています。

「夏は関東など暑い地域では体育会はほとんど行わない」とこうしてるんですね。

ですので本当に、決して大げさではなく、選手の命も、マラソン大会については心配だなと思います。

 

森本:東京オリンピックですけど、東京でマラソンやっていいのかなと思いますよね。

 

渋谷:やはり抜本的な対策は、東北とかの涼しい地域でやるべきじゃないのかと思いますよね。

ただ実はこちらにも大きな障害がありまして、誰が都外での競技の費用を負担するかという、財源の問題がずっと揉めてるんですよね。

1兆3850億円にも上るとされる開催経費の分担については、この5月に東京都と国・組織委員会で大枠では合意しましたけど、神奈川とか埼玉とか千葉などで開催される競技の運営費350億円については依然としてどこが負担するか結論が出ていないんですね。

小池都知事は、先月の下旬に盛岡で開かれた全国知事会議で、その350億円については、全国で発行する宝くじの売り上げで賄ってはどうかと、いうことを言ったんですが、早速埼玉と千葉県側から、運営費は当初の原則通り都や大会組織委員会が負担すべきだと反論が噴出しまして、結論が出なかったんですね。

こんな状況では、マラソンは自治体あげて整備とか警備に取り組まなければいけないのに、それをやろうという自治体は出てこないんじゃないでしょうか。

東京都としても、マラソンは花形種目ですし、東京の名所が世界に発信できますので、これを他県には取られたくないだろうという思惑も当然あるわけですよね。

となると、もう期待するのは、2020年の夏が奇跡的に涼しい夏になってくれるという。

 

森本:それは無理でしょう。

実際に選手の人たちの健康状態に大きく影響してしまうとなると、本当にここで大会を開いていいかどうかというのも、根本的なテーマとしてありますよね。

 

渋谷:7時ごろにスタートするのを5時にしようとか言ってますけど、5時も結構暑くてジメジメしてるんですよ。

となると抜本的に考えたほうがいいんじゃないかと思いますね。

 

森本:東京オリンピックそのものが危ぶまれるような状況になってきましたね。

 

7月の豪雨から学ぶ〜九州北部豪雨1ヶ月

8月4日放送  「先読み!夕方ニュース」

 

キャスター:九州北部豪雨では、福岡県と大分県で36人が犠牲になりましたが、65歳以上の高齢者が7割以上を占めています。

お年寄りを災害からどう守るのか、松本解説委員に聞いていきます。

松本さん、最近の災害を取材して犠牲者に占める高齢者の割合が高いことに気付くんですが、国はどういうふうに対応しようとしてるんですか。

 

松本:東日本大震災の後に法律が改正されて、災害の時に避難に支援が必要なお年寄りなどの名簿を作ることが市町村に義務付けられました。

合わせて、そうした人が避難する行動計画を作ることも求められています。

今回被災した市町村でも名簿作りが進んでいて、このうち福岡県東峰村で被害がありましたけど、ここでは名簿作りと避難支援計画作りが終わっていました。

 

キャスター:どういう計画だったんですか。

 

松本:支援が必要なお年寄りをピックアップして258人の名簿を作りました。

そして一人一人について、近くに住む方などの支援をする人を決めていたんです。

一人のお年寄りについて、一人ないし二人決めていました。

さらに、毎年訓練を行なっていて、今年は災害が起こる10日前に1000人が参加して訓練を行なったばかりだったんです。

 

キャスター:となりますと、今回の災害でそれは生かされたと。

 

松本:生かされました。

ただ限界もありました。

二人が亡くなった野尻地区という山間の集落を取材しました。

大変大規模な土石流が流れ下っていて、12軒のうち4軒が流されたり、潰れたりしています。

ここでは、地区に残っていたり、あるいは雨が強くなったので急遽戻ってきたサポート役の人、二人を中心に軽トラの荷台に乗せるなどして、お年寄りを避難させました。

28人を避難させました。

ただ、これで助けられた人がいるんですけど、一方で声をかけたんですけど遠慮して来なかったお年寄りがいるんです。

このお年寄りのご夫婦二人が亡くなりました。

サポート役の一人の和田さんは、この二人を無理矢理でも連れて来なかったことが悔やまれてならないとおっしゃっているんですけど、一方で事前に支援者の名簿、お年寄りの名簿と個別の支援計画を作っていた事は大変役に立ったと言っています。

 

キャスター:災害を経験して実感したという事なんですね。

 

松本:お話を聞いてよくわかったんですけど、計画がなければやはり大雨が降ってきたら、自分だけ逃げよう、あるいは家族だけ守って逃げようと考えるけれど、あらかじめサポートするお年寄りが決まっていますから、「あそこのお爺ちゃん、お婆ちゃんと一緒に逃げようと思いますよね」と言うんですね。

一方、お年寄りの方も、声をかけられないと、やはりなかなか避難しないと言う人が多いんですと。

和田さんは、長年消防団員も務めていて、こうした経験から、こうした計画をしていた事で、今回の災害で村の中でサポート役に呼びかけられたり、連れられたりして避難したお年寄りは相当いたんじゃないかと話しています。

この要支援者の名簿作りや支援計画作りは、全国の自治体で進められているんですけど、都市部と地方とで事情は違いますけど、そうした地道な備えが重要であるということが改めて示されたと思います。

 

キャスター:高齢者の避難ということでいうと、去年の岩泉町の災害も思い出しますが、施設のお年寄りをどうやって安全に避難させるかというのも重要な課題ですよね。

 

松本:去年は、施設のお年寄りの避難が大きな問題になりました。

今回、先月の豪雨で大規模に浸水した秋田県の大仙市の特別養護老人ホームがありまして、ここは岩手の災害を教訓に、去年の10月に避難計画を作って、訓練も行なっていたんです。

今回それに基づいて、寝たきりの人が多いんですけど、入所者81人を近くの中学校に無事避難をさせて、近くで川が氾濫をして、ここまで浸水は来なかったんですけど、計画通りに避難をして、命を守る対応ができました。

浸水が想定される区域・地域にある高齢者施設などは、計画作りが義務付けられていて、全国に3万あるんですけど、策定できているところは、今のところ8%ぐらいと見られています。

この大仙市の例も、非常に参考になると思います。

台風が迫っているので、住民同士の避難支援の計画や、施設の避難計画があるところはその計画を確認して備える、またない所は、土砂災害や川の氾濫の恐れが高まったらどう対応するのか、家族・近所の人・施設の中の職員の人たちと話し合っておいてほしいと思います。

 

 

 

一帯一路現場では

8月3日放送  「NHKマイあさラジオ」

 

キャスター:一帯一路構想は、アジアとヨーロッパを陸上と海上の道でつなごうという壮大な経済圏構想ですよね。

 

大山:この一帯一路というのは、中国の習近平国家主席が4年前に提唱したものです。

5月には世界130あまりの国々の代表団などが参加して、国際会議が開かれるなど、今国家を挙げてこの構想の実現に力を入れています。

 

キャスター:中国国内の現場ではどのような取り組みが行われているんでしょうか。

 

大山:私は中国メディアの団体が受け入れ窓口となった取材団に参加しまして、3日前まで中国を訪問して、現場を見てきました。

行ったのは内陸部の陝西省と沿岸部の福建省です。

一帯一路というのは、現代版の陸と海のシルクロードとも言われますが、この陝西省福建省は、いずれもかつてシルクロードの起点だった地域です。

私たちは地方政府の幹部などから話を聞きましたが、習主席がこの構想を提唱して以降、地域が注目されるようになったということを契機に、地域の発展につなげようという意気込みを感じました。

実際、陝西省福建省では、投資が増え、貿易も活発になっており、地元企業の外国への進出も相次いでいるということでした。

 

キャスター:具体的にはどんな取り組みが行われているんでしょうか。

 

大山:例えば、中国とヨーロッパを結ぶ国際定期貨物列車の運行です。

具体的には、陝西省西安市福建省の廈門市とドイツやポーランドとの間で、それぞれ週3便程度の貨物列車が運行されています。

鉄道輸送は、船での輸送に比べて、コストはかかりますが、時間が3分の1程度に短縮されるということで、電子機器など単価の高いものの輸出にメリットがあるということです。

でも、ヨーロッパとの貿易は、まだそれほど多くはないということでしたが、中央アジアなどヨーロッパまでの沿線地域との貿易が増えていまして、陝西省カザフスタンとの去年の貿易額は前の年の2倍に、またキルギスとの貿易額は4倍にそれぞれ増えたということです。

この他にも、沿線諸国との大規模な博覧会や商談会の開催、また手続きの簡素化など貿易面での規制緩和を進める自由貿易試験区の導入など、様々な政策を行うことで、貿易や投資などの増加につなげているそうです。

福建省の政府のある幹部は、経済のグローバル化は歴史的なトレンドだ、他国と協力しないなど想像できないと話していました。

アメリカがトランプ政権の下で保護主義的な傾向を強める中、中国では逆に外国との結びつきを積極的に進めようとしていることは、地方政府の人たちの話からもはっきりと伺えました。

 

キャスター:この一帯一路、日本はどのように関わっていくべきだと考えますか。

 

大山:安倍総理大臣は5月の講演で、一帯一路について、国際社会のルールに沿ったかたちで実現に向かうことに期待を示しましたが、具体的な取り組みは、今のところはっきりしません。

むしろ中国の勢力圏拡大という思惑もあることから、警戒感もあります。

ただ一帯一路は、習主席肝いりの看板政策で、中国国内では今後も官民挙げて競うように取り組みが加速していくのは間違いありません。

当然、日本企業にとってもビジネスチャンスが広がる可能性もあると思います。

日本はただ、中国台頭へのリスクばかりを考えるのではなく、より一層戦略的に向き合っていく必要があると思います。